201802日本現代怪異事典182

発売から少し経ってしまいましたが、ようやく朝里樹「日本現代怪異事典」(笠間書院)を入手しました。
このブログでわざわざ紹介するまでもない話題の本で、出てすぐに売り切れていたため初版を買い損ね、重版されるのを待って購入しました。
「学校の怪談」に代表されるような、戦後日本で語られた都市伝説のうち怪異にまつわるものを網羅した本です。
筆者が知る限りでは、この手の内容を一冊にまとめた本としては、これまでポプラ社から出ていた「学校の怪談大事典」が最強だと思っていましたが、本書は質量ともに圧倒しています。
また、このような本が笠間書院から出たというのも驚きですね。笠間書院は、茶色い箱に入った国文学関係の硬い本ばかり出している印象を持っていました。価格もこの質と量、そして出版元を考えると本体価格2200円は激安です。笠間書院がふだん出している本は安くて3000円超え、たいていは1万円前後ですもんね。

と、値段のことはどうでも良いのですが、この本は一家に一冊あると本当に便利だと思います。筆者の購入目的は「家庭の医学」のように、わが家に怪談を常備することなのです。

筆者の長男は現在小学3年生なのですが、「怖い話を聞かせて」とせがまれることがよくあります。
よっしゃ、怪談好きのパパに任せておけ、と言えれば良いのですが、実をいうと筆者の脳は「物語を記憶する」という機能が欠損しており、本を読んでいるあいだは「むっちゃ怖い!」「面白い!」と興奮していても、読み終わった瞬間にディテールをほとんど忘れてしまうのです。
短い怪談に於いても然り。
「あの話、怖かったよな。確かあの本に載ってたな」
ということはよく覚えているのですが、さて自身で改めて語ろうとすると細かい部分を思い出せず、ちっとも怖くない話になってしまうのです。

以前、子どもから怖い話をせがまれた時、弱り果てた筆者はこんな話をしました。

『悪魔の人形』
あるところに老人と少女が二人で暮らしていた。ある時、老人は外出先でクマのぬいぐるみを買い、少女への土産として持ち帰った。クマを見た少女は叫んだ。
「あ!クマの人形(あくまのにんぎょう)」

『猫のたましい』
ある老人が、タマという名の猫と、やはりタマという名の犬を飼っていた。
ある晩、夜中に猫のタマがしきりに鳴き続けた。やかましくて眠れない老人はこう言った。
「猫のタマ、しっー!(ねこのたましい)」

『悪の十字架』
ある店の主人が、朝から店を開ける支度をしていた。店の前を通りかかった男が、時計を見ながら言った。
「おじさん、開くの10時か?(あくのじゅうじか)」


えー、以上は出典は忘れましたが、小学生の頃に読んだ本に載っていたダジャレです。息子はタイトルを聞いた段階では「うんうん」と真剣な顔になるのですが、オチを聞くたびに「怖くない!」とがっかり。
しまいには、横で聞いていた妻までもが「あんたはしょうもない本ばっかり棚に並べてるくせに、怖い話もできないの!?」と怒りだしました。
こうなってくると、本当に怖い話をしなければいけませんが、なにぶん記憶だけで語れるレパートリーを持ち合わせていません。ここは、小学生なら確実にビビるであろう最強クラスの怪談を持ち出して、「パパの話は本当に怖いから聞きたくない」と思わせるしか、逃げる方法はない。

そこで語ったのが、この話です。

ある若者グループが海へ出かけ、崖から飛び込んで遊んでいた。ところが、そのうちの一人が溺れて死んでしまった。のちに、その時撮った写真を現像すると、海面から無数の手が伸びているのが写っていた。

有名な怪談で、本書「日本現代怪異事典」でも当然、紹介されていますが、筆者は小学生の頃だったかに初めて聞いて、本当に怖ろしい気分になった記憶があります。
さあ、これでどうだ。
自信満々で聞かせた筆者に対し、長男は
「ああ、それはね、海坊主って言うんだよ。怖くない怖くない」
とニコニコしながら流されてしまいました。

さて、そんな形で撃沈した筆者ですが、もしその時この本が手元にあれば「じゃ、こっちの話は? こんな話もあるぞ」と次々と弾を繰り出すことができたはずです。
いやあ、もっと早くに巡り会いたかった本だな。

まあ、そのような使い方だけでなく、1975年生まれの筆者にとっても、小学生の頃に学校で話題になっていた怪談が大量に紹介されていて、とても懐かしい気分になります。
6年生くらいの時に「紫鏡という言葉を20歳になるまで覚えていると死ぬ」という話を聞いたときは、かなり深刻に悩んだもんですね。20歳のころには無事に忘れてましたが、40過ぎてまた覚えちゃったよ。
こんな大部な本の著者がまだ20代というのも驚きです。巻末の参考文献リストは、そのまま戦後日本怪談史というもいうべきもので、本当に勉強熱心ですばらしいと思います。

日本現代怪異事典
朝里 樹
笠間書院
2018-01-17




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