平成初期にあちこちの出版社から続々刊行された四六判ハードカバー書き下ろしミステリのシリーズを紹介していますが、今回はあまり目立たないうち、あっという間に終わってしまった日本経済新聞社「エコノミステリー」をご紹介します。

このシリーズが刊行された平成3年頃は、講談社「推理書き下ろし」、東京創元社「鮎川哲也と十三の謎」、新潮社「新潮ミステリー倶楽部」などがベストセラーや話題作をたくさん刊行しており、「四六判ハードカバー書き下ろしミステリ」という形態そのものがブームになっている印象がありました。
そこへ突然登場したのがこのシリーズ。出版元は日本経済新聞社。
日経新聞の出している文芸書って、「下天は夢か」くらいしか印象になかったのですが、書き下ろしミステリを出すとは驚天動地、というか、かなりの違和感がありました。
しかもシリーズ名は「エコノミステリー」。ビジネスや経済をテーマにした作品を取り揃えています。
とはいえ「日経新聞の出すミステリなんか面白いんかいな」と、当時高校生だった筆者は非常に胡散臭いものを感じて、折原一すら読まずにスルーでした。

なかなかの人気作家を揃えており、何度か文庫化された作品もあります。
ただしその中で、谷克二という方だけは知りませんでした。
また、坂本光一は昭和63年に「白色の残像」で乱歩賞を受賞しており、東大野球部出身という触れ込みでした。あまり作品を発表することなく消えてしまっていたのですが、実は昨年、時代小説作家として本名で再デビューしていたと、この記事を書くために調べていて初めて知りました。しかも、日本経済新聞出版社から。となると、最もこのシリーズの恩恵に与っていたのは坂本光一だった、ということになるのかもしれません。

刊行リスト
井沢元彦 「ハンの法廷」(1991.2)
折原一 「丹波家殺人事件」(1991.3)
坂本光一 「ヘッドハンター」(1991.3)
谷克二 「フィナンシャル・ゲーム」(1991.5)
辻真先 「ユートピア計画殺人事件」(1991.9)
佐々木譲 「ハロウィンに消えた」(1991.9)
黒川博行 「大博打」(1991.12)

すみません、一冊も読んでいません。


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