今日未明、午前3時頃のこと。
この春から小学校へ上がり、自分のベッドで一人で寝るようになった次男の部屋から、「うわぁっー!」という、ものすごい悲鳴が聞こえてきました。
寝ぼけているんだろうと思いつつ覗きにいってみると、ベッドの横に呆然と座り込んでいます。
なんだベッドから落ちたのか、と思って、トイレへ連れていっておしっこだけさせると、もう一度寝かしつけました。

朝になってから、夜中に起きちゃったね、と声をかけると、はじめうちはあまり覚えていない様子だったのですが、急に思い出すと
「カーテンのところに知らない人の足があったから、ビックリしちゃった」
などと言い出すのです。そして淡々と
「でもね、ぼくがキャーってさけんだら、すぐに逃げちゃったから怖くなかったよ」
と続けます。

おいおい、それってむちゃくちゃ怖い話やんか。
朝の食卓は大騒ぎになりましたが、妻は、息子が怖がって、もう自分の部屋では寝ない、と宣言するのを恐れているのか「怖い夢を見ちゃったんだね」とか「オバケだったら足が無いはずだから、それはオバケじゃないよ」とか、一生懸命慰め、最終的には本人も「きっと、昨日寝る前に鬼太郎を見てたから、怖い夢を見ちゃったんだ」と納得していました。
しかし、いやいや、これはまぎれもなくオバケでしょう!

「足」と聞いて、私が思い出すのは、15年ほど前にあった一件です。
当時は東京で、新築のビルの中に開所したばかりの事業所に勤務していました。
ある日、女性スタッフが倉庫へ行って、戻ってくると、顔が真っ青になり、ぐったりとしているのです。
急に気分でも悪くなったのかと尋ねると「いや、大丈夫です、大丈夫です」と言いながら、やはり青ざめて冷や汗までかいています。周囲はみな心配して「少し横になったら……」などと声をかけていると、「実はイヤなものを見てしまって……」と言い出しました。

何を見たかというと、倉庫の棚の間から
「ゲートルを巻いた足」
がゴロンと突き出していたというのです。

怪談好きの私としては、それを聞いて「キタッー」と叫びたいくらい興奮したものですが、当の本人はずっと青ざめたままで、すぐ隣で大喜びするのは憚られる雰囲気でした。その後、この話はなんとなくタブーのような扱いになって、職場で口にする人はありませんでした。
そもそも、そのビルが立っているのは、かつて刑場があったという場所からほど近く、東京の怪奇スポット、という類の本を読むとその地域は必ず登場するようなところだったのです。
先輩の女性社員が退職する際、送別会の席で「休みの日に友人と一緒に建物の前を通りかかったので、ここが私の会社、と言ったら、友人は建物をジッと見つめて、あまり長いことここに勤めないほうがいいよ、と言われてしまった」などという話を披露していたこともあったりして、実はなかなか恐ろしい場所だったようです。

昔に聞いたそんな話を思い出したりして、朝からすっかり興奮してしまいましたが、私自身はこれまで怖い体験というのは全くないんですよね。
まあ、怖い目に遭いたいとは思っていないのでそれでいいのですが、次男は以前から、夜寝るとき、ふすまが開いたままだと「怖い怖い」と言ってなかなか寝ようとしませんでした。
なので、夏でも締め切った部屋で汗だくになって寝ていたものですが、単に幼いから怖がり、というだけでなく、もしかすると、いろいろ不思議なものが「視える」子どもだったりするのかもしれません。
とうとうの、俺の家族にそんな奴が現れたか、と怪談好きとしてはなかなか感慨深いものがあります。
引き続き彼の言動には注目していきたいと思っています。

現場写真
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↓ ぜんぜん視えない人間としては、「そうか、視える、というのはこういうことなのか」というのがビジュアルでよく理解できる、非常に興味深い本。

視えるんです。 (幽ブックス)
伊藤三巳華
KADOKAWA/メディアファクトリー
2010-05-18