先日、「高慢と偏見」についてご紹介しましたが、ジェイン・オースティンを初めて読むのであれば、個人的には「ノーサンガー・アビー」をおすすめします。

オースティンがデビューしたのは「分別と多感」でしたが、初めて書いた、実質的な処女作はこの「ノーサンガー・アビー」で、その点でも最初に読む作品にふさわしいと思います。(とはいえ、この作品が刊行されたのは没後なのですが)

内容的には、もうハチャメチャです。「高慢と偏見」も少女漫画チックな物語ですが、「ノーサンガー・アビー」は恋愛漫画どころではなく、完全にギャグ漫画の方へ振れてきています。
主人公の少女はゴシック小説の読み過ぎで、自身の周りに起こるできごとに対して、ことごとく妄想に満ちた解釈をし、それが誤解を生み、トラブルを生み、といった調子で、最初から最後まで楽しく読むことができます。

この作品の翻訳は、今のところ手に入るのは、ちくま文庫の中野康司訳のみです。


ノーサンガー・アビー (ちくま文庫)
ノーサンガー・アビー (ちくま文庫)
中野康司 訳
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この小説を読んでいると、作中で主人公が愛読しているゴシック小説「ユードルフォの謎」をものすごく読んでみたくなりますが、残念ながら邦訳は無いようです。原著はオックスフォードのクラシックシリーズに今も収録されており、容易に入手できます。こういうときに、英語をスラスラ読める能力があったらなあ、と思います。

The Mysteries of Udolpho (Oxford World's Classics)
The Mysteries of Udolpho (Oxford World's Classics)
Ann Ward Radcliffe
Oxford Univ Pr (T)
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