備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

映画

国書刊行会「笠原和夫傑作選 第一巻 博奕打ち 総長賭博――初期~任侠映画篇」入手

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第一回配本にあわせて大騒ぎしていた国書刊行会「笠原和夫傑作選」ですが、第2回配本である「第一巻 博奕打ち 総長賭博――初期~任侠映画篇」が発売されました。(関連記事:国書刊行会「笠原和夫傑作選」刊行開始!



収録作品の紹介は、以前の記事で書いたので省略しますが、本編以外の収録内容を見ていきます。

まずは月報のような形でついている附録冊子。
まずは笠原和夫のエッセイ4編。
はばかりながら 笠原和夫
白牡丹想記 笠原和夫
総長賭博、お前、ありゃ芸術やで 笠原和夫
黒澤映画は私の青春に差し込んだ陽射し 笠原和夫
笠原和夫の「劇」と「女」 高橋洋
「はばかりながら」は、「キネマ旬報」1971年8月30日増刊〈任侠映画傑作選〉掲載のエッセイ。任侠映画ブーム末期に書かれたもの。読んだことあるなあ、と思ったら掲載号を持っていました。

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この号には、笠原和夫のシナリオが2編、「博奕打ち いのち札」と共作の「日本侠客伝 関東篇」とが収録されています。任侠映画の特集号で、選者35人の投票による任侠映画ベスト30も発表されていますが、1位は「明治侠客伝 三代目襲名」(加藤泰監督・村尾昭、鈴木則文脚本)でした。

「白牡丹想記」は、藤純子引退記念作「関東緋桜一家」公開にあわせ、雑誌「シナリオ」に掲載されたもの。

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「総長賭博、お前、ありゃ芸術やで」は、雑誌「シナリオ」1974年6月号に掲載されたエッセイ。ちなみに「シナリオ」のこの号には笠原和夫のシナリオは掲載されていません。

「黒澤映画は私の青春に差し込んだ陽射し」は、「キネマ旬報」1975年10月上旬号の「七人の侍」特集に寄せられた一文。実作者の視点から「七人の侍」へのかなり突っ込んだ批評になっており、黒澤明ファンとしても、これはかなり読み応えがありました。

最後は、なんと高橋洋による笠原和夫論!
これは高橋洋ファンでもある筆者には嬉しいものでした。
高橋洋については、こちらの記事参照:「地獄は実在する 高橋洋恐怖劇傑作選」2月9日発売予定!
相変わらず話が難しくて、電車の中でサラッと読んだ程度ではいまいち意味がよくわかりませんが、あとでもう一度じっくり読み直そうと思います。

さて、本編ですが、この巻でいちばん楽しみにしていたのは、ボーナストラックとして収録されている「映画三国志」です。
これは平成2年に日本テレビ「金曜ロードショー」の枠で放映されたドラマなのですが、「昭和の劇」でも全く触れられていない(巻末の作品リストにも載っていない)ため、筆者は存在すら知りませんでした。
大下英治の「小説東映 映画三国志」を原作したドラマということで、主人公はのちに京都撮影所長から東映社長まで務めた岡田茂ですが、ドラマでは「倉田勝」として、中村雅俊が演じていたようです。
東映の前身である東横映画への入社から、「きけわだつみのこえ」が大ヒットし、東映が設立されるまでの岡田茂の青春を描いています。
期待したような「義理欠く恥かく人情欠く三角マーク」のえげつない話ではありませんが、登場人部たちは非常に生き生きとしていて、魅力的です。片岡千恵蔵登場シーンは、「三本指の男」をロケ中で、ドラマではどんな風だったのかぜひ見てみたいものです。
前巻にも増して熱の入った伊藤彰彦氏による解説によれば、笠原和夫はこのドラマのために、原作以上に緻密な取材を敢行したとのことで、さすがです。

笠原和夫を「読む」
 

東映「三代目襲名」(1974年)

先日の「山口三代目」に続き、「三代目襲名」も見ました。

これは、もともと「山口三代目 襲名篇」のタイトルで企画が進行していたもので、「山口組三代目」の続編となります。
監督は、前作の山下耕作に変わり、小沢茂弘。ストーリーはつながっているのに、ガラッと雰囲気が変わりますね。前半は「網走番外地」「女囚さそり」を思わせるようなアクション映画風。後半には渡瀬恒彦が突然登場し、一気に「仁義なき戦い」以降の実録路線風になってしまいます。いずれにせよ前作のコテコテの任侠映画よりはかなり動きの激しい映画です。

面白いのは予告編。
DVDには特報、予告編、予告第2弾と3本の予告編が収録されていますが、本編の映像が使われているのはなんと「予告第2弾」のみ。
では、他の予告はどうなっているのかといえば、ほとんどは「山口組三代目」の映像で、「仁義なき戦い」など、全く別の映画の映像まで紛れ込ませています。
これで通用してしまうのが、当時の映画界のすごいところ。

いずれにせよ、前作のように「これは名作!」といえるような堂々たる出来映えではなく、当時の東映らしい1本という印象でした。高倉健のかっこよさは一作目には及びません。

東映としては、さらなる続編「山口組 激突篇」へと突入する気満々で、ラストは次回作への期待を大いに盛り上げるナレーションで締めくくられています。
しかし、結局のところ警察の締め付けや批判的な世論によって、その企画は幻となってしまったのでした。
まあしかし、「日本の首領」が内容的にはその役割を担っていると言えなくもありません。

三代目襲名 [DVD]
東映ビデオ



東映「山口組三代目」(1973年)鑑賞



山下耕作監督、高倉健主演の映画「山口組三代目」をようやく観ました。
2年ほど前、このご時世にまさかのDVD化となったので「いずれ」と思っていたのですが、当ブログで何度も書いているとおり、目下、DVDといえどもなかなか映画を観られない状況のため、そのままになってしまっていました。(そもそも、今日こそ、と思ってレンタルショップを覗くと貸出中、ということも多かったのですが)

1973年、「仁義なき戦い」公開直後の製作ということで、なおかつ山口組三代目の田岡一雄組長を実名で主役に据えていることもあり、実録路線の一本と数えられていますが、実際に観てみるとコッテコテの任侠映画。やくざの美化どころではない、様式化、そして神格化された世界です。
しかし、これがびっくりするくらい面白い! 高倉健、かっこいい!
高倉健の映画を全部見ているわけではありませんが、これは間違いなく代表作の一本と言えるレベルです。Wikipediaを見ると当時調査した観客の満足度は92%と、「アホちゃうか」と言いたくなるような信じられない数字が書かれていますが、これはホント、「昭和残侠伝」と並ぶ正統的な任侠映画ですね。殴り込みのシーンは花田秀次郎にしか見えません。
「仁義なき戦い」と並行してこんな映画を作ってしまう東映という会社にますます惚れました。

ところで、Wikipediaで田岡一雄の項を読むと、生い立ちについては「この映画のあらすじ紹介か?」と思うくらい、細部まで完全に合わせてあるので、ちょっと笑ってしまいました。
映画の原作は徳間文庫に今も入っている「田岡一雄自伝」ですが、この内容が公式の伝記ということになっているのでしょうね。



ちなみに、この映画の5年前に発表された溝口敦『血と抗争』は、暴力団への批判的な視点で描かれているため、この映画に感動したあとで読み返すといろいろがっかりします。






 
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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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