備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

『中島みゆき全歌集1975-1986』(朝日文庫)収録作一覧

201811中島みゆき289

中島みゆきの歌詞集はいくつか発売されていますが、提供曲を含めて全ての作品を収録しているのは朝日文庫の「中島みゆき全歌集」のシリーズです。今のところ『中島みゆき全歌集1975-1986』『中島みゆき全歌集1987-2003』の2冊が発売されており、来月(12月)に『中島みゆき全歌集2004-2015』が文庫化される予定です。
今回は、収録作品のタイトルをご紹介します。
この本は、刊行時の1986年を起点に過去へ遡る形で歌が並べられています。これは「Singles」などにも見られるように中島みゆきが好む形のようです。
タイトルの後に※印がつくものは提供曲。提供を受けたアーティスト名です。書籍に記載があるわけではなく、筆者が調べた範囲で書いているため誤りがあるかも知れません。

●1986
最悪
F.O.
毒をんな
シーサイド・コーポラス
やまねこ
HALF
白鳥の歌が聴こえる
儀式(セレモニー) ※松本典子
見返り美人
どこにいても
あたいの夏休み

おだやかな時代
少年たちのように ※三田寛子
愛される花愛されぬ花 ※三田寛子

●1985
つめたい別れ
極楽通りへいらっしゃい
あしたバーボンハウスで
熱病
それ以上言わないで
月の赤ん坊
忘れてはいけない
ショウ・タイム
ノスタルジア
肩に降る雨
孤独の肖像
100人目の恋人
ロンリー・カナリア ※柏原芳恵

●1984
僕は青い鳥
幸福論
生まれた時から
彼女によろしく
不良
シニカル・ムーン
春までなんぼ
僕たちの将来
はじめまして
最愛 ※柏原芳恵
ひとり

●1983
カム・フラージュ ※柏原芳恵
海と宝石 ※松坂慶子
あの娘
波の上
比呂魅卿の犯罪 ※郷ひろみ
美貌の都 ※郷ひろみ
SCENE21・祭り街 ※郷ひろみ
この世に二人だけ
夏土産
髪を洗う女
ばいばいどくおぶざべい
誰のせいでもない雨が

テキーラを飲みほして
金魚
ファイト!
春なのに ※柏原芳恵

●1982
横恋慕
忘れな草をもう一度
煙草 ※古手川祐子
誘惑
やさしい女
傾斜
鳥になって
捨てるほどの愛でいいから
B.G.M.
家出
時刻表
砂の船
歌姫

●1981
すずめ ※増田けい子
悪女
あした天気になれ
あなたが海を見ているうちに
あわせ鏡

バス通り
友情
成人世代
夜曲

●1980
ひとり上手
悲しみに
うらみ・ます
泣きたい夜に
キツネ狩りの歌
蕎麦屋
船を出すのなら九月
エレーン
異国
かなしみ笑い
霧に走る

●1979
りばいばる
ピエロ ※根津甚八
ひとりぼっちで踊らせて
裸足で走れ
タクシー・ドライバー
泥海の中から
信じ難いもの
根雪
片想
ダイヤル117
小石のように
狼になりたい
断崖―親愛なる者へ―

●1978
雨… ※小柳ルミ子
みにくいあひるの子 ※研ナオコ
こぬか雨 ※研ナオコ
20才はたちになれば ※桜田淳子
おもいで河
ほうせんか
窓ガラス ※研ナオコ
さよならの鐘 ※グラシェラ・スサーナ

「元気ですか」
怜子
海鳴り
化粧
ミルク32
あほう鳥
おまえの家
世情
この空を飛べたら ※加藤登紀子
追いかけてヨコハマ ※桜田淳子

●1977
命日 ※日吉ミミ
しあわせ芝居 ※桜田淳子
はぐれ鳥 ※研ナオコ
ふられた気分 ※研ナオコ
サヨナラを伝えて ※研ナオコ
杏村から ※研ナオコ
かもめはかもめ ※研ナオコ
わかれうた
遍路
店の名はライフ
まつりばやし
女なんてものに
朝焼け
ホームにて
勝手にしやがれ
サーチライト
時は流れて
うかれ屋 ※ちあきなおみ
ルージュ ※ちあきなおみ
帰っておいで ※ちあきなおみ
笑わせるじゃないか ※山内恵美子
ほっといてよ ※山内美恵子

●1976
彼女の生き方
トラックに乗せて
流浪さすらいうた
真直な線
五才いつつの頃
冬を待つ季節
03時
うそつきが好きよ
妬いてる訳じゃないけれど
強がりはよせョ ※研ナオコ
明日靴がかわいたら ※研ナオコ
わすれ鳥のうた ※研ナオコ
あばよ ※研ナオコ
夜風の中から
忘れられるものならば
LA-LA-LA ※研ナオコ
雨が空を捨てる日は ※研ナオコ
あぶな坂
あたしのやさしい人
信じられない頃に
ボギーボビーの赤いバラ
海よ
踊り明かそう
ひとり遊び
悲しいことはいくつもある
歌をあなたに
渚便り
こんばんわ
強い風はいつも

●1975
時代
傷ついた翼
アザミ嬢のララバイ
さよならさよなら
あたし時々おもうの

中島みゆき全歌集1975-1986 (朝日文庫)
中島みゆき
朝日新聞出版
2015-11-06


2018年12月 文庫新刊おすすめ情報

来月の文庫新刊をご紹介します。(書名からのリンク先はAmazon)

朝日文庫
中島みゆき全歌集2004-2015
中島みゆき 本体予価:1015
2015年に刊行された「全歌集」第3弾の文庫化。それまでの2冊も文庫で持っている筆者は単行本が出たときからずっと文庫版の発売を待っていたのでした。やっと買えるぞ!

河出文庫
血みどろ臓物ハイスクール
キャシー・アッカー/渡辺佐智江訳 本体予価:1566
20年くらい前に白水社から出た小説ですが、一部で大変な話題になりました。すっかり忘れていたところ、まさかの文庫化。ホラーっぽいタイトルですが全くそんな内容ではありません。ひとことで言えば奇書ですね。

光文社文庫
地面師 昭和ミステリールネサンス
梶山季之 
結城昌治に続く光文社文庫の「昭和ミステリールネサンス」。昭和を代表する流行作家・梶山季之の登場です。この人の小説は「せどり男爵数奇譚」しか読んだことがないので、「地面師」というのがどんな小説なのか全然知りませんが、とりあえず買うつもり。

創元推理文庫
落日の門連城三紀彦傑作集(2)
連城三紀彦/松浦正人編 本体予価:1728
夏に出た「六花の印」に続く傑作選第2弾。収録作品はまだ公表されていませんが、とりあえず一家に一冊のシリーズですね。



綾辻行人、泡坂妻夫、原尞、蓮實重彥……漢字変換困難な人名について

パソコンで文章を書いていると、正確に変換できない漢字というものにしばしば出くわします。

以前は「綾辻行人」がその代表でした。
ということを書くと、特に難しい文字は含まれないのにどうして? 「以前は」ってどういうこと? といろいろ疑問の湧く方もあるかも知れません。
問題は「辻」の字あります。

綾辻行人の「辻」の部首・しんにょうは点が2つあります。出版社から刊行されている著書は全て点2つの表記になっています。

201811綾辻行人283

このブログを読まれている方の画面でも、パソコンであればおそらくは点2つのしんにょうが表示されているかと思います(スマホだと機種によっては点が1つになっているかもしれません)。
しかし以前、15年くらい前までは、パソコン上ではどうやっても点1つの「辻」しか表示できなかったのです。
「綾辻行人」という名前は島田荘司によって姓名判断で決められているため、画数が非常に重要です(といっても、島田さんが想定したのは点1つだったのに、綾辻さん本人の判断で点2つに変えてしまったという話もありますが)。
このため、以前は点1つでは気持ちが悪いので、なんとか点2つにできないものかと考えていたのが、ある時点から急にできるようになってしまったわけなのです(逆に現在はパソコンでは点2つの辻しか表示できなくなりました)。

なぜこのようなことが起きるのかといえば、この「辻」という文字が常用漢字ではなく、2000年に「表外漢字字体表」が策定されるまで、表記に揺れがあったためです。2000年になって字体に一定のルールが設けられたことからJISの字体が整理され、「辻」のしんにょうについては点1つから点2つに変更されたのでした。
綾辻さんにとっては良い変化だったわけですが、点1つの辻さん(世の中圧倒的にこっちの方が多い)にとっては、迷惑な話なわけです。人名についてはJISとは関係なく、人名用漢字表で許容される範囲内で、それぞれの人に正しい字体というものがあるのです。

さてしかし、作家のペンネームというものは人名用漢字表に縛られるわけではないため、やはり変換困難な名前は多数存在します。
泡坂妻夫もその一人。
「泡」の「己」の部分は、著書では実際には「巳」となっています。

201811泡坂妻夫284

これは旧字体ですね。
パソコンの漢字表は例えば「昼」と「晝」、「当」と「當」のようにまるきり違う字体になってしまったものは新旧の文字が用意されているのですが、「泡」の旁が「己」か「巳」かいった程度の違いだと新字体しか用意されていません。このため、泡坂妻夫は残念ながらパソコンでは正確に表記でない作家となってしまったわけです。
ちなみに泡坂妻夫がデビューした時点で、すでに常用漢字では「己」になっていました。デビュー作を掲載した雑誌「幻影城」が、旧字体で手書きされたペンネームを正確に活字に起こしたため、この文字が定着したということなのでしょう。

201811泡坂妻夫286
↑デビュー作を掲載した「幻影城」の裏表紙(部分拡大)。

さて、パソコンで漢字変換が困難な作家の代表といえばハードボイルド作家・原尞。

201803原尞188

「尞」という文字はいかなる漢字表に載っていないため、本来は日本では使用しない文字とされています。実際、これは作家のペンネームです。
このため、「尞」を表示できる端末は機種が限られており、パソコンでは「原りょう」と書かれたりします。
ところがこの文字、実は20年以上前、Windows95の時代からマシンによっては表示できたんですよね。OSの問題ではなく、まさに機種によっては、という状態だったのですが。友人のPCでは表示できないのに、筆者の愛機では表示できました。
なんでだろう? 未だに事情が謎です。

さて、なにげに変換が難しい人名が映画評論家・蓮實重彥氏です。
小さい文字だとよくわからないかも知れませんので、拡大してみます。

蓮實重彥

上記は正確な表記ですが、端末によっては表現できていないかも知れません。
この名前をぼんやりした人が変換すると以下のような文字になります。

蓮実重彦

どこが違うかわかりますか?
ポイントは3つ。
1.「蓮」のしんにょうの点が2つ。
2.「実」が旧字体。
3.「彦」の上の部分がバッテン。

201811蓮實重彦287

そろそろ文字コードについて調べるのが面倒になってきたので省略しますが、「蓮実重彦」あるいはせいぜい「蓮實重彦」としか変換できないこの名前、正確には「蓮實重彥」です。
「蓮」と「彥」についてはパソコンで扱えなくてもおかしくない文字なのですが、どちらも現在は表現できるマシンが増えています。さすが元東大総長。
ちなみに澁澤龍彥の「彥」も上の部分はバッテンが正解です。

最後に、変換困難な名前の極北といえば、この方かなと思います。
評論家の絓秀実氏です。筆者にとってのバイブル「昭和の劇」の共著者でもあります。

201811昭和の劇288

この「絓」(すが)という文字。表現できる端末が現れてきたのはつい最近のように思います。
この方も本名は「菅秀実」氏ということで、「絓秀実」はペンネームです。
それにしても、この「絓」という文字、他で使われているのは見たことがなく、この方専用の文字という印象があります。こういうのはかっこいいですよね。


月見山と「悪魔が来りて笛を吹く」

DSC03191

当ブログで何度もしつこく話題にしている「悪魔が来りて笛を吹く」の話をまた。
以前の記事:
横溝正史「悪魔が来りて笛を吹く」の舞台をGoogleストリートビューで巡る
映画「悪魔が来りて笛を吹く」(1979年・東映)のこと

先日、天気の良い休日に須磨・月見山近辺をぶらぶらする機会があり、「悪魔ここに誕生す」の場所を探してきました。

DSC03187

以前の記事を書く際にストリービューで見当はつけていたため、すんなりとたどり着きました。
風光明媚な住宅街ですが、フェンスに囲まれた広大な市有地が広がっています。このあたりが玉虫伯爵邸跡地に該当すると思われます。
それにしても、かなり高級住宅街と思われる雰囲気ですが、なぜこんなにも広い更地があるのでしょう。やはり、あれだけ凄惨な事件の発端、悪魔の誕生地ということで、事故物件扱いなんでしょうか(?)。

さて、以前の記事でもご紹介した映画「悪魔が来たり笛を吹く」(1979年・東映)での、月見山のシーン。

vlcsnap-00015

夜間のシーンなので分かりづらいのですが、高台にある伯爵邸跡地の遠景に海が広がっています。
実際に月見山に立ってみると、このショットの構図がどれだけ正しいか、よくわかります。
現地の写真の遠景にも海が見えます。また、本記事の冒頭に掲げた写真は月見山の交差点から撮影したものですが、街全体が斜面にあることがおわかりいただけると思います。
映画の該当シーンは、この位置関係が正確に再現されています。

ちなみに、先日のNHK版の該当シーンはこちら。
screenshot006

また、1977年毎日放送製作の「横溝正史シリーズ」版はこちら。
vlcsnap-00016

いずれも原作を読んだだけであれば、特に違和感はないのですが、実際の月見山の景色とは合致しません。
映画版を撮影したがロケなのかセットなのかよく知りませんが、須磨・月見山をよく知っているスタッフによって作られたシーンと思われます。

ついでに須磨寺も参拝してきました。
金田一耕助が宿泊した「三春園」のモデルとなった旅館・寿楼臨水亭。

DSC03183

関連記事:
横溝正史「悪魔が来りて笛を吹く」の舞台をGoogleストリートビューで巡る
映画「悪魔が来りて笛を吹く」(1979年・東映)のこと

金田一耕助映画のパンフレット(その他昭和編)

先日の記事に続いて、昭和50年代の金田一耕助映画のパンフレットご紹介です。

といっても、やはりあんまり書くことはないんですよね。どれも他愛ない内容です。
ほぼ書影のみのご紹介です。

201811八つ墓村278
野村芳太郎監督・渥美清主演「八つ墓村」1977年・松竹

201811悪魔が来りて笛を吹く279
斎藤光正監督・西田敏行主演「悪魔が来りて笛を吹く」(1979年・東映)

201811金田一耕助の冒険280
大林宣彦監督・古谷一行主演「金田一耕助の冒険」(1979年・角川春樹事務所)
古谷一行によるパロディ映画。表紙ですでに「犬神家」のパロディをやっているなど、今の金田一ファンが見てもかなりツボを押さえて、当時の横溝ブームを捉えています。原作は一応、短編集「金田一耕助の冒険」収録の「瞳の中の女」ということになっていますが、一応、です。

201811悪霊島282
篠田正浩監督・鹿賀丈史主演「悪霊島」(1981年・角川春樹事務所)
このパンフレットには「横溝正史原作映画映画化リスト」というものが掲載されています。
インターネットなどなかった当時、このリストをどれほど重宝したことか! 中学生の頃に古本屋で買ってから、毎日毎日舐めるように眺めていました。作る方も大変だったのではないかと思いますが、映画関係者ならそうでもないのでしょうか。
片岡千恵蔵の金田一は当然のこと、人形佐七までフォローしている充実したリストです。
ところで、久しぶりに眺めていて、一つだけ抜けているものを発見しました。
こちらです。

お役者文七捕物暦 蜘蛛の巣屋敷 [DVD]
中村錦之助
東映ビデオ
2009-05-21


このDVDが出たとき、「こんな全然知らない横溝映画があったとは!」と驚いたものですが、なんで知らなかったのかというと、このパンフレットに掲載のリストから漏れていたからなんですね。今になってようやくそれに気づきました。
ちなみにこちらの映画の脚本は千恵蔵版金田一シリーズや多羅尾伴内シリーズで知られる比佐芳武です。

201811蔵の中281
高林陽一監督「蔵の中」(1981年・角川春樹事務所)
金田一映画ではありませんが、横溝正史の戦前の短編を映画化したもの。「悪霊島」と同時上映でした。DVDが発売されて初めて鑑賞しましたが、うーん、男に見える……


関連コンテンツ

スポンサーリンク
profile

筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
ブログ更新通知:https://twitter.com/squibbon19

プロフィール

squibbon