201810衣装戸棚の女264

毎年恒例の創元推理文庫復刊フェア。
今年のラインナップには「衣装戸棚の女」が入っていたので買ってきました。
この本、それほど激レアというわけではないのですが、筆者はこれまでずっと買うタイミングを逃していました。以前にこちらの記事に書いたとおり、 小口研磨本を買えないという持病のため、書店で平積みされている期間に買い損ねると、あとで棚に並んでいても手を出せなくなってしまうのです。
数年ぶりの重版となる今回は、Twitterという文明の利器のおかげフェア開始前から情報を入手でき、ようやく美本で購入できました。

というわけで、今回はじめて読みました。
ピーター・アントニイというのは兄弟合作のペンネームなのですが、その正体はピーター・シェーファーとアンソニー・シェーファー。ピーターは「アマデウス」の作者、アンソニーは「スルース」の作者といういずれも偉大な代表作を持つ天才劇作家です。
解説を読むとあまりエッセイなどを書いていないようで、ミステリの好みなどはよくわからないのですが、戯曲「スルース」や映画「ナイル殺人事件」「ウィッカーマン」の脚本などを執筆したアンソニー・シェーファーがミステリマニアであることは間違いありません。(「スルース」については、以前にこちらの記事で紹介しています)
また、モーツァルトを描いた「アマデウス」も、全体の構成は実にミステリ的なんですよね。

会話によって物語がどんどんと展開していくのは、さすが劇作家コンビです。
密室には死体が一つと、クローゼットに紐で縛られて放り込まれていた女が一人。容疑者が窓から出入りしているところが目撃されたりなど、いろいろな要素が複雑に絡み、あらゆる面から事件が検証されていくという本格ミステリです。
そして最後に明かされるネタ! これは「スルース」の作者らしい人を食ったものですね。ドタバタしたユーモラスな展開のおかげでとても愉快な気分で読み終えました。しかし考えてみると、こういうことをユーモアで包まずにガチでやっているのが島田荘司だよな、とも思いました。
ちなみに、筆者が「スルース」を知ったのは、島田荘司「斜め屋敷の犯罪」の中で、御手洗潔がこの映画についてひとくさり語るシーンがあったためです。

ともかく、映画「スルース」が好きな方にはぜひおすすめの一冊です。この機会をお見逃しなく。

衣裳戸棚の女 (創元推理文庫)
ピーター・アントニイ
東京創元社
1996-12-21





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