備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

2019年05月

平成最後に買った本:松原タニシ「恐い間取り」二見書房

201905恐い間取り323

30年にわたった平成という時代は、筆者にとっては13歳から43歳という人生で最も本をたくさん読むであろう時期ときれいにかぶっていたわけですが、その時代が終わろうとしているとき最後に買った本は何か?
それは松原タニシ「恐い間取り」でした!
別に狙ったわけでなく、これを購入後数日間、特に何も本を買っていなかったら令和になっちゃったってだけなんですが。

もう一年近くも前、昨年の6月に出た本で、本屋の棚に並んでいるのはずっと気づいていたのですが、しかし「自分には関係ない本」と思い込んで、手に取ることすらせずに通り過ぎていました。
本ブログでは、刊行後、しばらく時間が経ってから買った本については、今更感の言い訳として、いったんdisりまくるのが恒例となっていますが、今回も買わなかった理由を先に。
筆者は怪談、それも実話怪談と言われるものは大好きなのですが、現実の殺人事件などを怪談ネタにしているのはどうも品がないような気がして好きになれません。
まあ、そういうものが好きな人がいるということは理解できるのですが、自分の趣味とは一線を画していました。したがって「事故物件怪談」という触れ込みだけで、興味の対象外となっていました。
また、著者が芸人という点。
これまた偏見に満ちた見解ですが、芸人が書いた怪談というのは、ラジオやテレビでふだん怪談にあまり馴染みが無い層から人気を得ているだけで、ネタとして怖くもないし、文章力もない、という思い込みがあり、「事故物件住みます芸人」という肩書で完全にアウト。
さらに言えば「怖い間取り」ではなく「恐い間取り」となっている時点で、怪談の素養はゼロ! 俺は読まなくていい本! と決めつけていたわけです。

しかし、たまたま見かけた紹介記事で、本書が「事故物件」というものにこだわっているわけでなく、単なる実話怪談として怖い内容だということを知り、それなら読まなければ!ということで買ってきたのでした。

結果的には……これは、めちゃくちゃ怖い!
著者の文章力もしっかりしており、またもや偏見で食わず嫌いしていたことを大後悔の内容でした。
大晦日になると訪れる謎の老人とか、写真までバッチリ載せちゃっているけど、なんなんだこれは。
なかには、あまり好きになれないタイプの「事故物件調査報告」的なエピソードもありますが、ほとんどの話は実話怪談として非常によくできています。
というか、怖すぎてサクサク読めないため、実は未だに最後まで読み切っていないのです。

というわけで、今更紹介するまでもないくらいよく売れているようですが、筆者同様、「幽」に載っているような上品な怪談は好きだけど、竹書房から出ているような怪談は勘弁だな、と考え、本書を同様のものだと思っている方、実はめちゃくちゃ怖い実話怪談集でした。
著者は7月にも同じく二見書房から新刊を出すようで、そちらも楽しみです。

事故物件怪談 恐い間取り
松原 タニシ
二見書房
2018-06-26


 
恐い旅(仮)
松原 タニシ
二見書房
2019-07-22

「学研の図鑑」ラインナップにキン肉マン「超人」が登場!

学研図鑑超人

今月末に、学研がものすごくバカな本を出しますね。
なんと「学研の図鑑」にキン肉マンの「超人」が登場!
Amazonの予約受付で内容見本を見られますが、「図鑑の学研が本気で分類・編集し、フルカラーで掲載した究極の図鑑登場! ! ! 」ということで、よくある子ども向けの「ポケモン大図鑑」のようなたぐいのものではなく、堂々たる本格的な図鑑です。



本屋でたまたまチラシを見かけて、あまりに良くできた表紙に感心し、しばらく眺めてしまいました。発売前ということもあって、チラシやネットなどで得られる情報以外には内容はわからないのですが、考えてみると非常に秀逸な企画です。

まずこの装丁。
学研の図鑑については、以前にこちらで紹介したことがあります。→「学研の図鑑」刊行一覧
ここで紹介した図鑑とは、ずいぶんと表紙のデザインが違います。
実はこの表紙、キン肉マンが大ブームとなった80年代に刊行されていた、旧装丁にあわせたものなのです。
1975年生まれの筆者にとって、キン肉マンはドンピシャで世代ですが、キン肉マンと同じくらい懐かしくてたまらなくなるのが、このデザインの学研図鑑、なのです。

出版業界の歴史において、当時の図鑑というものは一時代を築いたといってよい存在です。
第二次ベビーブームと呼ばれる世代は、1973年前後の生まれを指しますが、この世代が児童書適齢期を迎えた80年代前半は、児童書の黄金期でした。
書店において最も重要視された分野が児童書と学習参考書であったという、今となってはもはや想像できない時代だったのです。
キン肉マンのブームもちょうどこの時期と重なり、「キン肉マン」「学研の図鑑(旧装丁)」を組み合わせたこの企画は、団塊ジュニアたちの懐古趣味をダブルで刺激するもので、感嘆するよりありません。

価格が本体3300円というのが、図鑑にしてはちょっと高いかな、という気がしますが、これは団塊ジュニアもそろそろ経済力を増しているだろうという計算でしょうか。
しかし、団塊ジュニアは団塊の世代ほどは散財はしませんよ?
どうせなら当時の物価にあわせて1000円くらいにしてくれたら、40代のおっさんたちが号泣しながら本屋へ列をなす光景が見られたかもしれないのになあ、と思いました。



関連記事:
こども向け図鑑を揃えるなら、おすすめはどれ?4大出版社を比較!

講談社「江戸川乱歩推理文庫」のこと

201905江戸川乱歩316
帰省する機会があったため、実家にいまだ温存されている、私が高校生の頃まで使っていた机の引き出しを漁ってきました。
何が目的だったかというと、本に挟まれているチラシです。
子どもの頃は、本の帯や、ページのあいだに挟まれたチラシなどを邪魔なものと考え、とはいえ捨てるには忍びなく、本を買ってくると外して勉強机の引き出しへしまいこんでいたのでした。
大学へ入ったくらいから「本は購入時の完全な状態で保管するべし」と価値観が変わり、帯だけは取ってあったものを全部巻き直したのですが、チラシはどれがどの本のものなのか、対応がわからなくなってしまい、さらには内容が同じ種類のチラシは捨てていたため、収拾がつかなくて放置していました。

ところで、今回気になって探していたのは講談社が昭和62年から平成元年にかけて刊行した「江戸川乱歩推理文庫」のチラシです。
これは、小学校の6年生から中学2年にかけての時期ですが、よくぞ思い切って小遣いを投入する気になったものだと、当時の自分を褒めてやりたい気分でいっぱいのシリーズです(といっても一般向け小説である青帯は、並行して春陽堂文庫の乱歩シリーズを買っていたため、見送ったのですが)。
さて、以前にこちらの記事でも触れましたが、この「江戸川乱歩推理文庫」は、配本がスタートした当初は、児童向け小説の中に「名探偵ルコック」「鉄仮面」「黄金虫」という翻訳物のタイトルが並んでいました。
ところが、配本が第4回へ進んだ時点でラインナップが変更となり、翻訳は消え失せました。
小学生だった当時は事情など知るよしもなく、ただ「書簡 対談 座談」なんかよりは小説を出してほしいなあ、と軽くがっかりした記憶はあります。
今にして思えば、このあたりの翻訳は名義貸しで、乱歩自身の筆によるものではないとされているためと思われます。(むしろ、最初に発表されたラインナップに含まれていたことが謎)
とはいえ、乱歩名義の「鉄仮面」は筒井康隆もエッセイで回顧していたりなど、人気が高いもので、やはりこのときに「出す」という英断をしてほしかったなあ、という気もしています。

というわけで、今回あさってきたチラシは、そのあたりのラインナップ変更の経緯がわかるものです。
リアルタイムで購入されていた方以外はよく知らない話だろうと思いますので、ブログにあげておく価値もあるかな、と考えて、チラシの画像を貼っておきます。

まずは刊行当初チラシ。ちょうど写真のL判に該当するサイズに四つ折りされたものでした。
まず開くと表はこんなもの。価格は消費税導入前です。
201905江戸川乱歩316

裏側はこんな感じ。当時の人気作家が安部譲二と山崎洋子というあたりの昭和末期の雰囲気が出ています。
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さて、これを開くと、見開きで問題のラインナップが。
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その後、第4回配本時にこのようなチラシが挟まれました。
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裏側のラインナップ。「海外探偵作家作家と作品」が当初予定の2分冊から3分冊へ水増しされ、「未刊日記」「書簡 対談 座談」が追加されました。
201905江戸川乱歩321

そして、実際には「未刊日記」は更に未刊となり、最終巻は年譜となりました。これはずいぶんがっかりして実際は購入を見送りたかったところですが、ここまで買って最後の巻だけを買わないのはいかがなものか、という常識的な判断によって購入することとなりました。

関連記事:
江戸川乱歩「鉄仮面」とは?
江戸川乱歩入門 最終回 講談社「江戸川乱歩推理文庫」

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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
ブログ更新通知:https://twitter.com/squibbon19

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