備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

2017年12月

もじゃもじゃペーター Der Struwwelpeter

ぼうぼうあたま016

「もじゃもじゃペーター」という絵本をご紹介します。
これは原題を"Der Struwwelpeter"というドイツの絵本です。
子どもの教育のためのお話が並んでいるのですが、内容はなかなか強烈で、マッチで火遊びしていた少女は全身火だるまになり、何度注意されても指をしゃぶり続ける男の子は、部屋へ飛び込んできた「服屋さん」にハサミで指をちょん切られてしまいます。
というような教育に良いのか悪いのかイマイチわからない本ですが、本国ドイツでは非常に人気があり、amazon.deで検索すると、ポップアップ絵本やパロディやなど、たくさんの本が上がってきます。
筆者は以前、ポップアップ絵本を取り寄せてみましたが、服屋さんのハサミがチョキチョキ動いたりと、かなり悪趣味な出来栄えでした。

日本語版は3種類出ており、それぞれ訳文とイラストが異なります。



まず、日本で最初に翻訳されたものの復刻版。これは現在、銀の鈴社から『ぼうぼうあたま』というタイトルで出ています。訳者は「いとうようじ」となっていますが、実はこれは帝国海軍で大佐だった伊藤庸二という人です。この人は技術将校でレーダーの研究などをしていました。同盟国であったドイツに留学経験があり、そこで知ったStruwwelpeterを昭和11年に翻訳したのでした。
本書の特徴としては、まず翻訳が古い。戦前の訳なので当然ですが、これが実は奇妙な味わいをかもしており、個人的には非常に気に入っています。また、イラストは細密で美しいのですが、これは著者であるホフマンの死後に、別の画家によって描き直されたものです。本国ではこのイラストが最もスタンダードなものとなっています。



次に、ほるぷ出版から刊行された『もじゃもじゃペーター』。このタイトルは"Der Struwwelpeter"の訳題として、日本ではスタンダードなものとなっています。1985年発行のため、読みやすい訳文です。イラストは『ぼうぼうあたま』に比べるとずいぶん下手くそなのですが、実はこれこそ作者ホフマンが描いたオリジナルのイラストなのです。そういう意味では、貴重な一冊です。



最後に、生野幸吉・訳、飯野和好・絵の『もじゃもじゃペーター』。もとは1980年に集英社から発行されましたが、しばらく絶版となり、2007年にブッキング(復刊ドットコム)にて復刊されています。
これはイラストが飯野和好氏によるものであり、ホフマンのイラストを参考にはしていますが、もっとも「ふつうの絵本」という印象を受けます。「もじゃもじゃペーター」というタイトルでの翻訳は本書が最初ではないでしょうか。

実は、現在のところ「もじゃもじゃペーター」の2冊はいずれも絶版となり、新刊書店で買えるのは「ぼうぼうあたま」のみとなっています。さすがにドイツ本国ほどの人気は日本では維持できていないようです。
とはいえ、筆者は「ぼうぼうあたま」バージョンを訳文・イラストともに一番気に入っていますので、おすすめするのに問題はありません。

『水滸伝』備忘録 あらすじと登場人物(五十一回~五十五回)

201711水滸伝142

前回に続き、現在刊行中の新訳「水滸伝」(講談社学術文庫)を読みながら、メモとして作成しているあらすじと登場人物です。赤字は百八星の初登場回です。

第五十一回 插翅虎枷打白秀英 美髯公誤失小衙内

登場人物:宋江、王矮虎、扈三娘、雷横、晁蓋、呉用、朱仝
あらすじ:梁山泊では仲間が増えた宴が広げられ、宋江は王矮虎に扈三娘を娶らす。そして、晁蓋、呉用と共に全員の役割分担を決める。朱貴の居酒屋を訪れたのは雷横だった。宋江は梁山泊入りを勧めるが、雷横は丁重に断り、帰っていった。雷横は?城県へ帰ると李小二にさそわれ、白秀英の芝居を見にいく。ところが、芝居小屋で暴れてしまい、白秀英に訴えられて役所へ連行される。枷をはめられた雷横を挟んで雷横の母親と白秀英とが喧嘩をはじめ、怒った雷横は白秀英を殺してしまう。雷横は裁判にかけられる。牢役人はなんと朱仝だった。朱仝は雷横を逃し、このことにより滄州へ流刑となる。しかし、朱仝は滄州では牢へ入れられず、役所の仕事を手伝うようになる。そして、長官の五歳の坊ちゃんに懐かれ、面倒を見るようになった。そんなある日、坊ちゃんと祭へ行くと、雷横と出くわした。雷横は梁山泊へ入り、宋江へ事の経緯を伝えたため、朱仝も梁山泊へ迎えようと呉用が使わされたのだった。ところが、同行していた李逵に坊ちゃんが殺されてしまう。怒った朱仝は李逵を追い、ある屋敷へたどり着く。そこは柴進の屋敷だった。そこで聞かされた話は、朱仝をなんとしても梁山泊へ迎えるため、呉用と雷横とが李逵に坊ちゃんを殺すよう指示していたのだった。朱仝は話を聞き、梁山泊へ入るためにはある条件があると言う。

第五十二回 李逵打死殷天錫 柴進失高唐州

登場人物:朱仝、柴進、李逵、柴皇城、高廉、呉用
あらすじ:朱仝の条件は李逵を殺すことだった。李逵は指示を受けて殺しただけだと反論し、柴進は李逵を屋敷へとどめて、呉用たちと梁山泊へ行けばよいと勧める。宋江はすでに朱仝の家族を梁山泊へ迎え入れているということだった。朱仝は梁山泊へ入った。柴進の屋敷で李逵が暮らすようになってしばらく経った頃、高唐州に住む柴進の叔父・柴皇城から病に伏せていると手紙が来た。州の長官・高廉は高?の従兄で、やりたい放題しており、その義弟の殷天錫は叔父の花園を取り上げようとしていた。柴皇城からその話を聞いた李逵は殷天錫を殴り殺してしまう。李逵は逃げるが、柴進は捕まり、牢でひどい目に遭う。逃げた李逵は梁山泊へ助けを求める。梁山泊は三千人の軍隊を高唐州へ向かわせる。高廉は妖術を使って梁山泊軍を撃退する。宋江も妖術で対抗するが、何度も敗退してしまう。すると、呉用がある人物を呼ぶよう提言する。

第五十三回 戴宗智取公孫勝 李逵斧劈羅具人

登場人物:宋江、呉用、戴宗、李逵、公孫勝、羅真人
あらすじ:呉用は妖術を打ち破るためには公孫勝を連れくる必要があると訴えた。神行法の使い手、戴宗が李逵を伴に連れて公孫勝を探しに行くことになった。神行法を使うときは生臭いものを食っては行けないのに、李逵は言いつけを守らず、道中で酒や肉をこっそり食っていた。それに気づいた戴宗は李逵の足が止まらないようにいたずらの術をかける。そんなこんなの騒動を起こしつつ、公孫勝を居所を探り当てた。しかし、公孫勝は老母の面倒と、師匠の羅真人との関係を理由に梁山泊行きを断る。李逵は公孫勝が羅真人ばかり気にかけていることに腹立て、夜中に羅真人の道場を尋ねるとまさかりで叩き切ってしまった。すると、首からは白い血が流れた。翌日になると、羅真人は何食わぬ顔で道場に座っていた。羅真人と思っていたのはひょうたんで、妖術によって騙されていたのだった。李逵は妖術によってさんざんなお仕置きを受ける。

第五十四回 入雲龍関法破高廉 黒旋風探穴救柴進

登場人物:公孫勝、羅真人、李逵、湯隆、宋江、高廉、高?、呼延灼
あらすじ:羅真人は公孫勝へ秘術を授けると、山から降りることを許した。戴宗は神行法で一足早く梁山泊へ帰っていき、公孫勝と李逵は二人で旅をした。居酒屋で休憩している時、李逵が一人買い物に出ると、道端でハンマーを振り回す芸をしている大男がいた。李逵はその芸を見かねて、ハンマーを手に取ると、弾丸のように操ってみせた。大男は平伏し、鍛冶屋の湯隆と名乗った。李逵は湯隆を弟分とした。三人が梁山泊へ合流すると、宋江は兵を出した。高廉はまた妖術で挑もうとしたが、公孫勝がその術を破り、大勝した。高廉は近隣の二州の長官へ救援を求めた。二州の軍が到着すると、宋江たちは逃げた。高廉は宋江を追って細い道へ入り込み、ふと気づくと周囲を梁山泊軍に包囲されていた。こうして高廉は最期を迎えた。さっそく柴進の牢へ救出に向かうと、柴進は牢番の差配で井戸の中へ匿われているが生死はわからないという。李逵が井戸のしたへおり、無事に柴進を救い出した。一方、高?は従兄の高廉が殺されたことを知ると、討伐軍の将として呼延灼を派遣する。

第五十五回 高太尉大興三路兵 呼延灼擺布連環馬

登場人物:呼延灼、韓滔、彭?、凌振、宋江、呉用、湯隆
あらすじ:呼延灼は援軍として韓滔、彭?を呼び寄せた。準備が整うと、三軍は梁山泊目指して出発した。しかし、彭?は生け捕りされた。呼延灼と韓滔とは連環馬軍で一気に梁山泊軍を攻め立て、宋江たちは梁山泊へ逃げ帰った。高?は梁山泊の砦を落とすため、砲術の名手である凌振を呼び寄せる。さっそく、凌振は梁山泊を砲撃し、小さな砦を破壊した。呉用は策を練り、まず凌振を生け捕りにした。凌振にも梁山泊の仲間になるよう勧めると、都に家族を残しており、それが心配だという。宋江たちは家族を救い出すことを約束し、宴会を始める。連環馬軍をいかに破るかみなで悩んでいると、湯隆が名案があるという。

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とんぼの本「怪人 江戸川乱歩のコレクション」

201712怪人江戸川乱歩コレクション156

新潮社・とんぼの本の新刊として「怪人 江戸川乱歩コレクション」という本が出ました。
はじめにタイトルだけ知ったときは「いったいナニゴトか」と過大な期待をしてしまいましたが、それほど仰天するような内容ではありませんでした。
乱歩関係のビジュアル本は、これまでにもいくつか刊行されています。
いずれ、記事を改めて詳しく紹介しようかと思っていますが、これまでに刊行されたビジュアル本をズラズラっと並べてみましょう。(リンク先はいずれもAmazon)



江戸川乱歩アルバム
河出書房新社
1994-10








こうして見ると、1994年の乱歩生誕100周年前後に刊行されたものが多く、いまや新本で入手可能なのは新潮日本文学アルバムの一冊くらいです。
それぞれに特色はありますが、これまでの本はやはり「小説家としての乱歩」に焦点を当てたものばかりで、乱歩の写真以外は、初版の書影や自筆原稿、著書の広告やチラシなどがメインでした。
今回のとんぼの本は、乱歩邸の「もの」に焦点を当てているというところで、他とは一線を画しています。池袋にある乱歩邸は今は立教大学へ移管され研究が進んでいますが、この本の内容はその研究成果ともいえます。

ともかく、乱歩邸は解剖学的な緻密さで徹底的に研究されているようですね、この本を見ると。
乱歩邸は内装や増築部分などが乱歩自身によって設計されていますが、これまた「乱歩作品」の一つと見なすことができます。このため、ドアノブだとか、電灯だとか、そんな一見どうでもよさそうなものまでいちいち写真に収められており、ところが、並べてみると「やっぱりこれは乱歩だ」と思ってしまうようなビジュアルなのです。
また、乱歩は自身にまつわる記録――写真や手紙はもちろん、新聞記事や広告などまで――何かも整理して保管していたことで知られていますが、このような整理保管対象は日用品にも及んでいました。服やネクタイなどの膨大な写真も並んでいますが、これも立教大学が研究の一環で撮影たもののようです。すんごく楽しそうな研究をしているな、立教大学は!

乱歩が作成していたスクラップブック「貼雑年譜」は有名で複製が公刊もされていますが、それとは別に家族のためにアルバム帳を作っていたとのことで、その内容も一部、紹介されています。刊行前に物議をかもしていた「うら若き女性のヌード写真」です。

貼雑年譜 (江戸川乱歩推理文庫)
江戸川 乱歩
講談社
1989-07-25


というわけで、小説家としての乱歩だけでなく、人間としての乱歩、生活者としての乱歩の息遣いに触れられる、ファンには嬉しい一冊です。



 
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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
ブログ更新通知:https://twitter.com/squibbon19

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