備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

2017年04月

ポプラ社 少年探偵江戸川乱歩全集46「三角館の恐怖」

46三角館の恐怖053

今回は第46巻「三角館の恐怖」をご紹介します。昭和48年11月に刊行されました。
原作は昭和26年に雑誌「面白倶楽部」へ連載された同題の「三角館の恐怖」。
リライトは氷川瓏が担当しています。初出は昭和33年にポプラ社「名探偵明智小五郎文庫5」として刊行されました。
表紙絵・挿絵とも岩井泰三が担当しています。いずれも本書の描き下ろしです。

「三角館の恐怖」は、アメリカのミステリ作家ロジャー・スカーレットが1932年に発表した「エンジェル家の殺人」を翻案したものです。
翻案といっても、実は「翻訳」に近いくらい、ほぼ原著どおりの展開です。

これをリライトした本書も、探偵役が篠警部から明智小五郎に変わっているほかは、ほぼ原作どおりです。図面も原作と同じものが全て収録されています。
ポプラ社のシリーズとしては珍しく、少年が一人も登場せず登場人物の年齢は全て原作そのままです。子ども向けではない動機もそのまま描かれているため、子どもの頃に本書を読んだ時は、ずいぶんと大人っぽい小説を読んだ気分になったものでした。
一方で、原作「三角館の恐怖」は乱歩作品にしては珍しい論理的なガチガチ本格ミステリで、読者への挑戦状までついています(翻案作品、しかも原著には挑戦状がないという点で、他人の褌で相撲をとっている印象もありますが……)。しかし、リライト版ではこのような「稚気」は省略されており、ますます大人っぽい雰囲気になっています。

Amazon販売ページ(古本は入手できます)


関連記事:
ポプラ社 少年探偵江戸川乱歩全集の27巻以降

元ネタ探求 アンダーグラウンド・サーチライ「スケキヨ」「アオヌマシズマ」

20170505スケキヨ072

筋肉少女帯が活動を一時休止した直後に発売された、大槻ケンヂのソロプロジェクト「アンダーグラウンド・サーチライ」。第一弾のタイトルは「スケキヨ」というぶっ飛んだもので、CD屋で発見した時は仰天しました。
しかし、つい最近買ったばかりのような気がしていましたが、もう20年近くも経っているとは。就職したばかりの頃で、帰宅途中に職場近くのショップで手に取ったときのことはよく覚えています。
久しぶりに棚から出してみたら、帯の紙がシミだらけになっていて、歳月を感じます。
こんなアルバム、すぐさま廃盤になるだろうと思って、急いで買ってきたものですが、意外にもかなり長い間、販売されていました。
これが出たときには、筋少の休止は発表されていたんだったっけなあ? 20年前のことなので、あまりよく覚えていません。

というわけで、筋肉少女帯の元ネタ探しに続いて、アンダーグラウンド・サーチライの2枚に行きたいと思います。
(とはいえ、オーケンの作詞曲の限るので、あんまりたくさんはありません)

ワインライダー・フォーエバー

ウィノナ・ライダーとジョニー・デップのスキャンダルを歌ったもの。
ジョニー・デップが腕に彫った「ウィノナ・フォーエバー」の刺青をレーザーメスで消そうとしたところ、うまく消えず「ワインフォーエバー」になってしまった……という話は、ライナーノーツでオーケン本人が解説していますが、曲のタイトルを「ウィノナ・ライダー・フォーエバー」としなかったのは、権利関係の問題で……という話は、どこか別のところに書いてあったような気がします。
【彼氏の腕はシザーズ】
ティム・バートン監督「シザー・ハンズ」のこと。ジョニー・デップ演じるエドワードは腕がハサミの人造人間で、ウィノナ・ライダー演じる女の子に恋をする。「フランケンシュタイン」をモチーフにした名作。
【彼女は昔ヘザーズ】
ウィノナ・ライダーの出世作「ヘザース」のこと。「体育会系VSオタク」というアメリカ映画によく出てくる対立を描いていますが、ガンガンと人を殺していくブラック・コメディ。
【ティーバートン】
ティム・バートンのこと。

猿の左手 象牙の塔

インディーズ時代の筋肉少女帯の曲ですが、メジャーデビュー後は再録せず、アンダーグラウンド・サーチライで久しぶりの登場。インディーズ時代よりも格段に歌がうまくなっているのがわかります。
【猿の左手】
イギリスの古典的ホラー小説であるジェイコブズの「猿の手」から。三つの願い事を叶えてくれる猿の手のミイラを巡る物語。創元推理文庫のアンソロジーが最も手軽に読めます。
怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫)
アルジャーノン・ブラックウッド



【左手】
では、なぜ「猿の手」が「猿の左手」になったかといえば、これはル・グィンのSF「闇の左手」から。
闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))
アーシュラ・K・ル・グィン



埼玉ゴズニーランド

言うまでもなく東京ディズニーランドのパロディ。個人的には無茶苦茶好きな曲。
【警部マックロード】
70年代に放映されたアメリカの警察ドラマ「警部マクロード」から。
警部マクロード DVD-BOX 1
デニス・ウェーバー


【バイオニックジェミー】
70年代に放映されたSFドラマ「地上最強の美女バイオニック・ジェミー」から。


【水漏りコースケ】
70年代に放映された石立鉄男主演のホームドラマ「水もれ甲介」から。


UNDERGROUND SERCHILIE

この曲の歌詞はもともと大槻ケンヂの自伝的大河小説の第2弾「グミ・チョコレート・パイン チョコ編」(1995年)の「第4章 サタデーナイトフィーバー」に登場していたものです。小説のために書き下ろした詩なのか、もともとの持ち歌だったのかはよくわかりません。作中では「ゾン」という登場人物が演奏します。筆者は町田町蔵がモデルだと思って読んでいましたが、遠藤ミチロウのイメージも入っているようです。
【ミラーボール】
ジョン・トラボルタ主演の映画「サタデーナイトフィーバー」のイメージ。ジョン・トラボルタは70年代にこの映画で一世を風靡したが、やがて失速。しかしクエンティン・タランティーノが「パルプフィクション」(1994年)で起用したことから人気が再燃。「グミ・チョコレート・パイン」が書かれた時期は再ブームの最中でした。
【八つ墓村の格好】
横溝正史の「八つ墓村」に登場する大量殺人犯・田治見要蔵の服装のこと。詰襟の上着、脚にはゲートルを巻き、胸にはナショナルランプを下げ、頭の鉢巻には牛のように2本の懐中電灯を突き立てた姿で村を襲撃し、一晩で32人を殺しました。野村芳太郎監督の松竹映画「八つ墓村」の影響もあり、70年代カルチャーの頻出項目となっています。
なお、昭和13年に実際に起きた津山事件では、犯人の都井睦雄がこの姿で30人を殺しています。筋肉少女帯の最近のアルバム「THE SHOW MUST GO ON」にも、津山事件をモチーフにした「ムツオさん」という曲が収録されています。


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ポプラ社 少年探偵江戸川乱歩全集45「時計塔の秘密」

45時計塔の秘密052


今回は第45巻「時計塔の秘密」をご紹介します。奥付は昭和45年8月発行となっていますが、実際には昭和48年11月に刊行されたようです。
原作は昭和12年から「講談倶楽部」に連載された「幽霊塔」。
リライトは氷川瓏が担当しています。初出は昭和34年にポプラ社から「名探偵明智小五郎文庫14」として刊行されました。
表紙絵・挿絵とも岩井泰三が担当しています。いずれも本書の描き下ろしです。

原作はよく知られているとおり、黒岩涙香の「幽霊塔」をベースにしています。涙香の「幽霊塔」はさらにイギリスの作家ウィリアムスンの「灰色の女」を翻案したものです。

以前に書いた記事
黒岩涙香の「幽霊塔」

というわけで、この三作品を比較するといろいろ面白いのですが、 それはまたの機会にして、今回は乱歩の「幽霊塔」と、リライト版「時計塔の秘密」とを比べてみます。

原作は北川光雄という青年が主人公で、幽霊塔で出会った美女・野末秋子に心を惹かれ、獅子奮迅の働きで謎に立ち向かい、最後には秋子と結ばれることになります。
ところが、リライト版では北川光雄は少年ということになっています。
光雄は少年なので、秋子に心を惹かれても、原作ほどの冒険はできません。そのパーツを受け持つのが明智小五郎です。リライト版の後半は、原作の光雄の役を光雄少年、明智が分担したりあるいは協力したりしながらこなしていくことになります。
また、原作には森村刑事という名探偵が登場します。名探偵という言うほどには活躍しない印象がありますが、ともかく、登場時点では「名探偵」として華やかに描かれています。
この役目も、当然のことながら明智が担います。
ところが、原作では終盤で森村刑事と北川光雄とが格闘する場面があるのです。明智が両方の役を担っていては、このシーンをどうするのか?
と心配していると、森村刑事役は途中から中村警部が引き継ぎます。ポプラ社のシリーズでは、警察官といえばともかく中村警部です。
ということは……なんと、盟友であるはずの明智小五郎と中村警部とが格闘するという、シリーズ唯一のトラブルが発生するわけです。

そんな感じで、原作のエピソードを全て取り入れることには成功していますが、「少年」と「明智」というお題を無理やり達成するために、なかなか複雑な形で登場人物たちを使いこなしていきます。改変の力技という点では、シリーズ随一でしょう。
子どもの頃、原作を読む前にリライト版を読みましたが、その時点では何の違和感も持ちはしなかったのですけどね。

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関連記事:
ポプラ社 少年探偵江戸川乱歩全集の27巻以降
「灰色の女」から乱歩版「幽霊塔」への伝言ゲーム
黒岩涙香の「幽霊塔」
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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
ブログ更新通知:https://twitter.com/squibbon19

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