今はなき立風書房。学習研究社(学研)の関連会社としてスタートし、最終的にはまた学研へ吸収される形で消滅しました。みつはしちかこの「ちいさなこいのものがたり」が一番有名な刊行物だったと思いますが、ミステリ関係のアンソロジーもちょこちょこ出していました。
記憶に残るとこるところでは「現代怪奇小説集」「鮎川哲也長編推理小説全集」などがありましたが、その中でも「新青年傑作選」は何度か装丁を変えて刊行が続けられたシリーズでした。
筆者が買ったのは1991年発行のバージョンで、これが最終版でした。自分が持っているから、というわけでもないのですが、装丁が一番かっこいい版だったと思います。
初版は1969年のようですが、収録作品は特に変わっていません。
「新青年」は初期の日本探偵小説界を牽引した存在として知られていますが、しかしミステリ専門誌というわけではありません。筆者は特に第5巻に集められたコラムなどを非常に面白く読みました。大正末期から昭和初期にかけてのものですが、今でも通用するようなユーモアに満ちたものが多々あります。このような雰囲気の中で、日本の探偵小説は幕開けしたのだな、ということがよくわかります。
ちなみに、下記のデータは筆者がむかし作っていた蔵書目録から流用していますが、本編だけでなく月報の記事まで入れていたりします。1~3巻の「解題」以下は月報の内容です。ただし4巻・5巻はなぜか月報を省略していて、一貫性がないのですが、改めて入力し直すということをしていません。ご了承ください。

『新青年傑作選 1 推理小説編』

二銭銅貨(江戸川乱歩)
琥珀のパイプ(甲賀三郎)
予審調書(平林初之輔)
精神分析(水上呂理)
黄昏の告白(浜尾四郎)
赤いペンキを買った女(葛山二郎)
聖アレキセイ寺院の惨劇(小栗虫太郎)
情鬼(大下宇陀児)
青色鞏膜(木々高太郎)
三人の双生児(海野十三)
三狂人(大阪圭吉)
死線の花(守友恒)
ハムレット(久生十蘭)
探偵小説(横溝正史)
Yの悲劇(角田喜久雄)
寝ぼけ署長(山本周五郎)
月世界の女(高木彬光)
解題(中島河太郎)
「新青年傑作選」刊行に際して(中島河太郎)
新青年センス(都筑道夫)
「新青年」思い出(高木彬光)
座談会「新青年」あれこれ1(横溝正史/水谷準/中島河太郎)

『新青年傑作選 2 怪奇・幻想小説編』

上海された男(谷譲次)
お・それ・みお(水谷準)
瓶詰奇談(稲垣足穂)
可哀想な姉(渡辺温)
ジャマイカ氏の実験(城昌幸)
押絵の奇蹟(夢野久作)
闘争(小酒井不木)
押絵と旅する男(江戸川乱歩)
偽眼のマドンナ(渡辺啓助)
せんとらる地球市建設記録(星田三平)
蜘蛛(米田三星)
鮫人の掟(橋本五郎)
俘囚(海野十三)
鉄仮面の舌(小栗虫太郎)
かいやぐら物語(横溝正史)
深夜の音楽葬(妹尾アキ夫)
凧(大下宇陀児)
黒い手帳(久生十蘭)
親友トクロポント氏(三橋一夫)
解題(中島河太郎)
「新青年」発表作品への回顧(稲垣足穂)
「新青年」愛読の記(吉行淳之介)
四十六年前に電車の中で(植草甚一)
座談会「新青年」あれこれ2(横溝正史/水谷準/中島河太郎)

『新青年傑作選 3 恐怖・ユーモア小説編』

浮かれている「隼」(久山秀子)
監獄部屋(羽志主水)
オベタイ・ブルブル事件(徳川夢声)
柘榴病(瀬下耽)
陰獣(江戸川乱歩)
死後の恋(夢野久作)
胡桃園の蒼白き番人(水谷準)
焦げた聖書(甲賀三郎)
影に聴く瞳(葛山二郎)
人を喰った機関車(岩藤雪夫)
義眼(大下宇陀児)
呑気族(獅子文六)
想像(城昌幸)
海蛇(西尾正)
文学少女(木々高太郎)
決闘記(渡辺啓助)
逗子物語(橘外男)
鬼啾(角田喜久雄)
孔雀屏風(横溝正史)
亡霊の言葉(火野葦平)
解題(中島河太郎)
十年前の「新青年」(森下雨村)
「新青年」と私(尾崎秀樹)
「新青年」回想(松野一夫)
座談会「新青年」あれこれ3(横溝正史/水谷準/中島河太郎)

『新青年傑作選 4 翻訳編』

マイナスの夜光珠(ビーストン/西田政治訳)
葬式フランク(ランドン/森脇萬訳)
サムの新弟子(マッカレー/訳者不明)
或る精神異常者・生さぬ児(ルヴェル/田中早苗訳)
撓ゆまぬ母(オーモニア/妹尾韶夫訳)
砂嚢(オルチー/延原謙訳)
怪我をする会(ウッドハウス/梶原信一郎訳)
ルウフォック・ホルメスの冒険(カミ/平林初之輔訳)
砂男(ホフマン/向原明訳)
蜘蛛(エーウェルス/浅野玄府訳)
最後の一葉(オー・ヘンリー/浅野玄府訳)
市長室の殺人(フレッチャー/訳者不明)
恐ろしき夕刊(フロスト/訳者不明)
実験魔術師(アルデン/横溝正史訳)
瘋癲病院異変(ポー/田内長太郎訳)
猿の足(ジャコブス/鷲尾浩訳)
死人の村(キップリング/安藤左門訳)
意外つづき(ブラックウッド/小野浩訳)
稀代の美術品(モリソン/妹尾韶夫訳)
オスカア・ブロズキイ事件(フリーマン/吉岡竜訳)
空室(マーキー/伴大矩訳)
幻の扉(ポースト/西田政治訳)
絡み猫(ベイリイ/延原謙訳)
蜜蜂殺人事件(ウィーン/吉野録也訳)
完全脱獄(フットレル/植村清訳)

『新青年傑作選 5 読物・資料編』

サム・カゴシマ/テキサス無宿(谷譲次)
剣侠尼僧伝(佐藤春夫)
空中楼閣の話(海野十三)
モンテ・クリスト幽閉の島(木村毅)
コンスタンス・ケント事件(森下雨村)
西洋色豪伝(獅子文六)
くらがり二十年(徳川夢声)
ひまつぶし学(朝島雨之助)
近世怪人伝(夢野久作)
魔術学(天城勝彦)
近世香具師列伝(秘田余四郎)
36年型花咲爺(徳川夢声)
ぺーぱーないふ
身替り花婿(阿部鞠哉)
ひとりで夜読むな
いらはい、いらはい放談会
諸家のカリカチュア(松野一夫)
昭和七年・珍事総決算
フロア
アスファルト
縮刷図書館(村山有一)
阿呆宮(土岐雄三)
阿呆宮一千一夜譚(乾信一郎)
シックシネシック(南部圭之助)
すりい・もんきい
ヴォガンヴォグ(長谷川修二)
『新青年』三十年史(中島河太郎)
『新青年』所載作品総目録(中島河太郎)
「新青年」と私の青春(荒正人)
思い出あれこれ(城昌幸)
「新青年」の香気(中田耕治)
『新青年傑作選』余話(中島河太郎)


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