備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

任侠映画

東映「三代目襲名」(1974年)

先日の「山口三代目」に続き、「三代目襲名」も見ました。

これは、もともと「山口三代目 襲名篇」のタイトルで企画が進行していたもので、「山口組三代目」の続編となります。
監督は、前作の山下耕作に変わり、小沢茂弘。ストーリーはつながっているのに、ガラッと雰囲気が変わりますね。前半は「網走番外地」「女囚さそり」を思わせるようなアクション映画風。後半には渡瀬恒彦が突然登場し、一気に「仁義なき戦い」以降の実録路線風になってしまいます。いずれにせよ前作のコテコテの任侠映画よりはかなり動きの激しい映画です。

面白いのは予告編。
DVDには特報、予告編、予告第2弾と3本の予告編が収録されていますが、本編の映像が使われているのはなんと「予告第2弾」のみ。
では、他の予告はどうなっているのかといえば、ほとんどは「山口組三代目」の映像で、「仁義なき戦い」など、全く別の映画の映像まで紛れ込ませています。
これで通用してしまうのが、当時の映画界のすごいところ。

いずれにせよ、前作のように「これは名作!」といえるような堂々たる出来映えではなく、当時の東映らしい1本という印象でした。高倉健のかっこよさは一作目には及びません。

東映としては、さらなる続編「山口組 激突篇」へと突入する気満々で、ラストは次回作への期待を大いに盛り上げるナレーションで締めくくられています。
しかし、結局のところ警察の締め付けや批判的な世論によって、その企画は幻となってしまったのでした。
まあしかし、「日本の首領」が内容的にはその役割を担っていると言えなくもありません。

三代目襲名 [DVD]
東映ビデオ



東映「山口組三代目」(1973年)鑑賞



山下耕作監督、高倉健主演の映画「山口組三代目」をようやく観ました。
2年ほど前、このご時世にまさかのDVD化となったので「いずれ」と思っていたのですが、当ブログで何度も書いているとおり、目下、DVDといえどもなかなか映画を観られない状況のため、そのままになってしまっていました。(そもそも、今日こそ、と思ってレンタルショップを覗くと貸出中、ということも多かったのですが)

1973年、「仁義なき戦い」公開直後の製作ということで、なおかつ山口組三代目の田岡一雄組長を実名で主役に据えていることもあり、実録路線の一本と数えられていますが、実際に観てみるとコッテコテの任侠映画。やくざの美化どころではない、様式化、そして神格化された世界です。
しかし、これがびっくりするくらい面白い! 高倉健、かっこいい!
高倉健の映画を全部見ているわけではありませんが、これは間違いなく代表作の一本と言えるレベルです。Wikipediaを見ると当時調査した観客の満足度は92%と、「アホちゃうか」と言いたくなるような信じられない数字が書かれていますが、これはホント、「昭和残侠伝」と並ぶ正統的な任侠映画ですね。殴り込みのシーンは花田秀次郎にしか見えません。
「仁義なき戦い」と並行してこんな映画を作ってしまう東映という会社にますます惚れました。

ところで、Wikipediaで田岡一雄の項を読むと、生い立ちについては「この映画のあらすじ紹介か?」と思うくらい、細部まで完全に合わせてあるので、ちょっと笑ってしまいました。
映画の原作は徳間文庫に今も入っている「田岡一雄自伝」ですが、この内容が公式の伝記ということになっているのでしょうね。



ちなみに、この映画の5年前に発表された溝口敦『血と抗争』は、暴力団への批判的な視点で描かれているため、この映画に感動したあとで読み返すといろいろがっかりします。






 

「仁義なき戦い」関連本集成

201809笠原和夫263

「笠原和夫傑作選」の刊行を記念して、映画「仁義なき戦い」に関した本をズラズラっとご紹介します。点数が多いので、内容について簡単に。詳しいことはリンク先のAmazonでレビューを御覧ください。

実際の事件について





全ての原点である原作。広能昌三のモデルである美能幸三の手記を元に「広島戦争」を描いたルポルタージュです。角川文庫で長らくを版を重ねていましたが、今は電子書籍しか販売されていないようです。



第一部で梅宮辰夫が演じた若杉寛のモデル・大西政寛と、第二部で北大路欣也が演じた山中正治のモデル・山上光治の評伝。広島ヤクザのなかでも特に伝説に語られる2人です。



モデルになった人物・事件を紹介していく内容。ビジュアル満載なので、皆さんの尊顔を拝めます。ひとりひとりの人物について詳細に紹介しているため、実際の事件について書かれた本を読むときも参考になります。



上記の本の姉妹編的な内容です。実際の事件が映画ではどのように脚色されて描かれているのかが詳細に分析されており、シリーズのファンには興味深い内容です。



「学ぶ」というところに「そんなものを学ぶ必要が??」とツッコミを入れたくなってしまいますが、タイトル通り、「仁義なき戦い」に始まる東映実録路線の映画を参照しながら現実のヤクザ抗争史を綴っていきます。
関係者への配慮から、映画化にあたっては人物名や事件の背景などかなり脚色されることも多く、勉強になります。

映画化

映画になった経緯については、さまざまに語られていますが、まずは当事者たちの証言。



当ブログで何度も何度も紹介している笠原和夫のインタビュー集。こちらの記事で詳しく紹介しています。→笠原和夫を「読む」


映画監督 深作欣二
深作 欣二
ワイズ出版






「昭和の劇」と同じく鈴木一誌の装丁で、本棚に並べるとこんなにかっこいい2冊はありません!
というのはともかく、深作欣二のインタビュー集です。

「仁義なき戦い」調査・取材録集成
笠原 和夫
太田出版
2005-07-09


鈴木一誌の装丁でもう1冊。タイトル通り、笠原和夫が作成した取材録を書籍化したものです。
今回刊行された「笠原和夫傑作選」の見返しに取材録のカラーコピーが掲載されていますが、その全貌がこの本には収録されているというわけです。
関係者へのインタビューの記録、自作の人物関係図や年表、取材からシナリオ執筆に至る時期の日記など、てんこ盛りの内容。映画本のコーナーではなく、「歴史史料」のコーナーにでも置きたくなるような本です。



2003年にNHKのETV特集で放映された同タイトルの番組を書籍化したもの。筆者も見ましたが非常に良い内容でした。番組自体は「仁義なき戦い」ブルーレイ版BOXに特典ディスクとして収録されています。
「仁義なき戦い」シリーズのプロデューサーである日下部吾朗の回顧録。



東映京都撮影所所長として任侠路線をスタートさせ、社長として実録路線を驀進させた岡田茂の自伝。東映ファン必読です。

ファンブック

仁義なき戦い 浪漫アルバム
杉作 J太郎
徳間書店
1998-05-01


「仁義なき戦い」のファンブックは大量に出ていますが、一番最初に出たのがこれで、なおかつその後、これを超えるものは現れていません。20年経った今も版を重ねている大ロングセラーです。ファン必携。

笠原和夫を「読む」

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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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