備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

中島みゆき

中島みゆき「煙草」

201811中島みゆき289

中島みゆきのアルバム「御色なおし」(1985年)は、セルフカバー曲が集められた一枚です。
ここの収録されている「煙草」は、もともとは1982年に古手川祐子へ提供された曲でした。

この曲がなんとも不思議な歌詞です。
というのは、全編が「視覚」のみで構成されているのです。

歌詞をまるごと紹介するわけにはいかないため、「中島みゆき研究所」の該当ページへリンクをはっておきます。
http://miyuki-lab.jp/disco/lyric/ba130.shtml

「煙草をください」から始まりますが、その理由が「あの人に見せたいから」。
そのあとも「みつめてください」「移り気に見えるように
サビでは「煙草の煙が 途切れたすきに」、二人が踊る姿が見えてしまう、という展開になり「だれか 私の目を閉じて 何も見ないことにして」と締めくくられます。
続く2番のサビでも
「煙がつくり出したスクリーンには 幸せ見える
「あなたとあの娘 いつまで見える
と、徹底的に視覚にこだわります。

タバコと言えば、普通は味覚と嗅覚です。それがなぜこの曲では視覚なのか?

「煙草」というタイトルはずいぶんと大人っぽい印象を受けますが、この曲の提供を受けたとき、古手川祐子は22歳。まだまだ若い年齢です。
「煙草」というものを視覚でしか捉えられない。味や香りに親しんでいるわけではなく、単なるファッションとして描いているという点に、ういういしさを感じさせようという、そんな意図の詩なのかな、と思います。

他の楽曲に登場するタバコは
「煙草の煙を流すため お酒の香りを流すため」(髪を洗う女)
「メッキだらけの けばい茶店の隅っこは 雨やどりの女のための席ね
  今ごろどうしておいでだろうか 今夜は煙草が目にしみる」(涙)
「嘆かないわ愚痴らないわ もう1本タバコ頂戴」(ノスタルジア)
と、だいたいが酒場や喫茶店などのイメージと結びついています。
中島みゆき本人は煙草にはあまり良い印象は持っていないかな、と思いますね。

中島みゆきの「ガラス」

201811中島みゆき289

中島みゆきの曲を聴いていると、「ガラス」という単語が妙に引っかかることがよくあります。

一般的に「ガラス」という言葉からはどのようなことがイメージされるでしょう。
・美しい。
・透明。
・冷たい。
・硬い。
・繊細。
・割れる音。
・破片……

さまざまなイメージがあります。
他のアーティストの楽曲に出てくるガラスと言えば、

「ガラスの十代」光GENJI、「硝子の少年」KinKi Kids
いずれも「繊細」なイメージですね。

「季節だけが君を変える」BOOWY
冒頭:ガラスの中の退屈な街
サビ:ガラス細工のフィーリング
やはりいずれも「繊細」なイメージがあります。

さて、中島みゆきの歌詞で目立つのは「破片」のイメージです。

「裸足で走れ」(1979年)
・ 裸足で 裸足で ガラスの荒れ地を 裸足で 突っ走れ
・ここまでおいでと 手を振り手招き 背中へガラスを降り注ぐ
「泥海の中から」(1979年)
おまえが壊した 人の心のガラス戸は おまえの明日を 照らすかけらに変わるだろう
「儀式(セレモニー)」(1986年)
ひきずられてゆく 波の中で光る ガラスたちの折れる 寒い音がする
「匂いガラス」(1986年)
・誰かがなくし 誰かが拾った 甘くて 酸っぱい リンゴのような 匂いガラス
・胸に刺さった ガラスのかけら 匂うほどに 疼くのは
ガラスがみちびく 怪しの日記
「あした」(1989年)
ガラスなら あなたの手の中で壊れたい
「匂いガラス」は、同題ドラマの主題歌として作られたため、ドラマの内容に合わせて歌われており、さまざまな「ガラス」が登場します。しかし、その中でも2つ目の「胸に刺さった ガラスのかけら 匂うほどに 疼くのは」は中島みゆきオリジナルの表現であり、ここではやはり「破片」のイメージです。

壊れやすさの象徴、ロマンティックな小道具として「ガラスでできたもの」が登場することもあります。

「バス通り」(1981年)
ため息みたいな 時計の歌を 聞きながら 私はガラスの指輪をしずかに落とす

「誘惑」(1982年)
ガラスの靴を女は 隠して持っています

そのほかに見られるのは、「透明な檻」のイメージです。

「with」(1990年)
ドアのあかないガラスの城でみんな戦争の仕度を続けてる
「やばい恋」(1992年)
光りながら昇ってゆく ガラスのエレベーターの外で 街灯り遠ざかるあの人に似てるわ
「ガラスのエレベーター」というのは比喩でも何でもなく、単なる情景描写とも取れますが、閉じ込められているイメージもあります。(筆者は「チョコレート工場の秘密」の続編「ガラスのエレベーター宇宙にとびだす」を連想してしまうのですが……)

また、窓ガラスもよく登場します。
研ナオコに提供したタイトルがずばり「窓ガラス」(1978年)という歌もありますが、それを含めて次のような曲があります。いずれも「冷たい」「硬い」という印象を持ちます。

「朝焼け」(1977年)
曇りガラス 外は寒い
「ホームにて」(1977年)
ふるさとは 走り続けた ホームの果て 叩き続けた 窓ガラスの果て
「窓ガラス」(1978年)
それよりも 雨雲が気にかかるふりで あたしは窓のガラスで 涙とめる
「タクシードライバー」(1979年)
車のガラスに額を押しつけて胸まで酔ってるふりをしてみても

さて、ここまで印象が強いものから順に書き出していきましたが、お気づきでしょうか。
中島みゆきのキャリアの中でさまざまに登場する「ガラス」ですが、実は年代ごとにイメージは固まっているのです。

【“窓ガラス”期】
「朝焼け」(1977年)
「ホームにて」(1977年)
「窓ガラス」(1978年)
「タクシードライバー」(1979年)

【“破片”期】(壊れやすい小道具含む)
「裸足で走れ」(1979年)
「泥海の中から」(1979年)
「バス通り」(1981年)※小道具
「誘惑」(1982年)※小道具
「儀式(セレモニー)」(1986年)
「匂いガラス」(1986年)
「あした」(1989年)
 
【“透明な檻”期】
「with」(1990年)
「やばい恋」(1992年)

さて、甚だ恣意的なまとめ方であるうえ、「それがどうした」と言わざるを得ないことではあるのですが、先日の記事「『中島みゆき全歌集1975-1986』(朝日文庫)収録作一覧」「『中島みゆき全歌集1987-2003』(朝日文庫)収録作一覧」を書きながら、ふと気づいたため、記事にしてみました。

なお、本記事を書くにあたっては「中島みゆき研究所」のサイト内検索を使わせていただきました。

『中島みゆき全歌集1987-2003』(朝日文庫)収録作一覧

201811中島みゆき290

前回に続き、「中島みゆき全歌集」収録作の一覧です。
提供曲に加え、「夜会」のために書き下ろされた楽曲もあり、シングル・アルバムでは聞けない歌が多数収録されています。
自身のシングル・アルバムで発表されたもの以外は注釈をつけました。
※は提供曲と提供されたアーティスト。
★は「夜会」で発表されたものです(のちにアルバムなどに収録されたものを含む)。
前回の記事同様、筆者がマークを付けたものなので、誤っているものもあるかも知れません。

●1987
クリスマスソングを唄うように
空港日誌 ※薬師丸ひろ子
未完成 ※薬師丸ひろ子
御機嫌如何
シュガー

●1988
涙―Made in tears― ※前川清
仮面
湾岸24時
土用波
泥は降りしきる
ミュージシャン
黄色い犬
クレンジングクリーム
ローリング
あり、か ※田中一郎&甲斐よしひろ
おとぎばなし ※薬師丸ひろ子
FU-JI-TSU ※工藤静香
証拠をみせて ※工藤静香
ブリリアント・ホワイト ※工藤静香
さよならの逆説 ※工藤静香
裸爪のライオン ※工藤静香
MUGO・ん…色っぽい ※工藤静香
群衆 ※工藤静香
野ウサギのように
ふらふら
MEGAMI
気にしないで
十二月
たとえ世界が空から落ちても
愛よりも
吹雪

●1989
あした
グッバイガール
な・ま・い・き ※長山洋子
肩幅の未来 ※長山洋子
黄砂に吹かれて ※工藤静香
秋子 ※工藤静香
二雙の舟 ★
くらやみ乙女 ※佐田玲子

●1990
笑ってよエンジェル
365の夜と昼 ※坪倉唯子
夜を往け
ふたつの炎
3分後に捨ててもいい
新曾根崎心中
君の昔を
遠雷
ふたりは
北の国の習い
with
私について ※工藤静香
TEL‥ME ※工藤静香
Maybe

●1991
Embrace ※工藤静香
つぎはぎのポートレイト ※工藤静香
トーキョー迷子
C.Q.
おだやかな時代
渚へ
永久欠番
た・わ・わ
サッポロSNOWY
南三条
炎と水
萩野原 ★
殺してしまおう ★
I love him ★

●1992
誕生
あどけない話 ※吉田日出子
浅い眠り
親愛なる者へ
花束を私のために ※森山良子
EAST ASIA
やばい恋
此処じゃない何処かへ
妹じゃあるまいし
風の姿 ※中江有里
泣かないでアマテラス ★
DIAMOND CAGE ★

●1993
慟哭 ※工藤静香
コール ※工藤静香
他人の街 ※工藤静香
そのあとは雨の中 ※工藤静香
ジェラシー・ジェラシー
兆しのシーズン
かもめの歌 ※パトリシア・カース
夢みる勇気
孤独の肖像 1st.
人待ち歌 ★
最後の女神

●1994
あの人に似ている ※高倉健&裕木奈江
きっと愛がある ※西田ひかる
空と君のあいだに
もう桟橋に灯りは点らない
バラ色の未来
ひまわり“SUZWARD”
アンテナの街
てんびん秤
流星
夢だったんだね
風にならないか
YOU NEVER NEED ME
眠らないで
思い出させてあげる ★
子守歌 ★
生きてゆくおまえ ★
シャングリラ ★

●1995
旅人のうた
SE・TSU・NA・KU・TE
永遠の嘘をついてくれ ※吉田拓郎
TOURIST ★
1人旅のススメ ★
拾われた猫のように ★
誰かが私を憎んでいる ★
この思いに偽りはなく ★
1人で生まれて来たのだから ★
途方に暮れて ★
ハリネズミ ★
市場は眠らない ★
紅い河 ★
7月のジャスミン ★
自白 ★
目撃者の証言 ★
幸せになりなさい ★

●1996  
激情 ※工藤静香
伝説
ALONE, PLEASE
それは愛ではない
なつかない猫
SINGLES BAR
蒼い時代
たかが愛
阿檀の木の下で
パラダイス・カフェ
目を開けて最初に君を見たい
JBCのテーマ ★
エコー ★
誰だってナイフになれる ★
RAIN ★
公然の秘密 ★

●1997  
幸せ ※小林幸子
You don't know ※石嶺聡子
愛情物語
紅灯の海 ※竹中直人

●1998
命の別名
雪・月・花 ※工藤静香
わたしの子供になりなさい
下町の上、山の手の下
清流
私たちは春の中で
木曜の夜
4. 2. 3.
瞬きもせず
夢を叶えて ★
夢の代わりに ★
夢を叶えて ★
I am ★
故国 ★
I am ★
カレンダー ★
知人・友人・愛人・家人 ★
空しき人へ ★
夢の代わりに ★
献灯 ★
明日なき我等 ★
フロンティア ★
叶わぬ夢 ★
フロンティア ★

●1999  
竹の歌 ★
NEVER CRY OVER SPILT MIlK ★
いつか夢の中へ ★
羊の言葉 ★
異国の女 ★
あなたの言葉がわからない ★
難破船 ★
Good Morning, Ms.Castaway ★
LAST SCENE ★
女という商売 ★
SMILE, SMILE ★
白菊 ★
時効 ★
愛から遠く離れて ★

●2000
握手 ※Non
地上の星
ヘッドライト・テールライト
帰省※由紀さおり・安田祥子
夢の通り道を僕は歩いている
後悔
MERRY-GO-ROUND
天使の階段
過ぎゆく夏
結婚
粉雪は忘れ薬
TellMe, Sister
朱色の花を抱きしめて ★
朱を奪う紫 ★
疑えばきりがない ★
ツンドラ・バード ★
記憶 ★
六花 ★

●2001  
囁く雨
相席
樹高千丈 落葉帰根
あのバスに
心守歌
カーニヴァルだったね
夜行
月迎え
LOVERS ONLY

●2002
陽紡ぎ唄 ★
紫の桜 ★
騙りの庭 ★
凍原楼閣 ★
街路樹 ★
氷脈 ★
何を待っているの ★
氷を踏んで ★

●2003
銀の龍の背に乗って
恋文
恋とはかぎらない
川風
ミラージュ・ホテル
寄り添う風
情婦の証言
ナイトキャップ・スペシャル
月夜同舟
思い出だけではつらすぎる※柴咲コウ

中島みゆき全歌集1987-2003 (朝日文庫)
中島みゆき
朝日新聞出版
2015-11-06


関連記事:
『中島みゆき全歌集1975-1986』(朝日文庫)収録作一覧

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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
ブログ更新通知:https://twitter.com/squibbon19

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