Amazonで商品を検索していると、マーケットプレイスへの注文しか受けつけていないものを見かけます。
これは基本的には出版社在庫品切れ(≠絶版)ということです(「品切れ」と「絶版」との違いは以前のこちらの記事を参照)。Amazonが自社で商品を手配できないため、注文を受けていないというわけです。

ところで、ここ最近のAmazonは自社での注文を受けていない書籍が非常に多いのです。
しかも、そのすべてが出版社在庫切れというわけではなく、出版社に在庫があり、近所の本屋へ注文すれば手に入る、場合によっては書店店頭に並んでいるような本でも、Amazonではマーケットプレイスでしか販売していないケースが多々あります。

【新文化】 - アマゾンジャパン、日販非在庫書籍取寄せ発注を6月30日で終了
(2017/5/1)

実は、こちらの記事にある通り、Amazonは取引先である日販の倉庫に在庫がないと、それより先の出版社へ商品手配するということを中止しているのです。

出版業界の商品の流れは、

 出版社 → 取次(日販・トーハン・大阪屋などの問屋)→ 書店

という流れになっています。
取次はそれぞれ大きな倉庫を持っているため、よく売れている商品は書店から取次へ注文を出せばすぐに入荷します。しかし、めったに売れない商品や、たまたま取次が在庫を切らしている商品については、取次より先の出版社へ注文をして、取次経由で出荷してもらうことになります(これをバックオーダーといいます)。

この流れを念頭にAmazonの在庫ステイタスを見ると、
「在庫あり」となっているものは、Amazonが自社倉庫に在庫を持っているということです。一般の書店でいえば店頭に並んでいるわけで、顧客はすぐさま買うことができます。
「通常2-3日以内に発送」というステイタスの場合、ほとんどは「取次に在庫がある」ということです。
現在の取次各社はECサイトのように厳密に在庫数を管理をしており、その情報を取引先へ開示したりしていますので、Amazonはデータを参照し、取次在庫がある場合は数日以内に調達可能と表示しているわけです。

さて、問題はステイタスがこれ以外の商品です。
以前は、取次に在庫がない場合は、Amazonも出版社へバックオーダーをしていました。
この場合、在庫情報を開示しているかどうか、あるいは出荷にどの程度の日数を要するかなどは出版社ごとにマチマチであり、Amazonの方もゆとりを持って「通常○-○週間以内に発送」というような表示をしていました。

ところが、6月末をもってバックオーダーを中止したため、現在は取引先である日販の倉庫に在庫がないと、Amazonは注文を受けつけません。そして、出版社に対しては、日販非在庫商品もAmazonで販売してほしければ、「e託」という直接取引に参加しろと迫っているのです。
「e託」の条件は出版社側にとってはメリットばかりというわけでもないため、業界内ではどのように対応すべきか盛んに議論がされていますが、今回の記事では、このことによってユーザー視点でどのようなことが起こっているのかを見ていきます。

バックオーダー廃止に伴い、Amazonが注文を受けない商品が激増しました。
マーケットプレイスで出品業者から買うことができる商品も多いのですが、マーケットプレイスは良心的な業者ばかりではありません。
Amazonが自社で注文を受けているものは、当然のことながら全て定価販売なのですが、マーケットプレイスのなかには、流通量の少ない商品を買い占めて、高額で転売する者もいます。
いわゆる転売屋です。

Amazonのバックオーダー廃止に伴い、この転売屋たちには好機が訪れているのです。
というのは、そもそも転売屋は、本当に希少な本のみで商売をしているわけではありません。
これまでも出版社で在庫が切れ、Amazonが注文受付を停止すると、大型書店などの在庫を軒並み探索し、Amazonで転売するということをしていました。
筆者などには信じがたいことなのですが、「Amazonが注文を受けていない=新品ではもう買えない」と判断してしまう人が世の中にはとても多く、マーケットプレイスで高値がついていても「仕方ない」と諦めて買ってしまう人がいるのです。
転売屋はこのような、いわゆる「情報弱者」をカモにしています。
hontoや紀伊國屋書店など、他のECサイトを検索すればまだ在庫が残っており、新品を定価で買えるような本でも、Amazonが在庫切れになった途端、マーケットプレイスでは価格が高騰します。
これまでは、出版社在庫が切れたもののみが高額転売の対象でしたが、バックオーダー廃止後は、日販在庫が切れるだけでAmazonが受注を停止するため、転売できる商品の種類がグッと増え、近所の本屋で簡単に買える本でも、マーケットプレイスで高額転売できる状況になってしまいました。

高額転売の何が問題か?
むろんのこと、購入する側は定価で買えば安く済むものに、高いお金を払わなければいけません。
出版業界側から見れば、読者が本にかけられる予算には限りがあります。これが転売業者の懐に入ってしまえば、購入冊数が減ることとなり、市場が縮小してしまいます。

読者にも出版社にも一円の得もない、このような高額転売に加担するのは、売る方も買う方もやめてほしいものですが、その前にぜひ、上記のような状況を知っておいてほしいと思います。
Amazonがマーケットプレイスでしか注文を受けていないからといって、新品が手に入らないわけではないのです。
まずは、hontoや紀伊國屋書店など、他のECサイトも検索してみましょう。
そこにも在庫がなければ、出版社へ電話をかけて在庫の有無を尋ねてみることもできます。在庫があるということなら、近所の本屋へ注文すれば取り寄せてくれます。
要するに、これらは転売業者が普通に行っている「努力」です。
この努力を放棄すると、転売屋へ払わなくてもよい無駄金を渡すことになるのです。
転売屋の中には、商品の確保前にマーケットプレイスへ出品し、注文が入ってから近所の本屋へ買いに行くという図々しい者もいます。客にすればいちいち買い物のお駄賃を払っているわけで、馬鹿らしいと思いませんか?

インターネットで本の情報を検索した際の、Amazonの存在が大きくなりすぎました。
かくいう当ブログもAmazonのアソシエイト・プログラムに参加しているわけですが、やはりブログで紹介された商品をすぐに買いたい、という需要に対して、Amazonほど優秀に応えてくれるサイトはほかにありません。
このような信頼を築き上げた今になって、急にバックオーダー廃止などという混乱を巻き起こす施策をする理由がよくわかりませんが、読者としてはこの事情をよく理解し、悪用する業者から身を守る知識を持っておくことが必要だと思います。


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