41一寸法師048

今回は第41巻「一寸法師」をご紹介します。昭和48年11月の刊行です。
原作は大正15年から「東京朝日新聞」に連載された「一寸法師」。
リライトは氷川瓏が担当しています。初出は昭和34年「名探偵明智小五郎文庫12」としてポプラ社から刊行されました。
表紙絵・挿絵は岩井泰三が担当しています。いずれも本書の描き下ろしです。

なお氷川瓏は講談社から昭和45年に刊行された「少年版江戸川乱歩選集」の「一寸法師」も担当していますが、本書と同内容なのかどうかは未確認です。
「少年版江戸川乱歩選集」というのは、生頼範義先生が熱筆した表紙のイラストが、とんでもなく恐ろしいので有名で(まんだらけの通販サイト参照)、筆者の通っていた中学校の図書室にも置いてありましたが、すでに大人向けを含めて乱歩作品全てを読破していた者としても、ちょっと手に取る気になれませんでした。今にして思えば、ポプラ社版より、もっとレアなこっちをコレクションしておくべきだったと、思わないでもないのですが……

原作の「一寸法師」は、いわゆる通俗長編の最初の作品と言われています。
乱歩自身は、この作品の出来映えにひどく不満足で、大衆に迎合した作品を書いてしまった自己嫌悪からしばらく筆を断ったほどなのですが、朝日新聞に連載されたということで世間には広く受け入れられ、何度も映画化された人気作となっています。
ただ、最初期の作品であるためか、その後の「蜘蛛男」以降の通俗長編に比べると、展開がややもたつく印象があります。子どもの頃、リライト版で初めて読んだ印象もあまりパッとしなかった記憶があります。
表紙で空を飛んでいる一寸法師に、得体の知れない恐怖を感じたものですが、改めて読み直してみても、やっぱりよくわからない表紙絵です。

もともと明智小五郎も登場する作品であるため、リライト版もおおむね原作通りです。
一番大きな変更点は、主人公の名前でしょう。原作では小林紋三が、リライト版では清水紋三となっています。
この変更は、むろんのこと小林芳雄君に配慮してのものです。原作が書かれたのは小林少年が初登場する前のものなので、乱歩ものちに重要となる「小林」姓を平気で使ってしまっていたわけです。
主人公の姓をせっかく清水に変えたところで、小林君も登場します。原作の終盤、唐突に「平田」という明智探偵の助手が登場しますが、これが小林少年に変わっています。
レギュラーの小林君登場ということであれば、このシーンの唐突さはずいぶんと薄まるので、これはなかなかよい変更だと思います。

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