備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

河出文庫「探偵・怪奇・幻想シリーズ」に期待!

201706蟇屋敷の殺人097

このところ、河出文庫から戦前の探偵小説が続々と刊行されています。
先月出た甲賀三郎『蟇屋敷の殺人』なんかは、幻の、どころか、まるきりタイトルすら聞いたことのない作品で、論創社とか戎光祥出版とかならともなく、河出文庫がそんなものを出すとは、と驚いて買ってきてしまいましたが、巻末に「探偵・怪奇・幻想シリーズ」と銘打って今後の刊行予定が載っています。
それによると、数年前に収録された『黒死館殺人事件』『神州纐纈城』から始まり、ここ最近出た森下雨村、大下宇陀児も含めてシリーズ企画ということになっている模様です。
今回の『蟇屋敷の殺人』から帯にも「KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ」と入っています。

掲載されているラインナップをご紹介しましょう。
まず来月7月には小栗虫太郎『二十世紀鉄仮面』が刊行されます。
これは、「黒死館殺人事件」の翌年刊行された、法水麟太郎ものの一作です。昭和40年代に桃源社から出た全集版を古本屋でよく見かけますが、2001年には扶桑社文庫の「昭和ミステリ秘宝」の一冊として出たこともありますので、それほど珍しくはありません。
ただ、代表作というほどメジャーではありませんが、小栗虫太郎の作品には格段に読みやすい冒険譚ということで、割りと人気のある作品です。

その次、9月には小酒井不木の『疑問の黒枠』が刊行される予定とのことです。これは画期的!
小酒井不木は本業は医学者ですが、大正時代に海外探偵小説の翻訳や研究に力を入れており、乱歩が「二銭銅貨」でデビューした際には推薦文を寄せるなどしました。その後、自らも創作を始め、短編をたくさん残しています。
それらは何度も傑作選が編まれているため、わりと簡単に読めるのですが、なぜか長編の代表作であり、日本初の長編本格ミステリともいわれる『疑問の黒枠』は、過去に一度も文庫になることがありませんでした。
そもそも、書籍として刊行されること自体が、『別冊幻影城 小酒井不木』(1978年3月号)に収録されて以来と思われ、実に40年ぶりです。
筆者はこの「別冊幻影城」版を持っており(挿絵は花輪和一!)、戦前の版もいわゆる円本を古本屋でたまに見かけるため、それほど珍しい小説と思っていなかったのですが、先日「国内名作ミステリ必読リスト100(本格ミステリ編)」の記事を書くために調べていて実は文庫化されたことがないと知り驚きました。
さらに9月の刊行予定を知って、もっと驚きました。文庫にするならちくま文庫か創元推理文庫かな、と思っていたので、河出文庫が出すという点でも驚きです。

11月には浜尾四郎の『鉄鎖殺人事件』が刊行されます。「殺人鬼」と並ぶ浜尾四郎の代表作です。
これは昔、春陽文庫に収録されておりこれまた古本屋ではよく見かけるので、それほど珍しいと思っていませんでしたが、よく考えると前回刊行からのブランクは「疑問の黒枠」以上かもしれません。

というわけで、シリーズと銘打つからにはその先も刊行が続くと思われますが、予想外のところばかり攻めていますので、全く先が読めません。
このようなレア作品の復刊企画を文庫で出すのは珍しいと思います。価格が安く本棚の場所も取らないので「ちょっと興味がある」という程度でも気軽に帰るのが嬉しいです。
今後が非常に楽しみです。

ちなみに、これまでラインナップは以下のとおりです。
黒死館殺人事件 (河出文庫)
小栗 虫太郎
河出書房新社
2008-05-02


神州纐纈城 (河出文庫)
国枝 史郎
河出書房新社
2007-11-02


消えたダイヤ (河出文庫)
森下 雨村
河出書房新社
2016-11-08


白骨の処女 (河出文庫)
森下 雨村
河出書房新社
2016-06-07


見たのは誰だ (河出文庫)
大下 宇陀児
河出書房新社
2017-03-07


蟇屋敷の殺人 (河出文庫)
甲賀 三郎
河出書房新社
2017-05-08




NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」サブタイトル元ネタリスト

今年のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」。
世間的には昨年の「真田丸」ほど騒がれていないように感じますが、我が家では「大河ドラマ史上最高傑作では!?」というくらい、盛り上がっています。
かつてないコメディタッチで、毎週とても楽しみに見ていますが、サブタイトルもかなりふざけています。映画や小説のタイトルをもじったものが多いのです。
元ネタがいまいちよくわからないものや、複数の候補が考えられるものもありますが、「たぶんコレでしょう」というところを紹介していきます。

第1回 井伊谷の少女
これは「アルプスの少女」でしょう。実際のところ初回はメルヘンチックな雰囲気で物語が進みました。
調べてみたところ、これの元ネタは「風の谷のナウシカ」と公認されているようです。失礼しました!
http://www.asahi.com/and_M/articles/CCfumtp017051800231.html




第2回 崖っぷちの姫
これは「崖の上のポニョ」かな、と思いますが、全然自信はありません。



第3回 おとわ危機一髪
これはショーン・コネリー主演のボンド映画「ロシアより愛をこめて」の劇場公開時のタイトル「007危機一発」から。といっても「~危機一髪」というのは、一般的な表現になりつつありますが。



第4回 女子にこそあれ次郎法師
これはよくわかりません。同じく直虎を主人公にした「女にこそあれ次郎法師」という小説が10年ほど前に出ているので、それをそのまま頂戴したか、あるいは史料にこのような表現が確認されているのか?



第5回 亀之丞帰る
これもよくわかりません。菊池寛の「父帰る」?



第6回 初恋の別れ道
チャン・イーモウ監督の映画「初恋のきた道」から。この頃は、全世界がチャン・ツィイーに恋をしていました。




第7回 検地がやってきた
珍しい表現ではないので、元ネタがあるのかどうかわかりませんが、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」が念頭にあったかもしれません。



第8回 赤ちゃんはまだか
これは元ネタがあるのかどうか、よくわかりません。


第9回 桶狭間に死す
これも珍しい表現ではありませんが、そもそもはトーマス・マンの「ヴェニスに死す」が元ネタと言えるかと思います。ヴィスコンティが映画化しています。
ヴェニスに死す (岩波文庫)
トオマス マン
岩波書店




第10回 走れ竜宮小僧
これも、元ネタを特定しづらいのですが、第1回が「アルプスの少女」なら、これは「名犬ジョリィ」のオープニング曲「走れジョリィ」か?


第11回 さらば愛しき人よ
レイモンド・チャンドラーのハードボイルド「さらば愛しき女よ」から。これで「いとしきひとよ」と読ませています。ちなみにこのタイトルは清水俊二訳で、村上春樹の新訳は「さよなら、愛しい人」となっています。



第12回 おんな城主直虎
平成29年のNHK大河ドラマ「おんな城主直虎」から……って、このドラマやん。


第13回 城主はつらいよ
山田洋次監督の名作「男はつらいよ」から。



第14回 徳政令の行方
これはよくわからず。


第15回 おんな城主 対 おんな大名
これもよくある表現で、元ネタと言えるものがあるのかどうか?


第16回 綿毛の案
「赤毛のアン」。これはふざけすぎ。
赤毛のアン―赤毛のアン・シリーズ〈1〉 (新潮文庫)
ルーシー・モード・モンゴメリ
新潮社




第17回 消された種子島
ティモシー・ダルトンが主演した「007消されたライセンス」から。ボンド映画、好きですね。



第18回 あるいは裏切りという名の鶴
これは筆者は知らなかったのですが、フランス映画に「あるいは裏切りという名の犬」という邦題のものがあるそうです。


第19回 罪と罰
ドストエフスキーをそのまま。
最近、ドスト「エフ」スキーに親近感を抱いた漫「エフ」画太郎が漫画化(?)しました。



第20回 第三の女
キャロル・リードの名画「第三の男」から。
第三の男 [Blu-ray]
ジョセフ・コットン
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2015-06-24



第21回 ぬしの名は
昨年の大ヒットアニメは「君の名は。」なので、菊田一夫の「君の名は」が元ネタでしょう。まあ、どっちでもいいんですが。



第22回 虎と龍
これもよくわからず。宮藤官九郎の「タイガー&ドラゴン」?


第23回 盗賊は二度仏を盗む
ジェームズ・M.ケインの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」から。
最近、田口俊樹の新訳が新潮文庫から出ました。
郵便配達は二度ベルを鳴らす (新潮文庫)
ジェームズ・M. ケイン
新潮社




第24回 さよならだけが人生か?
「さよならだけが人生だ」という表現はよく目にしますが、元は井伏鱒二の「厄除け詩集」に収録された訳詩の一節です。漢詩「勧酒(酒を勧む)」の一節「人生足別離」を「『サヨナラ』ダケガ人生ダ」と訳したのです。この詩集、このような絶妙な文があふれていて、大好きです。大学に入学して初めて買った思い出の一冊。
厄除け詩集 (講談社文芸文庫)
井伏 鱒二
講談社
1994-04-05



第25回 材木を抱いて飛べ
高村薫のデビュー作「黄金を抱いて翔べ」から。急に現代ミステリが元ネタでびっくりです。



第26回 誰がために城はある
ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」から。

誰がために鐘は鳴る〈上〉 (新潮文庫)
アーネスト ヘミングウェイ



第27回 気賀を我が手に
よくある表現なので、特定の元ネタがあるのか、よくわかりません。
前々回の元ネタになった高村薫に「わが手に拳銃を」という小説があります。


第28回 死の帳面
これまた、ずばり特定できない、よく分からないサブタイトル。
「デス・ノート」?



第29回 女たちの挽歌
これは、ジョン・ウー監督のアクション映画「男たちの挽歌」から。
ジョン・ウーの出世作で、のちのハリウッドで「フェイス/オフ」や「ミッション:インポッシブルⅡ」を撮るきっかけとなります。個人的にはすごく懐かしい映画。




第30回 潰されざる者
クリント・イーストウッド監督・主演の映画「許されざる者」(1992年)から。
イーストウッドのルーツである、往年の西部劇やマカロニウェスタンを強く意識した作品です。

許されざる者 [Blu-ray]
クリント・イーストウッド




第31回 虎松の首
うーん、「~の首」と言われて真っ先に思い浮かぶのはサム・ペキンパーの「ガルシアの首」ですが、どうなんでしょう? これまでの元ネタを考えると、外れてはいないように思いますが。
ちなみにこの映画の原題は直訳すると「ガルシアの首を取ってこい」というものです。




第32回 復活の火
小松左京のSF小説「復活の日」が元ネタ。深作欣二監督の角川映画「復活の日」は南極ロケ話題になりました。





第33回 嫌われ正次の一生
山田宗樹のミステリ「嫌われ松子の一生」が元ネタ。中島哲也監督が映画化もしています。




第34回 隠し港の龍雲丸
わかりやすいネタが続きますが、黒澤明監督の映画「隠し砦の三悪人」が元ネタ。樋口真嗣監督が同タイトルでリメイクしていますが、「裏切り御免」の使い方が寒すぎて、樋口監督ファンのつもりの筆者でも評価できませんでした。ただ、ダースベイダーを登場させたところだけはよかったと思います。




第35回 蘇えりし者たち
これは去年公開された映画「レヴェナント:蘇えりし者」でいいのかな? 元ネタ作品があまりに最近すぎるので、ちょっと驚きます。
先日、職場近くのヨドバシで、この映画の4K映像のデモを流しているのをボーっと眺めていたのですが、あまりに精細すぎて目がシバシバしました。




第36回 井伊家最後の日
「死刑囚最後の日」「地球最後の日」「太陽系最後の日」「ポンペイ最後の日」と、同じような表現が多すぎて、元ネタを特定できません……

第37回 武田が来たりて火を放つ
これは横溝正史「悪魔が来りて笛を吹く」ですね。「た」が入ってしまっていますが、ここは筆者的にはこだわってほしかったポイントです。
豆知識を披露しますと、そもそも「悪魔が来りて笛を吹く」というタイトルにも元ネタがあります。
木下杢太郎という明治末期から昭和初期に活動した詩人がいますが、「玻璃問屋」という詩に「盲目めくらが来りて笛を吹く」という一節があり、ここからとられたものなのです。





第38回 井伊を共に去りぬ
「風と共に去りぬ」。最近、岩波文庫と新潮文庫から新訳が出ました。



第39回 直虎の野望
これは小説や映画ではなく、ゲームの「信長の野望」でしょうか?
あまり自信なし。

第40回 天正の草履番
TBSでドラマ化された「天皇の料理番」が元ネタのようです。ドラマの脚本は「おんな城主 直虎」と同じく森下佳子です。



第41回 この玄関の片隅で
なんじゃそりゃ、というタイトルですが、「」ではなく「」というところがポイントですね。


岩波新書『この世界の片隅』は、1965年に刊行された被爆者の証言集です。コミックの原作というわけではありませんが、映画「この世界の片隅に」が公開された際に復刊されました。



この世界の片隅に [Blu-ray]
バンダイビジュアル





第42回 長篠に立てる柵
デヴィッド・リーン監督の映画「戦場にかける橋」から。
戦場にかける橋 HDデジタルリマスター版 [Blu-ray]
ウィリアム・ホールデン
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2012-10-03


第43回 恩賞の彼方に
菊池寛の短編小説「恩讐の彼方に」。「青の洞門」で知られる話です。
以前に第5回「亀之丞帰る」の元ネタについて書いた際、正解がよくわからないので「菊池寛の『父帰る』か?」と書きましたが、改めて菊池寛が登場したので、やっぱりあれで正解だったのかな、と。




第44回 井伊谷のばら
池田理代子の名作少女漫画「ベルサイユのばら」。


第45回 魔王のいけにえ
トビー・フーパー監督のホラー映画「悪魔のいけにえ」から。NHK大河ドラマで「悪魔のいけにえ」ネタが出てくるとは思いませんでした。言わずと知れたカルト的な人気を誇る名作であり、数多くのクリエイターに影響を与えています。



第46回 悪女について
有吉佐和子の小説に「悪女について」というものがあり、2012年にドラマ化もされているようで、これが元ネタと思われますが、よくわかりません。
個人的には「悪女」と聞くと反射的に「中島みゆき」と思ってしまうので、「悪女」+「私について」ということが真っ先に頭に浮かびました。



第47回 決戦は高天神
これまで小説や映画のタイトルばかりでしたが、なぜか急にドリカム。

決戦は金曜日
Sony Music Labels Inc.
2014-04-11


第48回 信長、浜松に来たいってよ
こんなふざけたサブタイトルが許されるのかどうかわかりませんが……





第49回 本能寺が変
本能寺の変

最終回 石を継ぐ者
ジェイムズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」が元ネタでしょう。月面で見つかった人間の遺骸を発端にしたSFミステリ。星野之宣によって漫画化もされています。

星を継ぐもの (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン



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「三銃士」原作を読むなら、おすすめの本はどれ? 各社版徹底比較

201706三銃士096

「一人は皆のために、皆は一人のために」という合言葉で有名なアレクサンドル・デュマの「三銃士」。
何度も映像化されてしますし、ミュージカルなどの原作にもなっています。児童向けの世界名作全集などにも必ずと言ってよいほど収録されている作品です。
筆者は大人になってから初めて読みました。それも、まだ5年くらい前のことで、わりと最近です。
実は小学生の頃にも岩波少年文庫版で読もうとしたことがあるのですが、読み始めてすぐに「全然おもしろくない」と思って、そのままになっていたのでした。
そんなわけで、これまでの人生は「三銃士」を面白いという人に対してずっとコンプレックスを抱いていて、アニメも人形劇も、一切観ることはありませんでした。

ところが。
とある本の中で褒められているのを見て、急に読みたくなり手にとったのですが、
……これはむちゃくちゃ面白い! 現代のエンターテインメントと比べても全く遜色のない、華やかでスリリングなチャンバラ小説です。。
逆に、小学生の時にいったいなぜつまらないと思ったのか、まるきり理由がわからなくなりました。
こんなことなら、三谷幸喜の人形劇もチェックしておくべきだった!

というわけで、未読の方にはぜひ一読をおすすめしますが、この小説もいろいろとバージョンが出ています。それぞれの特色をご説明しておきます。

その前に。
冒頭にも紹介した「一人は皆のために、皆は一人のために(un pour tous, tous pour un)」という合言葉ですが、実は邦訳でこの部分が直訳されているものは一つもありません。
筆者が読んだものは「四人はつねに一体となって協力する」と、語呂の悪い言い回しになっていますし、他の翻訳でも「四人は一つ、切っても切れぬ」「四人一体」など、かなり自由に意訳されています。
ふつうに直訳した方が、読者にも「あ、あの有名な合言葉だ!」とわかりやすいと思うのですが、なぜ揃いも揃ってこんな風になっているのか、よくわかりません。
「三銃士」といえば、4人が剣を合わせ、声高らかに「一人は皆のために、皆は一人のために」と叫ぶものだ、というイメージをお持ちの方、残念でした。児童向けのダイジェスト版を除いて、直訳はありません。なおかつ、このシーンでは各々片手を挙げて宣誓するのみで、剣を合わせたりはしません。

さて、いきなり読む気を削ぐようなことを書いてしまいましたが、いやいや「三銃士」の魅力はその程度では全く損なわれませんのでご安心ください。
それでは、数ある翻訳から、何を基準に選べばよいのか。

「ダルタニャン物語」

まず最初におすすめしたいのは、復刊ドットコムから刊行されている鈴木力衛訳の「ダルタニャン物語」です。
「三銃士」は文庫本で2冊ほどの小説なのですが、実はこれは「ダルタニャン物語」という長い長い大河小説の最初のエピソードに過ぎません。「三銃士」のあとに「二十年後」「ブラジュロンヌ子爵」と続くのですが、それぞれ「三銃士」の倍以上の長さがあるため「ダルタニャン物語」全体では全11巻という長さになっています。
「三銃士」で友情の絆を固めたダルタニャン、アトス、ポルトス、アラミスの4人が、時には対立しつつも切っても切れぬ関係を続け、多くの敵や陰謀と戦い続ける物語です。

今のところ、このシリーズ全てを邦訳したのは鈴木力衛のみです。以前は講談社文庫で刊行されていましたが、それが絶版になったあと復刊ドットコムから単行本で復刊されています。
全11冊のぞれぞれにオリジナルの書名がつけられていますが、この1~2巻が「三銃士」に該当します。




筆者は、シリーズを全部読むつもりで取り掛かったので、この復刊ドットコム版で読みました。
鈴木力衛の翻訳はWikipediaで調べたところ、昭和27年が初刊のようで、現在流通しているものは昭和43年に改訳されています。わりと古いといえば古いのですが、全く気にせず楽しむことができます。
「ダルタニャン物語」を全部読むつもりであれば、選択肢はこれしかないのですが、デメリットとしては単行本なので価格がずいぶん高いということがあります。1冊買う価格で文庫なら上下巻とも揃えてお釣りが来ます。したがって、とりあえず「三銃士」だけ読みたい、という方には向かないでしょう。
どこかの文庫で、まとめて復刊し直してくれると読みやすくなっていいのに、と思うのですが。
ちなみに「三銃士」にこれほど人気があるのに、続編をこれほど読みづらいのは日本くらいで、洋書ではシリーズ全てがペーパーバックで何種類も出ています。フランス語や英語が読める方は、そちらへチャレンジするのも手でしょう。復刊ドットコム版を揃えるよりもかなり安くなります。

(英語版ペーパーバック。いずれもリンク先はAmazon)
The Three Musketeers (Oxford World's Classics)
Alexandre Dumas
Oxford Univ Pr (T)



Twenty Years After (Oxford World's Classics)
Alexandre Dumas
Oxford Univ Pr (T)




文庫版のおすすめ

次に、とりあえず「三銃士」だけ読みたい、という方のために文庫版をご紹介します。
現在入手可能なものは岩波文庫と角川文庫の2種類のみです。(いずれもリンク先はAmazon)

生島遼一・訳


竹村猛・訳


これもWikipediaによれば、生島遼一訳の初刊は昭和22年、竹村猛訳の初刊は昭和36年。どちらも結構な古さです。
生島遼一は岩波文庫版のスタンダールやフローベールなどを訳しており、フランス文学の翻訳家として定評があります。また、竹村猛はデュマの作品ではほかにダイジェスト版ではありますが、岩波少年文庫版の「モンテ・クリスト伯」を訳しています。
実力の拮抗している翻訳家対決ですが、どっちの訳文が読みやすいかといえば、実はどっちも読みやすいです。
その証拠に、生島遼一訳のダイジェスト版は岩波少年文庫から出ており、竹村猛訳は全訳のまま文字遣いだけ少し改めて、偕成社文庫に収録されています。つまりどちらも児童文庫に流用されているのです。
そんなわけで、どちらで読むかは「お好みで」ということになります。

児童向けのおすすめ完訳本

次に、児童向けとして刊行されている完訳を2つご紹介します。

まず、偕成社文庫版は、上述の通り角川文庫版と同じ翻訳の文字遣いを改めたものです。
さらにもうひとつ角川文庫版とは違う点があり、それは挿絵が収録されていることです。
竹村猛・訳
(リンク先はAmazon)


児童書でおすすめはもう一点、福音館古典童話シリーズから出ている朝倉剛訳です。
おすすめのポイントは、まず初刊が昭和45年で、他の翻訳と比べて新しい点。またそもそも児童向けを意識して翻訳されているため、読みやすい文章です。
また、なによりこの本がすばらしいのは、その挿絵です。
筆者は原書の挿絵というものが好きなため、当ブログでこれまで紹介した「レ・ミゼラブル」や「海底二万里」でも、おすすめポイントとして挿絵を重視しています。ただし、それらには原書初版に付された言わば公式の挿絵というものがありました。
しかし、「三銃士」にはそのような位置づけの挿絵は無いようで、偕成社文庫版と福音館古典童話シリーズ版とでは異なった挿絵が使用されています。また、福音館版の挿絵を描いた画家の経歴を見ると「三銃士」が刊行されたときにはまだ生まれていません。つまり、ずっと時代が下ってから描かれた挿絵と思われます。
とはいえ、この福音館版の挿絵はとても素敵で、作品世界の理解に大いに役立つとともに、挿絵だけを眺めていてもうっとりするほどです。

朝倉剛・訳


そんなわけで、「三銃士」の全ての翻訳の中で、個人的にはこの福音館版が最も気に入っているのですが、デメリットとしては、やはり価格が高い。上下揃えると5000円くらいになってしまいます。また、解説によれば僅かに省略した部分がある版を翻訳の底本にしているとのことです。

自分で読むにはやはり価格の点が引っかかってきますが、「お子さんへプレゼント」ということをもし考えているのであれば、福音館版でキマリでしょう。一生、大切にできる本だと思います。
現に、筆者の手元にある福音館版は、子どものころ親に買ってもらったものです。
冒頭に書いたとおり、岩波少年文庫版を途中で放り出していたくせに、こんな高い高い福音館版をどういう経緯で買ってもらったのか全然覚えていません。それをまた読まずにこの年まで放置していた親不孝者です。しかし、30年近く経ってから、ようやくその真価に気づくことができたので、ヨシとしましょう。今更ながら、この高い高い本を買ってくれた両親に感謝感謝です。
筆者の息子がもし「三銃士」を読みたいと言い始めたら、この本をそのままプレゼントして済ませるつもりでいます(やはり親不孝者)。

児童向けダイジェスト

最後に、児童向けダイジェストをご紹介しましょう。
「三銃士」は抜群の面白さで一気読みできますが、とはいえ、文庫本上下巻の長さはあります。海外の小説をあまり読まない方には敷居が高いかもしれません。
映画や舞台などで「三銃士」を見て、原作にも触れておきたい、という程度であれば、ダイジェストを読んでみるというのもアリです。
児童向けダイジェストはかなりたくさんの種類が出ていますが、最もおすすめは講談社青い鳥文庫から出ている藤本ひとみによるものです。



藤本ひとみはもともとコバルト文庫などで少女小説を書いていましたが、その後、主にフランス史を題材とした歴史小説を書くようになりました。
フランスの歴史を背景に華やかでスリリングな世界を描いた「三銃士」を紹介するのに、これほどうってつけの方はいません。
児童向けに書かれたものですが、藤本ひとみファンはもちろん、一般の方が読んでも間違いなく楽しめます。
ただし。本書には一点だけ重大な問題あります。
実は「一人は皆のために、皆は一人のために」の宣誓シーンが省略されているのです。そこだけちょっと残念。まあ、原作ではそれくらい、わりと軽く扱われているセリフなんですけどね。

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まさかの乱歩新作??『吸血鬼の島 江戸川乱歩からの挑戦状』

201706吸血鬼の島092

まさかこの年になって、江戸川乱歩の聞いたことのないタイトルの本を手にとることになるとは考えもしませんでした。
「吸血鬼の島 江戸川乱歩著」という文字を目にした時は本当に信じられない気分でした。
「知らん、知らん、そんな小説知らんぞ!」と刊行を待ちわびていましたが、ようやく手にとってみると、これは昭和30年代に雑誌「少年」に連載されたもので、名義は乱歩となっていますが、実際には代作と考えられている作品でした。

帯に「外伝」とありますが、明智探偵や小林少年、少年探偵団が活躍する掌編にクイズがくっついた形式のものです。(このクイズがまた、びっくりするくらいチープ)
乱歩の書いた少年探偵団シリーズは、青銅の魔人や透明怪人、宇宙怪人など、化け物が登場しても、すべては二十面相の仕業だったと論理的、科学的に説明されますが(ホンマか?)、この外伝では、化け物は化け物のままです。つまり、本当に宇宙人がやってきたり、妖怪が出たりします。この辺の脳天気さが、いかにも昔の少年雑誌です。
表題の「吸血鬼の島」は、孤島へたどり着いた二十面相が、吸血鬼に襲われ、泣きながら明智探偵へ助けを求め、明智と小林とが二十面相救出のため島へ向かう、というありえないくらい無茶苦茶な設定なので、これはさすがに当時の読者も違和感を持ったのではないかと思いますが、こういうのを平気で掲載しているのが、さすが昔の少年雑誌です。
筆者は昭和50年生まれなので、ここまで古い雑誌は知りませんが、それでも子どもの頃に読んでいた雑誌は、「バミューダの三角海域」とか「魔のサルガッソー海」とか「ヒマラヤの雪男」「ネッシー」「ツチノコ」「ノストラダムス」……と、そんな話題ばかりで、ページをめくりながら本気で震えあがっていたもんです。昔の児童書がいかに節度がなかったか(だからこそ、すごく面白かったことを含めて)よく記憶しています。
 
話がそれましたが、本書を読んでいなくても、乱歩という作家を語るには何の不足もないことは間違いありませんが、乱歩の少年探偵シリーズが好きな人には、先年ポプラ社が企画した「生誕120年記念オマージュ」の企画よりも、こっちの方が遥かに楽しめます。
続刊もあるようで、楽しみです。



関連記事:
ポプラ社 少年探偵江戸川乱歩全集の27巻以降
江戸川乱歩入門 その3 少年探偵団シリーズ

国内本格ミステリ 最強の文庫はどれか?

201706獄門島094

本格ミステリファン御用達の文庫といえば、海外ミステリでは創元推理文庫とハヤカワ文庫の圧勝かと思いますが、さて、国内ミステリではどうでしょう?
ということで、先日掲載した「国内名作ミステリ必読リスト100(本格ミステリ編)」の100作品がどこの文庫に収録されているか調べてみました。これは現役で生きているものだけでなく、過去に一度でも収録されたものを全て含みます。春陽文庫なんかは、戦前のものも含めています。
また、発表されている範囲内で今後発売予定も含みます。

ほぼ、筆者の記憶に頼っているため、ちょこちょこ間違いがあるかも知れませんが、ご容赦ください。(お気づきの点あれば、コメント欄へぜひお願いします!)
そもそも筆者の恣意的なリストを土台に点数をつけている時点で、単なるお遊び企画です。本当なら「東西ミステリーベスト100」など一般的なリストをベースにすべきかも知れませんが、冒険小説系が混じるとだいぶ結論が変わりそうということが理由の一つ。それから、自作のリストは手元にデータがあるので加工しやすいのですが、そうでないとデータ入力を改めてイチから始める必要があり、面倒だから、というのが二つ目の理由。

そんなこんなで信頼性は全くないランキングではありますが、結果は、やはり創元推理文庫の圧勝。日本探偵小説全集、やたら出ている個人全集、東京創元社からデビューした本格作家たちなど、要因は多々ありますが、まあ納得できる結果です。
2位は角川文庫。筆者が中学生の頃(消費税導入直前)までは、今の創元推理文庫など目じゃないくらい、とにかく角川文庫さえ読んでいればミステリもSFも国内ものはOK、という時代がありました。角川文庫の黄金時代は中学生時代に終了しましたが、もうちょっと早く生まれて、時間と金に余裕がある時期に角川文庫を買いまくる生活ができていたら……と今でも思います。
僅差で続く3位は講談社文庫。大手の文庫の中では比較的後発のため、古いものはあまり得意ではないのですが、「新本格」という言葉を生み出しただけあり、平成以降では圧倒的な強さです。
また、忘れてはいけない光文社文庫。名作の復刊に熱心で、必読の定番書をよく揃えています。筆者は土屋隆夫は光文社文庫で読みました。
最後に、春陽文庫。これは新しいものは皆無ですが、戦前の探偵小説をたくさん出しており、古本屋で見かけたら必ずチェックしたい文庫です。

というわけで、一覧表。

著者 タイトル 創元推理文庫 角川文庫 講談社文庫 光文社文庫 春陽文庫 その他
黒岩涙香 無惨




小酒井不木 恋愛曲線




小酒井不木 疑問の黒枠




河出文庫(予定)
江戸川乱歩 二銭銅貨
江戸川乱歩推理文庫
江戸川乱歩 D坂の殺人事件
江戸川乱歩推理文庫
江戸川乱歩 心理試験
江戸川乱歩推理文庫
江戸川乱歩 パノラマ島奇談
江戸川乱歩推理文庫
江戸川乱歩 陰獣
江戸川乱歩推理文庫
江戸川乱歩 孤島の鬼
江戸川乱歩推理文庫
横溝正史 本陣殺人事件


横溝正史 蝶々殺人事件



横溝正史 獄門島



横溝正史 八つ墓村




横溝正史 犬神家の一族




横溝正史 悪魔が来りて笛を吹く




横溝正史 悪魔の手毬唄




甲賀三郎 琥珀のパイプ




甲賀三郎 姿なき怪盗




角田喜久雄 高木家の惨劇



夢野久作 ドグラ・マグラ

現代教養文庫・ちくま文庫
浜尾四郎 殺人鬼



小栗虫太郎 完全犯罪



小栗虫太郎 黒死館殺人事件


現代教養文庫・河出文庫
久生十蘭 顎十郎捕物帳


朝日文庫
久生十蘭 魔都



現代教養文庫・朝日文庫
蒼井雄 船富家の惨劇




大阪圭吉 とむらい機関車




坂口安吾 不連続殺人事件


ちくま文庫・双葉文庫
高木彬光 刺青殺人事件


扶桑社文庫・ハルキ文庫
高木彬光 人形はなぜ殺される


ハルキ文庫
高木彬光 成吉思汗の秘密


ハルキ文庫
高木彬光 白昼の死角



山田風太郎 妖異金瓶梅



廣済堂文庫
山田風太郎 十三角関係



廣済堂文庫
山田風太郎 明治断頭台



ちくま文庫・文春文庫
土屋隆夫 危険な童話


土屋隆夫 影の告発

岡田鯱彦 薫大将と匂の宮



扶桑社文庫
鮎川哲也 黒いトランク


鮎川哲也 黒い白鳥

双葉文庫
鮎川哲也 りら荘事件
仁木悦子 猫は知っていた



ポプラ文庫
福永武彦 加田伶太郎全集



扶桑社文庫・新潮文庫
日影丈吉 内部の真実



現代教養文庫
佐野洋 轢き逃げ



戸板康二 團十郎切腹事件



戸板康二 グリーン車の子供



小泉喜美子 弁護側の証人




集英社文庫
笹沢左保 招かれざる客



陳舜臣 枯草の根




都筑道夫 猫の舌に釘をうて



都筑道夫 三重露出



都筑道夫 血みどろ砂絵



都筑道夫 なめくじに聞いてみろ



扶桑社文庫
都筑道夫 七十五羽の烏



天藤真 大誘拐



中井英夫 虚無への供物



竹本健治 匣の中の失楽



双葉文庫
竹本健治 ウロボロスの偽書




泡坂妻夫 11枚のとらんぷ


双葉文庫
泡坂妻夫 乱れからくり


双葉文庫
泡坂妻夫 亜愛一郎の狼狽



笠井潔 バイバイ、エンジェル



笠井潔 サマー・アポカリプス



笠井潔 哲学者の密室



連城三紀彦 戻り川心中


ハルキ文庫
連城三紀彦 夜よ鼠たちのために




新潮文庫・宝島社文庫
島田荘司 占星術殺人事件



島田荘司 斜め屋敷の犯罪



島田荘司 北の夕鶴2/3の殺人




島田荘司 奇想、天を動かす




岡嶋二人 焦茶色のパステル




岡嶋二人 99%の誘拐



徳間文庫
綾辻行人 十角館の殺人




綾辻行人 霧越邸殺人事件



新潮文庫
綾辻行人 時計館の殺人




法月綸太郎 ふたたび赤い悪夢




法月綸太郎 生首に聞いてみろ




歌野晶午 葉桜の季節に君を想うということ




文春文庫
折原一 倒錯のロンド




折原一 沈黙の教室




ハヤカワ文庫
我孫子武丸 殺戮にいたる病




山口雅也 生ける屍の死




北村薫 空飛ぶ馬




有栖川有栖 孤島パズル




有栖川有栖 双頭の悪魔




芦辺拓 グラン・ギニョール城




麻耶雄嵩 翼ある闇




二階堂黎人 人狼城の恐怖




加納朋子 ななつのこ




京極夏彦 姑獲鳥の夏




京極夏彦 魍魎の匣




倉知淳 星降り山荘の殺人




西澤保彦 七回死んだ男




殊能将之 ハサミ男




大倉崇裕 福家警部補の挨拶




大山誠一郎 アルファベット・パズラーズ




三津田信三 厭魅の如き憑くもの




円居挽 丸太町ルヴォワール




森川智喜 スノーホワイト





点数 46 37 35 28 15
著者 タイトル 創元推理文庫 角川文庫 講談社文庫 光文社文庫 春陽文庫 その他

古典的名作となると、各社が文庫を出していますが、乱歩と「ドグラ・マグラ」は別格として、それ以外で文庫化回数が多いのは、高木彬光『刺青殺人事件』、土屋隆夫『影の告発』それから鮎川哲也『りら荘事件』(角川文庫版では『リラ荘殺人事件』)でした。
そう言えば、筆者の父(戦前生まれ)はミステリなど全く読まない人なのですが、なぜか父の本棚には春陽文庫版の『りら荘事件』が置いてありました。(あまりに日焼けしていたので、筆者が読んだのは、古本屋で自分で買った立風書房の全集版ですが)
『りら荘』や『刺青殺人事件』は今も人気があるので理解できますが、現時点で新刊書店にはほとんど並んでいない土屋隆夫が、かつてはそんなに人気があったというのは、筆者の世代にはちょっと想像できません。

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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
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