201908斜め屋敷の犯罪330

昨日、小学5年生の長男が取り組んでいる夏休みの工作を手伝っていたときのこと。
モーターで木の棒を回転させ、その動きを利用して模型を上下に動かそうとしていたのですが、そもそも設計の段階で恐るべき精密さを要求されるメカニズムで、これはムリだろうと思っていたところ、案の定、あちこちに引っかかって全くうまくいかない。
もうかれこれ半月くらい、この仕掛けを成功させようと頑張っていたわけですが、あきらめてガラリとやり方を変え、モーターで糸を巻き取り、模型を引っ張り上げるという形にすることにしました。

作業しながら、ふと「これは『本陣殺人事件』だなあ」とつぶやくと、ここ最近、すっかりミステリ好きになり、はやみねかおるばかり読んでいる息子がすごい勢いで「なにそれ、なにそれ」と食いついてきました。
そこで「本陣殺人事件」という、すごいトリックのミステリがあってね。そうそう金田一耕助のデビュー作だよ……という話をしていたわけですが、「その本持ってるの?読みたい読みたい!」と言い出したのには困りました。

筆者が「本陣殺人事件」を読んだのは小学6年生のときだったので、5年生の息子でも読めないことはないと思います。がしかし、この小説の動機は小学生には理解できないぜ?
かく言う、筆者も「初夜」だとか「処女」だとかいう概念は持ち合わせていないときにこの小説を読んだため、動機はいまいち理解できず。とはいえまあ、ミステリ的には動機は大きな問題ではないからまあいいか、ということで済ませてきましたが、しかし、よくわからんだろうということがわかっているのにオススメするのは、少々気が引けます(だったら、最初からタイトルを言わなければ良い話なんですが)。
とはいえ、せっかく息子が「面白いミステリに挑戦したい!」と意欲的になっているのを潰してしまうのももったいないので、おすすめのミステリを急いで考えましたよ。

まずは、「本陣殺人事件」から始まった話なので横溝正史で何か。
……うーん、全滅。
筆者が一番最初に読んだ横溝正史は、やはり小学6年生のときの「犬神家の一族」でしたが、子どもが生まれるメカニズムも知らず、いわんや「衆道の契り」なんてどんなことなのか皆目見当もつかない時期に読んだため、かなり面白く読んだ記憶はあるものの、事件の動機などを正確に理解できたのは、中学生になってからレンタルビデオで映画を借りてからでした。
他にも
「獄門島」……内容的に問題ないが、ミステリをあまり理解していない時期に読んでしまうともったいない、というのが筆者の持論。
「八つ墓村」……血の気が多い小説は苦手な様子なのでパス。
「悪魔が来りて笛を吹く」……「犬神家の一族」以上に小学生には難解。
……という感じで、ひとまず横溝正史をおすすめするのはやめました。

では、島田荘司ならどうか。
筆者が読んだのは中学2年生のときだったため、小学生よりは遥かに読解力があり、いま読み返してみても、初読時にほぼ完璧に楽しめていました。しかし、小学5年生にはどうか。
「占星術殺人事件」……冒頭の手記でつまづきそう。
「斜め屋敷の犯罪」……えーっと、これは……特に問題なし! これだ!

というわけで、息子には「本陣殺人事件」から全力で話をそらし、「斜め屋敷の犯罪」が驚天動地の大トリックを駆使したすごい小説であることを熱く語ると、まんまと「読みたい読みたい」と言い始めたため、工作はさっさと終わらせ、中学生の頃にあまりに読み返しすぎて小口が真っ黒になった「斜め屋敷の犯罪」(光文社文庫版)を貸し与えたのでした。
無事に最後まで読み通し、トリックはもちろん、ゴーレムを前にした御手洗の悪ふざけや、図書室での戦争シーンにも喜んでいたので、この作品の魅力はしっかりと読み取ってくれたようです。

さて、そうなると、今後は青い鳥文庫だけでなく、大人向けのミステリにも興味を示しそうですが、何を薦めたらいいんでしょうね。
自分の経験から言って、中学生になった何を読んでも理解できると思いますが、小学生となるとやはり作中で性愛が描かれていると(なおかつそれが事件の重要なポイントだったりすると)、今の時期に読んでしまうと理解できなくてもったいないな、と思ってしまいます。
まあ、そういう小説から男女の秘め事を学んでも別に構わないのですが、ストーリーがうまく理解できなくて作品の魅力が減じられるのは問題だなあ、と。

というわけでしばらくは、「小学生に本格ミステリを読ませる順番」について悩む日々を送ることになりそうです。

関連記事:
子どもに初めて読ませる「シャーロック・ホームズ」おすすめ
 島田荘司を読んだことがない方へ、読む順番のおすすめを指南


関連コンテンツ