38白い羽根の謎045

今回は第38巻「白い羽根の謎」をご紹介します。昭和47年5月の刊行です。
原作は昭和29年から雑誌「宝石」に連載された同題の「化人幻戯」。
リライトは氷川瓏が担当しています。初出は昭和36年「少年探偵小説全集7」としてポプラ社から刊行されました。
表紙絵・挿絵は岩井泰三が担当。いずれも本書の描き下ろしです。

原作が連載された「宝石」は戦後すぐに創刊された探偵小説専門雑誌で、横溝正史の「本陣殺人事件」「獄門島」など、戦後本格ミステリの牙城でした。
乱歩は経営にも深く関わり、昭和32年からは「責任編集」を努めています。
「化人幻戯」は乱歩が唯一「宝石」で発表した作品ですが、本人は「失敗作」と切り捨てています。これはおそらく、あまりに望みが高かっため、それを果たせなかったという意味での失敗作ではないかと思います。
筆者は、この作品をかなり高く評価していて、乱歩には珍しい論理的な本格ミステリで、トリックをイラスト付きで説明したり、さらには江戸川乱歩本人が探偵小説家として登場するなど、かなりの意欲作だと思います。

また、主人公とヒロインとの桃色遊戯を中間小説的な書き方で表現しているところも乱歩には珍しいところです。このあたりはストーリーにも密接に関係してくるのですが、子ども向けのリライト版では赤裸々な表現ができないため、主人公の恋心は描かれていません。犯人の動機も遺産目当てということになっていて、原作の異常性愛は封印されており、物足りなさは否定できません。
 何より、原作で印象に残る「カマキリが怖い」というくだりもありません。

余談ですが、「少年探偵江戸川乱歩全集」の後半の巻は、大人向け小説をリライトしていても、たいていは原題通りか、原作を容易に推察できるタイトルでした。しかし、この「白い羽根の謎」だけはあまりに大ざっぱなタイトルです。小学生の頃は、この本の原作が何なのか、「化人幻戯」を読むまで全くわかりませんでした。

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