備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

いしいひさいち

いしいひさいち「コミカル・ミステリー・ツアー」元ネタリスト その3

201709コミカルミステリーツアー1119

3回目は1998年刊行の『コミカル・ミステリー・ツアー3 サイコの挨拶』です。
 
・フロストのクリスマス →【クリスマスのフロスト】
・フロスト日和見 →【フロスト日和】
・誰の死体! →【誰の死体?】
・ベローナクラブの不謹慎な事件 →【ベローナ・クラブの不愉快な事件】
・五匹の鰊の赤 →【五匹の赤い鰊】
・毒はくわばら →【毒を食らわば】
・富豪刑事 →【富豪刑事】
・あと先不明 →【宛先不明】
このあと「オニツラ・ミステリー・ツアー」と題して3編の連作がありますが、これはいずれも鮎川哲也の短編を原題通りネタにしています。
「逆さの眼」「囁く唇」「てんてこてん」「錯誤」
・五つの腹時計 →【五つの時計】
・黒い白鶴 →【黒い白鳥】(舞台を神戸に移してローカルネタ)
・未明の悪臭 →【未明の悪夢】
・狂気のはてな? →【狂気の果て】
・疫病神の名のもとに →【神の名のもとに】
・ラセリング →【らせん】【リング】
・仄臭い水の底から →【仄暗い水の底から】
・ラファエロ真贋実験 →【ラファエロ真贋事件】
ここに続く「黄金の13」「EQチェックリスト」のシリーズは原題通り
・居すわりの名画 →【偽りの名画】
・そしてあの夜は甦る →【そして夜は甦る】
・さらば長き居眠り →【さらば長き眠り】
・出し惜しみの絆 →【哀しみの絆】
・パドックは千の目を持つ →【夜は千の目を持つ】
・赤いあたたかい右手 →【赤い右手】
・笑われてもブルース →【殴られてもブルース】
・猟犬クラブ →【猟犬クラブ】
・再婚イコン →【イコン】
・ブルー・ベル・ベッド →【ブルー・ベル】
・空中ブラリン庭園の殺人 →【バビロン空中庭園の殺人】
・われらのゲームオーバー →【われらのゲーム】
・サシミの記憶 →【鋏の記憶】
・水無月の墓穴 →【水無月の墓】
・ブルードレスの大女 →【ブルー・ドレスの女】
・壮年Z →【Z】(「少年H」にかけているのかと……)
・適手 →【敵手】
・玩具修理屋 →【玩具修理者】
・華やかな服喪 →【華やかな喪服】
・キャッタパルト →【カタパルト―キャット・コロラド事件簿シリーズ】
・図書館の失態 →【図書館の死体】
・四月の屍衣歌 →【四月の屍衣】
・警視の臨終 →「警視の休暇」「警視の隣人」など「ダンカン・キンケイド&ジェマ・ジェイムズ」シリーズから。
・チョコパフェの裏切り →【サンタフェの裏切り】
・大女彫刻家 →【女彫刻家】
・ヒジ鉄の枷 →【鉄の枷】
・蔵書の死 →【死の蔵書】
・罪ほろぼしの特装本 →【幻の特装本】
「狂極の夏」と題して、京極夏彦ネタ連作。「鉄鼠の檻」までは原題通りですが、その後は京極っぽい、オリジナルタイトル。
・新宿小判鮫 →【新宿鮫】(「炎蛹」ネタ)
・走らないけん夜明けまで →【走らなあかん夜明けまで】
・OUCH →【OUT】
・メルカルトと美袋のための殺人 →【メルカトルと美袋のための殺人】
・ニューポトンの密室 →【ニュートンの密室】
・一生戸棚の女 →【衣装戸棚の女】
・パラノイア・イヴ →【パラサイト・イヴ】
・9ドルは高すぎる →【9マイルは遠すぎる】
・おっとり捜査 →【おとり捜査】
・フリークたち →【フリークス】
・お上院議員 →【上院議員】
・ど血ら蚊が彼女を殺した →【どちらかが彼女を殺した】
・分家版 →【私家版】
・龍はナイトベッドで眠る →【龍は眠る】(飯田譲治脚本のドラマ「NIGHT HEAD」を絡めて)
・化身 アバダーラ・カヴァダーラ →【化身―アヴァターラ】
・ラストシーン・コヨーテ →【ラスト・コヨーテ】
・ブラック・アイスクリーム →【ブラック・アイス】

さて、このあと2006年に4冊目が刊行されており、今のところそれが最新刊なのですが、4冊目は各ネタのタイトルが原題通りなので、元ネタ紹介は省略します。したがって、この記事は3冊目の今回を最終回とします。



いしいひさいち「コミカル・ミステリー・ツアー」元ネタリスト その2

201708コミカルミステリーツアー1118

今回は1995年刊行の2冊め『コミカル・ミステリー・ツアー2 バチアタリ家の犬』から。
この巻はいしいひさいちファンにはおなじみ、藤原先生に関する連作が収録されており、要チェックです。
藤原先生というのは、「ののちゃん」の先生として今も朝日新聞朝刊で活躍中ですが、実は小学校教師をしながらミステリ作家を目指し、見事デビューを果たしています。
作品発表の時系列がメチャクチャなので、同一人物なのかどうかよくわからない状況ですが、同一キャラであることは間違いありません。藤原先生の話だけを集めた「わたしには向かない職業」というシリーズも東京創元社から刊行されています。
ちなみに、1997年に刊行された「創元推理 17号」は推理作家協会の文士劇「ぼくらが愛した二十面相」の台本(辻真先)を収録した号ですが、ここに藤原先生が書いたと思われる「忍原崩れ」という短編も掲載されています。ところが、著者名が「藤原瞳」となっている以外、いしいひさいちの藤原先生との関係については全く言及されていないのです……確か。というのは、この本、持ってはいるのですが、実家に預けてあるため、現物の再確認をせずに記事を書いています。すみません。
たいして大きな扱いでもなく目次の隅に、当然のようにひっそりと並んでいた記憶があるのですが、いずれにせよ、現在に至るまでこれをいったい誰が書いたのか、筆者には謎のままです。
順当に考えればいしいひさいちが書いたと思われますが、さて。事情を知っていそうな人に尋ねてみたこともありますが、教えてもらえませんでした。業界的にトップシークレットなのか?

というわけで、久しぶりに藤原先生のことを思い出して大脱線してしまいましたが、「第2巻」の元ネタリストです。

・京都扇の舞殺人事件 →「山村美紗」と書いてありますが、山村美紗の膨大な作品の中にこのようなタイトルはありません。なお、このネタは大傑作で、個人的にはいしいひさいち全作品中最高傑作と思っています。山村美紗本人が読んだら怒ると思いますが……
・罪ほろぼしの女 →【幻の女】
・失踪当時の服装は? →【失踪当時の服装は】(ヒラリー・ウォーの作品ですが、コリン・デクスター「ウッドストック行最終バス」も原題は全く同じタイトルです)
・屋根ウラの乱歩者 →【屋根裏の散歩者】
・イモ虫 →【芋虫】
・マルクスの山 →【マークスの山】
・リヴィエラを撃ってんか →【リヴィエラを撃て】(これも傑作。当時の高村薫は確かにこんな印象でした)
・黄金を抱いて翔べん →【黄金を抱いて翔べ】
・黒い密室 →【白い密室】
・マルタの箍 →【マルタの鷹】
・深夜プラスワン →【深夜プラス1】
・名所案内ぴあ湖周航殺人歌 →【琵琶湖周航殺人歌】
・土岐の娘 →【時の娘】(歴史に詳しくないのでどこまで正しいのかよくわかりませんが、非常にマニアックな歴史ネタ)
・神義津官の秘密 →【成吉思汗の秘密】
・刺青おことわり殺人事件 →【刺青殺人事件】
・赤い親方の秘密 →【赤い館の秘密】
・死者の飲むおいしい水 →【死者の飲む水】(これも笑った)
・北の夕鶴3回転半の殺人 →【北の夕鶴2/3の殺人】
・ななめとんか屋敷の犯罪 →【斜め屋敷の犯罪】(というか御手洗に対するこの描写が犯罪。投げやりなネタですが、これも爆笑)
・いきなり犯人が出てくるなんて検屍からん →【検屍官】
・スマイリーも仲間だし →【スマイリーと仲間たち】
・むさい国から帰ってきたスパイ →【寒い国から帰ってきたスパイ】
・死者にかかってきても電話 →【死者にかかってきた電話】
・宇宙線各停殺人事件 →これも「西村京太郎」とありますが、たぶん元ネタになった小説はありません。
・備前八浜無人駅殺人事件 →同上
・夏の若妻 →【夏の稲妻】
・音のいきがかり →【音の手がかり】
・空飛ぶ木馬 →【空飛ぶ馬】
・高利火車 →【火車】
・馬奮 →【興奮】
・消亡者 →【逃亡者】
・衣食足りて冷血を知る →【冷血】
・オチる →【落ちる】
・ジェリコ街の戦い →【ジェリコ街の女】
・一発ぬける道 →【森を抜ける道】
・ストリート・キッス →【ストリート・キッズ】
・シランプリ・プラン →【シンプル・プラン】
・あっとお慟哭タメゴロー →【慟哭】
・ジュラシック・パー →【ジュラシック・パーク】
・倒錯の武闘 →【倒錯の舞踏】
・Dの複製 →【Dの複合】
・殴り張り込み →【張込み】
出産女でぶめの夏 →【姑獲鳥の夏】(えらい下ネタです)
・コドモロ大ト カゲの告発 →【影の告発】(「影の告発」関連では別に「撮影の告発」というネタを確か「EQ」で読んだ記憶がありますが、単行本では探しても見当たりません。原作ファンにはそっちの方が面白かったのですが、思いっきりネタバレやってるからな……)
・消えた消防署 →【消えた消防車】
・魔法非行 →【魔法飛行】
・ユダ矢の窓 →【ユダの窓】
・流刑法定 →【火刑法廷】

関連記事:
いしいひさいち「コミカル・ミステリー・ツアー」元ネタリスト その1






いしいひさいち「コミカル・ミステリー・ツアー」元ネタリスト その1

201708コミカルミステリーツアー1117

ミステリ好きの漫画家の元祖はやはり、いしいひさいちでしょう。
かつて光文社から刊行されていた「EQ」というミステリ専門雑誌があります。「ジャーロ」の前身ですが、その「ジャーロ」も今や電子版しか販売されなくなってしまいました。
筆者の中学・高校の頃が最盛期でした。翻訳の現代ミステリが中心のため、毎号チェックしていたわけでないのですが、たまに御手洗物の短編が掲載されると買っていました。
当時、いしいひさいちの「コミカル・ミステリー・ツアー」も「EQ」に連載されており、いつも腹を抱えて大笑いしていた記憶があります。
ちょうどそんな時に朝日新聞で「となりの山田くん」の連載が始まり、快哉を叫んだものです。「山田くん」でも、某有名ミステリのトリックを流用して買ってきたサンマの数を増やしたり、作家志望のタブチ先生の部屋の壁に「目指せ!鮎哲賞」と貼り紙がしてあったりと、ミステリネタは豊富でした。
いつか、いしいひさいちのミステリネタを心ゆくまで堪能したいと願っていたところ、国内ミステリの収録をスタートした創元推理文庫から単行本が刊行されたのです。これは本当に嬉しい出来事で、しばらくのあいだは何度も何度も読み耽っていたため、筆者の手元にあるこの一冊はかなり手垢だらけになってしまっています。

それはともかくとして、このシリーズ、2006年の第4巻を最後に刊行が途絶えていますが、もう出ないんでしょうか?
また、最初の刊行から既に25年も過ぎ、そもそも扱われている作品が絶版だらけになってしまっているという現実もあります。当時は有名作ばかりを綺羅星の如く網羅して、「この漫画でネタにされたら人気作の証」というくらいのものだったんですが。
というわけで、懐かしい90年代懐古の意味も込め、元ネタリストを作成してみました。
初回は、1992年刊行の1冊目『コミカル・ミステリー・ツアー 赤禿連盟』から。(ちなみに上述の「めざせ!鮎哲賞」と書かれているネタも本書に収録されています)
ただし、ホームズ物はほぼ原題通りのため、またオリジナルキャラのネタは特に元ネタがないため、省略します。(4コマ漫画のタイトルに続けて、【】内が元ネタ)

・ソーンダイク研究室 →【ソーンダイク博士の事件簿】
・別れをツッコミに来た男 →【別れを告げに来た男】
・小誘拐 →【大誘拐】
・フレンチ最悪の事件 →【フレンチ警部最大の事件】
・シャドー(コバンザメ)81 →【シャドー81】
・くどいトランク →【黒いトランク】
・そして誰もいなかった →【そして誰もいなくなった】
・黄色い歯の犬 →【黄色い犬】
・中途中の家 →【中途の家】(翻訳によって「中途の家」だったり「途中の家」だったりする)
・住みついた女 →【噛みついた女】(どっちかというと、原題のほうがネタっぽい印象が……)
・文無し探偵 →【名無しの探偵事件ファイル】
・オザナリー →【ミザリー】
・給仕たちの沈黙 →【羊たちの沈黙】
・人間座椅子 →【人間椅子】
・怪人二十お面相 →【怪人二十面相】
・ウッドストック経由最終バス →【ウッドストック行最終バス】
・女王陛下のユーレイ号 →【女王陛下のユリシーズ号】
・弁と線 →【点と線】(このネタは傑作!「EQ」掲載時は「点と線と弁当」というタイトルだったような気がしますが、確認するすべがなし……)
・指つめる →【追いつめる】
・胸果つる街 →【夢果つる街】
・古い骨折り →【古い骨】
・マダム・タッソーが大まちがい →【マダム・タッソーがお待ちかね】
・立ちくらみ坂の人喰いの木 →【暗闇坂の人喰いの木】(『暗闇坂』は今や島田荘司の代表作の一つとされていますが、発表当時筆者は「?」という感想でした。このネタを読んで「あ、俺だけじゃない」と安心したものです)
・新宿ザメ →【新宿鮫】
・サウス・カロライナの殺人者 →【カロライナの殺人者】
・レッド・オクトーバーを追い払え →【レッド・オクトーバーを追え】
・広重病人事件 →【広重殺人事件】
・笑う婦人警官 →【笑う警官】
・ロウフィールド館の歌劇 →【ロウフィールド館の惨劇】
・寸劇のヴェール →【惨劇のヴェール】
・鏡の国の洗脳 →【鏡の国の戦争】
・パーフェクト・ロシア・スパイハウス →【パーフェクト・スパイ】【ロシア・ハウス】
・ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ大作戦 →【ティンカー・テイラー・ソルージャー・スパイ】
・船倉の犬たち →【戦争の犬たち】
・ジャッカルの日々 →【ジャッカルの日】(「日々」にしただけで後日譚になる、この不思議)
・鷲は舞い落ちた →【鷲は舞い降りた】
・スリーパーにシングルベッドを送れ →【スリーパーにシグナルを送れ】
・真相海流 →【深層海流】
・あなたに負けた人 →【あなたに似た人】
・いやけ →【さむけ】
・法律違反事務所 →【法律事務所】

こうしてみると、冒険小説が目立ちます(そして、そのほとんどが今は入手困難)。90年代っぽいラインナップです。
次回以降、続刊を紹介します。



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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
ブログ更新通知:https://twitter.com/squibbon19

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