前回の記事に引き続き、笠原和夫の話題です。
前回ご紹介した『昭和の劇』を読んでいると、シナリオそのものを読みたいという気になってきます。
実際、映画本編と比べてみると、実はシナリオそのものを読んだ方が、一つ一つのセリフの輪郭がくっきりと浮かび、迫力を感じられます。
笠原和夫ファンは、ぜひシナリオを読んでみることをおすすめします。

とはいえ、実はこれがなかなか難しい。
いくつかのシナリオは公刊されており、どんな形で刊行されているのかさえわかれば、古本屋などで比較的容易に入手できます。
しかし、いったいどんな本、あるいはどの雑誌のどの号に収録されているのか、網羅的にチェックできるものがないため、調べるのは大変です。
筆者は古本屋のサイトなどを定期的に巡回したり、あるいは笠原和夫作品が劇場公開された辺りの雑誌の内容を検索してみるなどして、かなり入手しましたが、しかしこれが刊行された全てとは思えません。
可能であれば、手に入るシナリオは全て読みたいと思っており、今も収集は継続中ですが、同じように笠原和夫のシナリオを探している方のため、参考までに筆者の手元にある笠原和夫のシナリオが収録された書籍・雑誌を発表年代順にご紹介します。

公開年 タイトル
1964年 日本侠客伝 「シナリオ」2015年3月号(高倉健・菅原文太の追悼特集で)
1965年 股旅三人やくざ 『笠原和夫 人とシナリオ』 シナリオ作家協会 2003年11月
1965年 日本侠客伝 関東篇 「キネマ旬報」1971年増刊8.30号(特集:任侠映画傑作選)
1968年 博奕打ち 総長賭博 『笠原和夫 人とシナリオ』
1969年 日本暗殺秘録 『笠原和夫 人とシナリオ』
1971年 博奕打ち いのち札 『笠原和夫 人とシナリオ』
1972年 関東緋桜一家 「シナリオ」1972年4月号
1973年 仁義なき戦い 『仁義なき戦い』 幻冬舎アウトロー文庫 1998年
1973年 仁義なき戦い 広島死闘篇 『仁義なき戦い』
1973年 仁義なき戦い 代理戦争 『仁義なき戦い』
1974年 仁義なき戦い 頂上作戦 『仁義なき戦い』
1974年 あゝ決戦航空隊 『笠原和夫 人とシナリオ』
1975年 県警対組織暴力 『笠原和夫 人とシナリオ』
1976年 やくざの墓場 くちなしの花 「シナリオ」1976年11月号
1980年 二百三高地 「シナリオ」1980年10月号
1982年 大日本帝国 「シナリオ」1982年8月号
1983年 日本海大海戦 海ゆかば 「シナリオ」1983年7月号
1984年 零戦燃ゆ 「シナリオ」1984年9月号
1989年 226 『226 昭和が最も熱く震えた日』 双流社 1989年6月

未映画化シナリオ
1963年 いれずみ決死隊 『昭和の劇』太田出版 2002年11月
1974年 実録・共産党 「映画芸術」2003年春号
1975年 沖縄進撃作戦 『映画はやくざなり』 新潮社 2003年6月
1984年 昭和の天皇 「en-taxi 第29号」2010年

雑誌「シナリオ」は、かつては笠原和夫のホームグランドのような状態で、代表作はだいたい映画公開時に掲載されていますし、エッセイや対談もたくさん載っています。『昭和の劇』に収録されたものもありますが、掲載誌でしか読めないものも多くあります。しかし、エッセイや対談はシナリオ以上に収録された雑誌の号数を調べる方法がなく、困っています。
ただ、古本は非常に入手しやすいです。神保町の矢口書店にはリーズナブルな値付けで大量に置いてありますし、ネット通販でもごろごろ転がっているので、目的の号数さえはっきりしていれば、簡単に見つかります。

また、公刊された書籍・雑誌以外にも、映画制作現場の関係者から流出する台本も古本屋では目にします。
こちらは目的のものを探し出せるかどうかは運次第で、かなり難しいのですが、筆者はたまたま「真田幸村の謀略」(1979年)を矢口書店で見つけて持っています。これは昭和史とは関係ない娯楽時代劇なので、興味が無いといえば全く無いシナリオではあるのですが。

2018年9月追記:
国書刊行会から「笠原和夫傑作選」が刊行されることとなり、笠原和夫の代表作はほぼそこで読めるようになる見込みです。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
国書刊行会「笠原和夫傑作選」刊行開始!



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