201804乱歩上202

本書は乱歩生誕100周年(1994年・平成6年)を記念して分厚い上下巻で刊行されました。
乱歩論だけでなく、乱歩をテーマにした小説や、乱歩の代表的な小説・エッセイなども収録し、この2冊で乱歩の業績を俯瞰できるようにしようという試みでした。平成元年に完結した江戸川乱歩推理文庫の記憶もまだ新しい頃であり(すでに品切れとなっていましたが)、同じ講談社の刊行ということで、装画は天野喜孝が担当しています。
前回の記事で紹介した『江戸川乱歩――評論と研究』が出たのが1980年ですが、この14年間のあいだにミステリ界では大きな変化が起こっています。
そう、笠井潔言うところの「第三の波」です。
「幻影城」が終刊し、竹本健治、笠井潔、島田荘司らが活躍を始め、やがて綾辻行人がデビューする。
わずか10年ほどのあいだにミステリを取り巻く状況は一変しましたが、このあたりの作家たちは皆、「乱歩体験」の持ち主でした。一世代上の作家たちが乱歩と直接交流していたのに対し、この世代は幼少期に「少年探偵団」からミステリへ入った乱歩ファンでした。
本書では、乱歩の「同業者たち」が書いたものとは違った、読者目線の新たな乱歩論も大きな存在となっており、それが特色となっているかと思います。
目次は以下の通りです。

『乱歩 上』
乱歩生誕百周年 中島河太郎
江戸川乱歩
恋と神様 江戸川乱歩
乱歩打明け話 江戸川乱歩
活字と僕と 江戸川乱歩
江戸川乱歩~森下雨村往復書簡 江戸川乱歩
二銭銅貨 江戸川乱歩
『二銭銅貨』を読む 小酒井不木
二廢人 江戸川乱歩
D坂の殺人事件 江戸川乱歩
心理試験 江戸川乱歩
赤い部屋 江戸川乱歩
探偵小説に就いて 萩原朔太郎
屋根裏の散歩者 江戸川乱歩
人間椅子 江戸川乱歩
江戸川乱歩とギュゲスの指輪 笠井潔
踊る一寸法師 江戸川乱歩
人でなしの恋 江戸川乱歩
「人でなしの世界」 紀田順一郎
鏡地獄 江戸川乱歩
レンズ嗜好症 江戸川乱歩
レンズと活字 種村季弘
パノラマ島奇談 江戸川乱歩
涙ぐましい双面 高橋鐵
「パノラマ島奇譚」と「陰獣」が出来る話 横溝正史
陰獣 江戸川乱歩
もう一つの実験室 松山巖
乱歩の幻影 島田荘司
江戸川乱歩略伝 山村正夫

『乱歩 下』
父と終戦 平井隆太郎
芋虫 江戸川乱歩
孤島の小林少年 橋本治
華麗なユートピア 大内茂男
玩具愛好とユートピア 澁澤龍彦
押絵と旅する男 江戸川乱歩
江戸川乱歩
江戸川乱歩氏に対する私の感想 夢野久作
乱歩おじさんの躁と鬱 松村喜雄
目羅博士 江戸川乱歩
月の下の鏡のような犯罪 竹本健治
石榴石の秘密・紅玉色の傲慢・孔雀石のアンドロギュヌス 美輪明宏
石榴 江戸川乱歩
「石榴」回顧 江戸川乱歩
「黒死館殺人事件」序 江戸川乱歩
乱歩先生の「少年もの」 須藤憲三
怪人二十面相(抄) 江戸川乱歩
孤独すぎる怪人 中井英夫
群衆の中のロビンソン・クルーソー 江戸川乱歩
幻影の城主 江戸川乱歩
「Yの悲劇」 江戸川乱歩
ホイットマンの話 江戸川乱歩
もくづ塚 江戸川乱歩
書斎の旅 江戸川乱歩
同性愛文学史 江戸川乱歩
一人の芭蕉の問題 江戸川乱歩
「本陣殺人事件」 江戸川乱歩
ウールリッチ「黒衣の花嫁」解説 江戸川乱歩
クリスティーに脱帽 江戸川乱歩
類別トリック集成 江戸川乱歩
月と手袋 江戸川乱歩
推理小説独言(抄) 松本清張
防空壕 江戸川乱歩
編集を終わって 江戸川乱歩
座談会 狐狗狸の夕べ 江戸川乱歩
初心の人乱歩 吉行淳之介
ラムール 江戸川乱歩
江戸川乱歩
江戸川乱歩と私 植草甚一
伊賀の散歩者 山田風太郎
閉じ込められた夢 権田萬治
江戸川乱歩著作総目録 新保博久
江戸川乱歩年譜 中島河太郎
『乱歩』あとがき 新保博久


乱歩(上)
講談社
1994-09-21



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