備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

任侠映画

「仁義の墓場」裏話もたっぷり収録された「文藝別冊 渡哲也」

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河出書房新社のムックシリーズ「文藝別冊」から渡哲也特集号が刊行されました。

渡哲也といえば、「西部警察」大門軍団のイメージが強いのですが、個人的にはあまりそこには思い入れがありません。中学生のころ(平成元年ごろ)は、夕方に帰ってくるとほぼ毎日「西部警察」が再放送されていて、当然熱心に見ていたわけですが、当時はこの世で一番カッコいい男は舘ひろしだと思い込んでいて、ポッポこと鳩村刑事目当てで見ていたわけです。
同じ時間帯に裏で「あぶない刑事」の再放送をやっていると、そっちを見ていたりして、特に渡哲也には注目をしておりませんでした。
では、渡哲也といえば何が真っ先にあがるかといえば、深作欣二監督の名作「仁義の墓場」です。
渡哲也が亡くなったことで大門軍団にフォーカスした書籍や雑誌特集などが色々出ているものの、それらはすべてスルーしていました。
文藝別冊もそれほど期待はしていなかったのですが、書店でパラパラと眺めると前半を春日太一氏が責任編集ということで「仁義の墓場」についてもかなりページが割かれていました(なんと多岐川裕美のインタビューまで!)。
一気にテンションが上って買ってきたわけです。

「仁義の墓場」は私が生まれた年に公開された映画なので、見たのは大人になってDVDが発売されてから。実録シリーズの一つとして、特に予備知識もなく見たのですが、これは強烈でした。
以降、何度も見直しています。
鴨井達比古によるシナリオが深作欣二のお気に召さず、松田寛夫、神波史男によって改稿(というレベルではなくイチから作り直した)シナリオを元に撮影されています。
それを含めた製作過程については、これまでに
・深作欣二へのインタビュー(ワイズ出版「映画監督 深作欣二」に収録)
・鴨井達比古による第四稿とエッセイ(月刊「シナリオ」1975年5月号に収録)
・神波史男による鴨井達比古への反論エッセイ(「映画芸術」2012年12月増刊「ぼうふら脚本家神波史男の光芒」に収録)
などで読んでいました。
それぞれ比較すると話に若干の食い違いがあるように感じるものの、総じて「大変だった」ということになるのですが、今回の「文藝別冊 渡哲也」に収録された助監督・梶間俊一氏へのインタビューはこれまで読んだ中で最も面白い内容でした。
シナリオを巡るトラブルはサラッとしか触れていませんが、タイトルバックのエピソードからして抱腹絶倒。深作欣二がどんな風にすごい監督だったかということが、非常によくわかります。
余談ですが、私が「仁義の墓場」で一番好きなのはこのタイトルバックで、自分の結婚式のとき、恒例の「生い立ちビデオ」はこのタイトルバックのパロディにしようと思っていたくらいなのですが、音源が手に入らず、うまくまとめるセンスもないため諦めました。

渡哲也や田中邦衛の怪演についても壮絶な話ばかりで、いやこれはほんと、シナリオ云々を超越して「深作欣二と渡哲也の映画」だったんだなあ、と思いました。
梶間俊一、多岐川裕美のインタビューを合わせて、「仁義の墓場」については20ページも語られています。ファンはお見逃しなく。

渡哲也 (文藝別冊)
河出書房新社
2020-11-25


笠原和夫脚本「博奕打ち いのち札」ついにDVD発売!

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東映ビデオからは未だDVDが発売されていない笠原和夫脚本・山下耕作監督の任侠映画「博奕打ち いのち札」。
デアゴスティーニから隔週で刊行が続いていた「東映任侠映画傑作DVDコレクション」の一本として、ついにDVD化されました!

この手のDVD付録つき雑誌、定価でDVDを買っているような熱心なファンは軽視しがちですが、ときどきこういう未DVD化作品が紛れているので油断できません。
同じくデアゴスティーニから出ていた「東宝・新東宝戦争映画DVDコレクション」は、「東宝・新東宝」というあまりに雑なくくりに呆れ、「東宝の戦争映画はどうせ全部DVDになってるし」と、まるでノーチェックだったのですが、その中に結城昌治原作・深作欣二監督・新藤兼人脚本の「軍旗はためく下に」が収録されてビックリしました。そもそも独立プロが製作しているので、東宝映画という認識がなかったのですが、配給は東宝だったんですね。
しかも、それに気づいたのは発売から数ヶ月後だったため、すでに出版社の在庫はなく、Amazonでは転売屋大活躍のプレミア価格になっているという……(ちなみに筆者は、10年以上前にアメリカでDVDが発売された際、輸入ショップで買っていたので、どうしても買わなければ、ということはなかったんですが)



ともかく、そういうがっかりな経験があるため、今回は「絶対に買い逃がさない」と心に決め、本屋でちゃんと予約しましたよ。
しかも、うっかり予約を忘れられては困るので、朝イチで「今日が発売日だから忘れないで取り置きしてくださいね」と念押しまでして、夕方に買ってきました。

「東映任侠映画傑作DVDコレクション」の刊行が始まって4年半。最初に発表されたラインナップの中で「これだけは絶対に買わねば!」と思い続け、ようやくです。他のラインナップでめぼしいものはすでに東映からDVDが出ているためコクション済み。笠原和夫ファンとしてDVD化を熱望していたので、感慨深いものがあります。

というわけで、出張やらなにやらでしばらく見る時間がないんですが、ともかくこれで「買わねば、買わねば」という強迫観念から解放されてぐっすり眠れます。ありがとうデアゴスティーニ。
この記事を読んでいる笠原和夫ファンのみなさんも、早めに購入されることをおすすめします!




関連記事:(=DVD化を待ち望んでいた記録)
笠原和夫脚本「博奕打ち いのち札」ようやくDVD化!
日本でDVDが発売されていない邦画2「博奕打ち いのち札」(1971年・山下耕作監督)
国書刊行会「笠原和夫傑作選」収録作品解説(第2回)

笠原和夫脚本「博奕打ち いのち札」ようやくDVD化!

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以前の記事にも書きましたが、笠原和夫脚本・山下耕作監督の東映任侠映画「博奕打ち いのち札」は、これまでずっとDVD化されていませんでした。
詳しいことは以前の記事をご参照いただければと思いますが、動画配信はされているため、封印作品というわけではなく、なぜDVDになっていないのか、謎というよりありません。



ゼロ年代を怒濤のDVDコレクターとして過ごしていた筆者としては、動画配信でいつでも見られる映画であっても、笠原和夫の代表作とあらばなんとかDVDでコレクションしたい。
ずっとそう思っていました。

それがついに!

……というのは、以前の記事の続きになるのですが、2014年に刊行が始まったデアゴスティーニ「東映任侠映画傑作DVDコレクション」では、「好評につき100号まで延長」されてもとうとう「いのち札」は出なかったため、筆者はすっかり諦めていました。
当然、このシリーズも100号で終わるものと思って続刊予定のチェックもしていませんでした。
そもそも今は、定期購読者のみを対象に刊行されており、書店店頭には並んでいないため、忘れかけていたというのが正直なところです。
ところが!

ふと思い出して公式サイトへアクセスしたところ、なんと100号を過ぎてもまだ刊行が続いているではありませんか。
これはもしかしたら……と、おそるおそる刊行予定を見たところ!
ついに来ました!

7月16日発売予定119号で「博奕打ち いのち札」の登場です。
今のところ公開されているラインナップはその次の120号で、これが「関東緋桜一家」なので、このシリーズももしかするとここでいよいよ終わりかも知れません。

さて、あとは気をつけなければいけないのは「買いそびれ」です。
今のところAmazonでは1ヶ月程度先のものまで予約を受けているようです。
6月になったら忘れずに毎日、チェックをしないと!ですね。
Amazonの検索窓を貼っておきます。



関連記事:
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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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