備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

横溝正史

別冊幻影城創刊号「横溝正史」の挿絵は花輪和一が担当


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先日、出張のついでに久しぶりに神田の古本屋を覗いていたのですが、「別冊幻影城創刊号 横溝正史 本陣殺人事件・獄門島」を見つけて買ってきました。
「幻影城」本誌は全て揃えて持っているのですが、別冊の方は何冊か買っているという程度で、揃えてはいません。この創刊号も持っていませんでした。
ところが、少し前に初めて知ったのですが、この「本陣殺人事件」は花輪和一が挿絵をつけているんですね。それで、買うことにしたわけです。500円とえらく安かったのでためらう理由なし。

花輪和一は幻影城本誌でも常連の作家でしたが、昭和50年頃といえば漫画家としては「ガロ」にポツポツと作品を発表していて、まだ単著はありませんでした。
イラストレーターとしてはアングラな雑誌やポスターなどを中心に活動していたようです。
この時期に主力の挿絵画家の一人として起用したのはさすが慧眼です。

本誌に描いた挿絵はこれまでも眺めていたのですが、別冊の方はノーチェックでした。
正直なところ、横溝正史と花輪和一という組み合わせは意外でした。「怪奇」というキーワードだけ見れば共通するかもしれませんが、戦後の理知的な横溝作品とは相容れないように思っていました。
しかし、実際に見てみると、かなりいい感じですね。
冒頭のイラストは、金田一耕助。まだ映画「犬神家の一族」公開前なので、映像からの影響は皆無です。
また、この絵は鈴子と猫の墓。

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これは、作品の雰囲気をよく表しつつ、完全に花輪和一の世界ですね。

別冊幻影城では、ほかにもいろいろ挿絵を描いているようですが、乱歩の「陰獣」の挿絵も花輪和一のようなので、また見かけたら買おうかなと思います。
 

「犬神家の一族」とスキー

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今年のクリスマスイヴには、市川崑監督のリメイク版以来12年ぶりの映像化となるドラマ「犬神家の一族」が放映されます。
筆者の興味は、「犬神家の一族」が映画化されるたびに期待しているアレ●●が、今回こそいよいよ登場するのではないか、というその一点に尽きます。

というのは、「スキー」のことです。
原作を読んでいても覚えていない方がほとんどだと思いますが、「犬神家の一族」原作には、終盤の山狩りで金田一耕助がスキーの腕前を披露するシーンがあるのです。
スキーが大好きな筆者としては、ぜひともここは映像化してほしい。
ところが、これまで映像化された「犬神家」には、スキーが登場したことは全くありません。

そもそも、季節の問題があります。
原作は、10月18日からスタートします。金田一耕助が那須を訪れ、若林さんが殺される。ここから物語は始まり、なんやかんやあって、両脚が湖面からニョッキリ生える有名なシーンは12月13日。つまり、約2ヶ月に渡って事件は続いていたというわけです。
しかし、映画やドラマではもっと急展開します。市川崑監督版も始まりは原作通り秋ですが、冬になる前に事件は終わってしまいます。

原作では、例の「脚」も、分厚く凍った湖面から生えているわけですが、映像化されたものはいずれもさざなみが立つ中に脚が浮かんでいます。しかも場合によっては汀から結構な距離があったりして「どうやって突き立てたんだ?」と、犯人の話を聞いた後でもその疑問が消えなかったりします。
そんなわけで、そもそもスキーシーズンまでたどり着いていない映画・ドラマばかりなのですが、今回はちょっと期待してしまいますね。なんと言っても放映はクリスマス! 物語の時期が冬になっている可能性も高いでしょう。

さて肝心のスキーですが、原作では
両肩にステッキをかついで、タ、タ、タと登っていった。
金田一耕助は兎のようにピョンピョンと、急な坂を登っていったが、やがて沼の平のスロープの頂上にたどりついた(後略)
という形で、ひたすら登っています。
スキーなのに登り続けるなんて……と思われるかも知れませんが、これは山スキー。
この時代にはまだ現代のように整備されたスキーゲレンデというものはほとんどありませんでした。
日本で最初にリストがかけられたのは草津に昭和23年ということなので、金田一耕助が出身地の東北でやっていたスキーというのは、冬山登山のことなのです。
もともと日本にスキーが伝えられたのは、雪中行軍の手段として軍隊で教えられたものでした。皇室がスキーをたしなまれるのもその名残か?と思っていますが、どうなんでしょう。
それはともかく、雪山での移動手段して取り入れられたスキーが、やがてレジャーになっていったというわけです。
「犬神家の一族」で描かれるスキーも、冬山でも犯人追跡のための手段、ということになります。

スキー好きの筆者としては、この当時の山スキーを正確に映像で再現してほしい。ミステリファンだけでなく、全国のスキーヤーもテレビに釘付けになること確実と思われます。
とはいえ、映画にスキーが出てくること自体、かなり珍しいことです。日本初の本格スキー映画と言われる「私をスキーに連れてって」は、今のところ日本唯一の本格スキー映画とも言われています。スキーの映画って、撮るのが大変らしいんですよね。
そんなわけで、ミステリとスキーの2度美味しい映像化をずっと待ち望んでいますが、どうなることかさて。

月見山と「悪魔が来りて笛を吹く」

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当ブログで何度もしつこく話題にしている「悪魔が来たり笛を吹く」の話をまた。
以前の記事:
横溝正史「悪魔が来りて笛を吹く」の舞台をGoogleストリートビューで巡る
映画「悪魔が来りて笛を吹く」(1979年・東映)のこと

先日、天気の良い休日に須磨・月見山近辺をぶらぶらする機会があり、「悪魔ここに誕生す」の場所を探してきました。

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以前の記事を書く際にストリービューで見当はつけていたため、すんなりとたどり着きました
風光明媚な住宅街ですが、フェンスに囲まれた広大な市有地が広がっています。このあたりが玉虫伯爵邸跡地に該当すると思われます。
それにしても、かなり高級住宅街と思われる雰囲気ですが、なぜこんなにも広い更地があるのでしょう。やはり、あれだけ凄惨な事件の発端、悪魔の誕生地ということで、事故物件扱いなんでしょうか(?)。

さて、以前の記事でもご紹介した映画「悪魔が来たり笛を吹く」(1979年・東映)での、月見山のシーン。

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夜間のシーンなので分かりづらいのですが、高台にある伯爵邸跡地の遠景に海が広がっています。
実際に月見山に立ってみると、このショットの構図がどれだけ正しいか、よくわかります。
現地の写真の遠景にも海が見えます。また、本記事の冒頭に掲げた写真は月見山の交差点から撮影したものですが、街全体が斜面にあることがおわかりいただけると思います。
映画の該当シーンは、この位置関係が正確に再現されています。

ちなみに、先日のNHK版の該当シーンはこちら。
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また、1977年毎日放送製作の「横溝正史シリーズ」版はこちら。
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いずれも原作を読んだだけであれば、特に違和感はないのですが、実際の月見山の景色とは合致しません。
映画版を撮影したがロケなのかセットなのかよく知りませんが、須磨・月見山をよく知っているスタッフによって作られたシーンと思われます。

ついでに須磨寺も参拝してきました。
金田一耕助が宿泊した「三春園」のモデルとなった旅館・寿楼臨水亭。

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関連記事:
横溝正史「悪魔が来りて笛を吹く」の舞台をGoogleストリートビューで巡る
映画「悪魔が来りて笛を吹く」(1979年・東映)のこと

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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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