先日、終戦について書きましたので、今回は日米開戦、真珠湾攻撃について書かれた本から、おすすめをご紹介しましょう。

黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて (文春文庫)
1970年のハリウッド映画「トラ・トラ・トラ!」は、日米双方からの視点で真珠湾攻撃を描くという試みで、米側の監督にはリチャード・フライシャー、そして日本側の監督には当初、黒澤明が起用されました。
しかし、さまざまなトラブルの結果、黒澤明は降板します。
本書は、その過程を詳細に追ったノンフィクションです。
のっけから、真珠湾攻撃を扱った本の紹介としては、変化球ではないかと思われるかもしれませんが、実はこの本、真珠湾のことを知るためにも非常によくできています。
筆者自身、実を言えば、真珠湾攻撃ということに興味を持ったのは本書を読んでからなのです。

なお、真珠湾攻撃について書いている本記事の主旨からそれますが、映画「トラ・トラ・トラ!」は、黒澤監督降板後は、舛田利雄・深作欣二の二人体制で日本側シーンの撮影に臨み、完成にこぎつけます。
黒澤明が執筆したシナリオはいったん白紙になったと言われていますが、本書によれば、随所にアイデアは残されているということで、映画とシナリオを比較してみるのも一興です。
映画を観るならば、やはりBlu-rayがおすすめです。非常に高画質に仕上がっています。
シナリオは「黒澤明―天才の苦悩と創造」というムックに収録されています。このムックは黒澤明が描いた全絵コンテも収録しており、幻の黒澤バージョンの全貌を伺うことができます。

黒沢明―天才の苦悩と創造 (キネ旬ムック)
トラ・トラ・トラ!(ニュー・デジタル・リマスター版) [Blu-ray]


真珠湾攻撃を立案したとされる、当時の聯合艦隊司令長官・山本五十六の伝記小説。
阿川弘之の代表作です。
山本五十六の魅力的な人間像が描かれています。もちろん、真珠湾攻撃も詳細に記述されます。



映画「トラ・トラ・トラ!」で田村高廣が演じていた攻撃隊長が淵田美津雄です。阿川弘之「山本五十六」にも印象的に登場します。
本書は、その現場指揮官の生の証言を記録した貴重な一冊です。
この淵田美津雄は戦後、キリスト教徒となり、アメリカで戦争の愚かさを訴える伝道の旅を続けました。この話は、昨年夏に放映されたNHKスペシャル「ふたりの贖罪」で取り上げられています。


次は、フィクションです。
真珠湾奇襲を目指す艦隊は11月末に択捉島単冠湾に集結します。この情報をアメリカへ打電しようとする日系アメリカ人スパイを主人公にした冒険小説です。
佐々木譲お得意の北海道を舞台にした小説で、激しく、そして緊迫した物語を堪能できます。
真珠湾攻撃そのものは描かれませんが、その前哨戦です。


太平洋戦争が始まった日、そして終わったときに人びとは何を考えていたのか?
残された日記や記録から、時系列で事実を積み重ねていきます。
戦後になってから当時を振り返った証言は山のように存在しますが、リアルタイムの記録からは、戦後の回想とは全く違った、人間の息遣いが伝わってきます。
山田風太郎の傑作の一つとされています。

以上、真珠湾攻撃と直接関係ない本をやたらと上げてしまいました。
最後に太平洋戦争の通史として定評があるものをご紹介しておくと、やはり、半藤一利「昭和史」、ジョン・トーランド「大日本帝国の興亡」ということになるでしょう。

大日本帝国の興亡〔新版〕1:暁のZ作戦 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
大日本帝国の興亡〔新版〕2 :昇る太陽 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)大日本帝国の興亡〔新版〕3:死の島々 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)大日本帝国の興亡〔新版〕4:神風吹かず (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)大日本帝国の興亡〔新版〕5:平和への道 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
大日本帝国の興亡〔新版〕 全5冊 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)