201812犬神家の一族295

今年のクリスマスイヴには、市川崑監督のリメイク版以来12年ぶりの映像化となるドラマ「犬神家の一族」が放映されます。
筆者の興味は、「犬神家の一族」が映画化されるたびに期待しているアレ●●が、今回こそいよいよ登場するのではないか、というその一点に尽きます。

というのは、「スキー」のことです。
原作を読んでいても覚えていない方がほとんどだと思いますが、「犬神家の一族」原作には、終盤の山狩りで金田一耕助がスキーの腕前を披露するシーンがあるのです。
スキーが大好きな筆者としては、ぜひともここは映像化してほしい。
ところが、これまで映像化された「犬神家」には、スキーが登場したことは全くありません。

そもそも、季節の問題があります。
原作は、10月18日からスタートします。金田一耕助が那須を訪れ、若林さんが殺される。ここから物語は始まり、なんやかんやあって、両脚が湖面からニョッキリ生える有名なシーンは12月13日。つまり、約2ヶ月に渡って事件は続いていたというわけです。
しかし、映画やドラマではもっと急展開します。市川崑監督版も始まりは原作通り秋ですが、冬になる前に事件は終わってしまいます。

原作では、例の「脚」も、分厚く凍った湖面から生えているわけですが、映像化されたものはいずれもさざなみが立つ中に脚が浮かんでいます。しかも場合によっては汀から結構な距離があったりして「どうやって突き立てたんだ?」と、犯人の話を聞いた後でもその疑問が消えなかったりします。
そんなわけで、そもそもスキーシーズンまでたどり着いていない映画・ドラマばかりなのですが、今回はちょっと期待してしまいますね。なんと言っても放映はクリスマス! 物語の時期が冬になっている可能性も高いでしょう。

さて肝心のスキーですが、原作では
両肩にステッキをかついで、タ、タ、タと登っていった。
金田一耕助は兎のようにピョンピョンと、急な坂を登っていったが、やがて沼の平のスロープの頂上にたどりついた(後略)
という形で、ひたすら登っています。
スキーなのに登り続けるなんて……と思われるかも知れませんが、これは山スキー。
この時代にはまだ現代のように整備されたスキーゲレンデというものはほとんどありませんでした。
日本で最初にリストがかけられたのは草津に昭和23年ということなので、金田一耕助が出身地の東北でやっていたスキーというのは、冬山登山のことなのです。
もともと日本にスキーが伝えられたのは、雪中行軍の手段として軍隊で教えられたものでした。皇室がスキーをたしなまれるのもその名残か?と思っていますが、どうなんでしょう。
それはともかく、雪山での移動手段して取り入れられたスキーが、やがてレジャーになっていったというわけです。
「犬神家の一族」で描かれるスキーも、冬山でも犯人追跡のための手段、ということになります。

スキー好きの筆者としては、この当時の山スキーを正確に映像で再現してほしい。ミステリファンだけでなく、全国のスキーヤーもテレビに釘付けになること確実と思われます。
とはいえ、映画にスキーが出てくること自体、かなり珍しいことです。日本初の本格スキー映画と言われる「私をスキーに連れてって」は、今のところ日本唯一の本格スキー映画とも言われています。スキーの映画って、撮るのが大変らしいんですよね。
そんなわけで、ミステリとスキーの2度美味しい映像化をずっと待ち望んでいますが、どうなることかさて。



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