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第一回配本にあわせて大騒ぎしていた国書刊行会「笠原和夫傑作選」ですが、第2回配本である「第一巻 博奕打ち 総長賭博――初期~任侠映画篇」が発売されました。(関連記事:国書刊行会「笠原和夫傑作選」刊行開始!



収録作品の紹介は、以前の記事で書いたので省略しますが、本編以外の収録内容を見ていきます。

まずは月報のような形でついている附録冊子。
まずは笠原和夫のエッセイ4編。
はばかりながら 笠原和夫
白牡丹想記 笠原和夫
総長賭博、お前、ありゃ芸術やで 笠原和夫
黒澤映画は私の青春に差し込んだ陽射し 笠原和夫
笠原和夫の「劇」と「女」 高橋洋
「はばかりながら」は、「キネマ旬報」1971年8月30日増刊〈任侠映画傑作選〉掲載のエッセイ。任侠映画ブーム末期に書かれたもの。読んだことあるなあ、と思ったら掲載号を持っていました。

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この号には、笠原和夫のシナリオが2編、「博奕打ち いのち札」と共作の「日本侠客伝 関東篇」とが収録されています。任侠映画の特集号で、選者35人の投票による任侠映画ベスト30も発表されていますが、1位は「明治侠客伝 三代目襲名」(加藤泰監督・村尾昭、鈴木則文脚本)でした。

「白牡丹想記」は、藤純子引退記念作「関東緋桜一家」公開にあわせ、雑誌「シナリオ」に掲載されたもの。

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「総長賭博、お前、ありゃ芸術やで」は、雑誌「シナリオ」1974年6月号に掲載されたエッセイ。ちなみに「シナリオ」のこの号には笠原和夫のシナリオは掲載されていません。

「黒澤映画は私の青春に差し込んだ陽射し」は、「キネマ旬報」1975年10月上旬号の「七人の侍」特集に寄せられた一文。実作者の視点から「七人の侍」へのかなり突っ込んだ批評になっており、黒澤明ファンとしても、これはかなり読み応えがありました。

最後は、なんと高橋洋による笠原和夫論!
これは高橋洋ファンでもある筆者には嬉しいものでした。
高橋洋については、こちらの記事参照:「地獄は実在する 高橋洋恐怖劇傑作選」2月9日発売予定!
相変わらず話が難しくて、電車の中でサラッと読んだ程度ではいまいち意味がよくわかりませんが、あとでもう一度じっくり読み直そうと思います。

さて、本編ですが、この巻でいちばん楽しみにしていたのは、ボーナストラックとして収録されている「映画三国志」です。
これは平成2年に日本テレビ「金曜ロードショー」の枠で放映されたドラマなのですが、「昭和の劇」でも全く触れられていない(巻末の作品リストにも載っていない)ため、筆者は存在すら知りませんでした。
大下英治の「小説東映 映画三国志」を原作したドラマということで、主人公はのちに京都撮影所長から東映社長まで務めた岡田茂ですが、ドラマでは「倉田勝」として、中村雅俊が演じていたようです。
東映の前身である東横映画への入社から、「きけわだつみのこえ」が大ヒットし、東映が設立されるまでの岡田茂の青春を描いています。
期待したような「義理欠く恥かく人情欠く三角マーク」のえげつない話ではありませんが、登場人部たちは非常に生き生きとしていて、魅力的です。片岡千恵蔵登場シーンは、「三本指の男」をロケ中で、ドラマではどんな風だったのかぜひ見てみたいものです。
前巻にも増して熱の入った伊藤彰彦氏による解説によれば、笠原和夫はこのドラマのために、原作以上に緻密な取材を敢行したとのことで、さすがです。

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