備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

中村義洋監督「残穢」(2016年)主人公の本棚に並んでいたのは?

前回の記事にも書いたとおりNetflix初体験中なわけですが、当初の目的である「呪怨」と「アイリッシュマン」を片づけたあとは、これまでなんとなく見逃していた映画をボチボチと観ています。

そんな一つが2016年の「残穢」。言わずとしれた小野不由美原作のホラーです。
原作は刊行されてすぐに読んでいて、映画もそのうち観よう、とは思っていたのですが、そのままになってしまっていました。
せっかくなのでこの機会に鑑賞したのですが、まあ今更すぎるので詳細な感想は省略するとして(ひとことだけ言っておくと、予想していたよりはかなり怖くて、楽しめました!)、本筋と関係ない部分で一点、気になったことが。

このシーンです。
(ちなみ違法にスクリーンショット撮ったわけではなく Android のアプリだと普通の手順で撮れます)

Screenshot_20201007-225020

橋本愛演じる女子大生が、隣室の物音に気づいてふすまを開けるシーン。奥に本棚が見えます。
スクリーンショットだとやや画像が荒くなってわかりづらいのですが、実はHD画質でテレビの画面で見ると書名がわかります。

Screenshot_20201007-225020big

といっても全部わかるわけではありませんが、読み取れたものを並べると、下記の通り。







終着駅殺人事件 (カッパ・ノベルス)
西村 京太郎
光文社
1980-07


悪魔の人質 (カッパ・ノベルス)
笹沢 左保
光文社
1982-11


なんだなんだこの並びは。
一応、時代設定は映画公開とほぼリアルタイムということになっているようですが、これはちょっと、今どきの女子大生の本棚じゃないですね。(笹沢左保と西村京太郎は完全にオジサン向け!)
小野不由美の旦那さんである綾辻行人の作品があるのはわかりますが、ほかの作家は全く女子向けでないうえ、発売時期も古すぎる。
さらに、このカッパ・ノベルス推しは誰の趣味なんでしょう?
といっても、折原一、島田荘司、綾辻行人のこの辺の作品は、私もカッパ・ノベルスでリアルタイムで読んでいたため、妙に懐かしい気分になりました。(背表紙をチラッと見ただけでピンときたのは自分も持っていた本だからです)

という風にノベルスは謎のラインナップですが、一方、単行本は女子大生の蔵書として比較的まともです。

Another
綾辻 行人
角川書店(角川グループパブリッシング)
2009-10-30








第十の予言
ジェームズ レッドフィールド
角川書店
1996-06


いや、訂正。佐々木譲「ワシントン封印工作」は変だ。この並びでなぜ佐々木譲が入ってくる??

まあ、性別や年齢で読む本を規定する必要はなく、女子大生らしくない、というのは全くの私の主観というか、言いがかりに近いものではあるのですが、とはいえやはり不思議なラインナップです。
現場に本好きのスタッフがいたら、「これはちょっとおかしいのでは?」と監督へ進言することになるのでは、と思われますが、一方で妙に筋は通っていて、全く本のことを知らない人がデタラメに並べた本棚とは思えない。
セットではなく、誰かの家で撮影して、そこにもともとあった本棚へ女子大生っぽい本をちょこちょこ追加してみたという感じなんでしょうか?

実を言えば前述のとおり、私はここに並んでいる折原一、島田荘司、綾辻行人のノベルス作品はリアルタイムで読んでおり、単行本の方も「ワシントン封印工作」だけは文庫で読みましたが、あとは単行本で読んでいます。妙に自分の趣味ともかぶっている。(いや一つだけ、「第十の予言」は読もうと思ったことすらありません)

いろいろと思い巡らせてしまいますが、Netflixではメイキング映像は配信していないうえ、もしメイキングを見たとしても本棚の選書については触れていないだろうと思いますので、これは全く本編中の怪奇現象以上に謎です。

マーティン・スコセッシ監督「アイリッシュマン」(2019年・Netflixオリジナル)

遅ればせながら、初めてNetflixに入ってみました。
15年くらい前までの独身時分は狂ったようにDVDを買いあさり(実際、狂っていた)、1000枚以上のコレクションを自宅の棚に並べていたので、正直なところ動画配信サービスというものがこの世に現れてもあまり必要を感じていなかったのですが、そのうちにNetflixオリジナル作品などというものが作られるようになり、それがマーティン・スコセッシ監督だとか、「呪怨」の新作ドラマだとか、「ダーク・クリスタル」の続編だとか、「なんですと!?」と色めき立たざるを得ないニュースが次々舞い込むようになったため、試しに一ヶ月入ってみるか、ということにしたわけです。

さっそく見たのは「呪怨」の新作で、純粋に幽霊が見たかった筆者としてはうーん、ちょっと違う、と思わざるを得なかったのですが、とはいえ久しぶりに「高橋洋のメジャー作品」を観られて、それは嬉しかったです。

さて、肝心の「アイリッシュマン」。
マーティン・スコセッシのギャング映画です。なおかつ、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシの共演という、ギャング映画好きであれば聞いただけで冷静ではいられなくなってしまう布陣ですが、なんとこんな重要な映画がNetflixに入らないと見られないとは!
アメリカでは11月にCriterion CollectionからBlu-rayが発売されるとアナウンスされていますが、日本でディスクが発売されるかどうかは全くわからないため、これはなんとか妻の了解を得てNetflixに入るしかない、とずっと機会を伺っていたわけです。
結局は、「呪怨」にも後押しされ、妻の了解を得ることなくゲリラ的に契約したわけなのですが、月額880円(税込)の元は十分に取れました。非常にすばらしい映画でした。

と言っても、実は一回目に見た時点では、まるきりちんぷんかんぷんで、いったいどんなストーリーが進行しているのか、さっぱり理解できかったのです。
この映画は実話をベースにしているということなのですが、日本人には馴染みのない人物のため、話の先を読むことができません。しかし、ラストがどうなるかを観客が知った上で鑑賞することが前提になっているのか、非常に複雑な構成で物語が展開しているのです。
まず、現代(といっても2000年代?)の主人公が老人ホームらしき場所で、ギャングのヒットマンとして過ごしてきた人生の回想を始めるのですが、この回想シーンでは2つの時制が並行して語られます。
1975年のとある一日と、その日へと至る1950~70年代の物語。これが交互に描かれ進行していくのですが、ラストに待ち受けるものを知らないため、いたずらに話をややこしくしているようにしか見えません。
なおかつ混乱に拍車をかけるのが高齢の俳優陣。
ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、全員が70代後半ですが、それぞれの40代あたりからの人生を演じています。
このため特殊メイクではなく、VFXを駆使して表情を若返らせており、実際にこの技術は驚異的で「あれ?むかし撮った映像を流用している?」と思ってしまうくらいなのですが、さすがに体の動きは全員がおじいちゃん。デ・ニーロが近所の食料品店へ殴り込むシーンなんかは「こんな動きののろいじいさんにやられちゃうなんて??」とかなり違和感があります。
どのシーンを見ても表情以外は全員おじいちゃんなので、いつの時代の話をしているのか、だんだんわからなくなってきます。
おそらくは、元ネタになっている実話については、アメリカ人であればある程度の知識があり、それを前提に話を進めているようですが、こっちはそんなこと知ったこっちゃありません。

そんなわけで、「ああ、わざわざNetflixに入った甲斐はなかったなあ」なんてことを思いながら3時間半も何を見ているのかよくわからない状態を我慢していたのですが、ラストでぶったまげました。
なるほどなるほど、これはそういう話だったのか!
いやこれ、別に何かが隠されていたわけでもなく、初めからこの結末へ向けて真っ直ぐに話は進んでいたのですが、こっちの知識不足のせいで何が何やらワケがわからなくなっていたのでした。
一度見終わると、「これはもう一回、おさらいしなければ!」という気分になってしまい、直ちに冒頭へ戻ってもう一回見直しました。
3時間半を2回で、合計7時間(もちろん、3日間くらいに分けて観ています)。
しかし、2回目の3時間半はあっという間でしたね。
複雑に思えた構成も、ラストの悲劇へ向けて盛り上げるためにはこれしかない、という展開だとわかります。
全員おじいちゃんという点も、2回目は全然気になりませんでした(単に慣れただけ、という気もしますが)。それどころかラストへ近づくにつれ、名優たちの表情、仕草による感情表現が胸にささってきます。

というわけで、この映画については、実話の知識を頭へ叩き込んでから見るか、もしくは2回見ることを強くおすすめします。
そうなると、劇場ではなく配信という形での公開はこの映画にとっては非常に良かったということになります。
たぶん、劇場で見ていたら中盤はほとんど寝てしまって「ああ、なんかわけがわからなかったな」で終わってしまっていたのではないか、という気もします。

Netflixはひとまずは一ヶ月だけで、また見たいものが溜まってきたら再開しようと思いますが、ひとまず契約終了まであと数日あります。もったいないので、「アイリッシュマン」はもう一回見ておこうかな、と思っています。それだけ見れば、もしかして将来的に日本版Blu-rayが発売されても「もう十分見た」と我慢できるかな、と思います。

桂千穂✕掛札昌裕『本当に面白い怪奇&ミステリー 1945⇒2015』(メディアックス・2015年)

202009怪奇&ミステリー027

先月、脚本家の桂千穂氏が亡くなりました。
「HOUSE」「ふたり」などで組んだ盟友というべき大林宣彦監督と相前後してなくなったということになりますが、実は筆者は、氏の業績については数多くの名脚本より、晩年に立て続けにメディアックスからムックで刊行された「戦後映画の語り部」 という一面が強く印象に残っています。
ズラッと並べるとこんな状態。(かなり出ていたので、見落としがあるかもしれません)









新東宝は“映画の宝庫”だった
メディアックス
2015-03-02










いずれも、表紙にバンと「桂千穂」と出ていても、ムックなので一人で執筆しているわけではなく、また編者というわけでもなく、メインライターとして参加しているだけのものがほとんどですが、とはいえ読んでみると、やはり表紙にバンと名前を上げたくなるのも納得の活躍ぶりです。

このシリーズで、筆者が最も気に入っているのは2015年11月に出た「本当に面白い怪奇&ミステリー 1945⇒2015」ですね。
「恐怖奇形人間」の脚本家・掛札昌裕との共著という扱いになっていますが、この二人で戦後日本のミステリ映画を片端から語りまくってます。
表紙に「みんなが知っている怪奇映画から〝誰も知らない〟ミステリーまで」とありますが、実際のところ全然知らなかった映画ばかり!
神津恭介が登場しない「刺青殺人事件」とか、フィルポッツ「闇からの声」が原作の「悪魔の乾杯」とか、「そんな映画があったの!?」と驚くようなものがずらりと並びます。
なおかつ著者2人はそれらを劇場公開時に見ていて、「観客の反応はこんな風だった」というような思い出話を織り交ぜながら語るので、読み物としての興味も、資料価値も一級の仕上がり。
「犬神家の謎 悪魔は踊る」とか「獄門島・獄門島解明編」のように、有名ではあっても、もはやフィルムが失われている映画についても当時見た感想を述べているのですから、最強です。

というわけで、ともかく亡くなる前にこれだけのことを記録に残してくださいまして、本当にありがとうございました、という感想しかないのですが、筆者としてはこの本は死ぬまで手元に置いて、定期的に読み返すことになるだろうと考えています。
だって、今後、こんな本を書ける人はもう絶対に現れないから。
刊行から早くも5年も経っていることに、この記事を書きながら初めて思いが至りましたが、ムックで出したキリにしてないで、改めて単行本化してもよいのでは、と思っております。



結城昌治「軍旗はためく下に」復刊&深作欣二監督映画DVD発売!

202007軍旗はためく下に026

結城昌治の直木賞受賞作「軍旗はためく下に」。
それぞれに思惑を秘めた人物へのインタビューを繰り返し、じょじょに戦場で起きた真実が明らかになっていく……という、芥川龍之介の「藪の中」風の物語で、筆者としては見事なミステリだと思っていますが、社会派小説として人気があります。

これまで中公文庫が何度か再刊を繰り返していましたが、今月また「増補新版」と銘打って刊行されます。

軍旗はためく下に-増補新版 (中公文庫 ゆ 2-23)
結城 昌治
中央公論新社
2020-07-22


さて、この小説は深作欣二によって映画化もされています。
新星映画という、詳しいことはよく知らないのですが、東宝から独立した監督たちによるプロダクションで製作され、東宝が配給した映画です。
Amazon Primeでも配信されていて見るのは難しくないのですが、なぜかこれまで日本ではDVDが発売されていませんでした。
筆者は15年くらい前にアメリカで発売されたDVDを持っていたのですが、リージョン1のプレイヤーを捨ててしまってから(正確には、妻に捨てられてしまってから)、ずっと見られませんでした。
深作欣二ファンとして国内盤の発売を待ち望んでいたのですが、あまり「東宝映画」という印象がなかったため、不覚にもこちらが発売されたときには見逃していました。



気づいたときには売り切れたあとで、これは本当にガッカリしましたね(しかし、転売屋からは絶対に買わない)。
かくなる上は、東宝が正規にDVDを発売してくれるのを待つしかなかったわけですが、とうとう出ますよ!



しかも価格は2000円! デアゴスティーニのはむしろ買わなくてよかった!

原作を読んだのも20年くらい前、映画を見たのも10年以上前、という状態なので、果たしてどれくらい原作に忠実だったか、細かいことは正直、何も覚えていないのですが、けっこう原作通りだったよなあ、という気がしています(きわめて曖昧)。
結城昌治ファン、深作欣二ファンはこの機会を逃さず、文庫とDVD、両方を買っておかれることをおすすめします。

深作欣二の人気作で、まだDVDになっていないのはこれで残すところ「黒蜥蜴」くらいですね。

学習漫画「日本の歴史」を買うなら、おすすめはどれ?【2020年最新情報】人気5大シリーズ+αを比較

小学館日本の歴史

最終更新日:2020年10月27日

はじめに

日本の歴史をマンガで学べる学習漫画。あちこちからシリーズが出ています。
わが家でも小学生の息子に買ってやるため、果たしてどれを買えばよいのか、各社版の特色を調べてみました。

現在、書店に並んでいる日本史の学習まんがのうち、特に人気があるのは小学館、集英社、角川、学研、それに2020年7月から参戦した講談社という5社です。
なお、掲載している情報は改訂されたり新刊が追加されたりで、価格やセット内容など随時変わってきます。なるべくフォローするようにしていますが、最新情報はリンク先のAmazonで確認していただければと思います。

集英社 学習まんが 日本の歴史 全20巻+2020年版特典セット【2冊分お得な特別定価】(全面新版 学習漫画 日本の歴史)
あおき てつお
集英社
税込19,800円
2019-11-12





これらのシリーズは一冊ずつバラバラでも買えますが、どうせなら箱入りセットで買うことをおすすめします。


というのは、時期によって異なるのですが、セットで買うと特別価格になったり、セットだけに限定の付録がついていたりするためです。家庭での保管にも箱に入っていたほうが何かと楽です。
筆者としては、書店でバラ売りをしているのは「内容確認のための見本」で、買うならセットが当然、と思っています。
また、小学生の親御さんの中には「うちの子は歴史にはあんまり興味ないかな……」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、それは大丈夫です。
中学生・高校生になったら高校受験・大学受験のために確実に読みます。また、この記事で紹介するシリーズは、いずれも率直に言って大学受験対策までカバーできます。大学受験で出題される日本史というものは、本格的な歴史好きからしたら基本中の基本のことばかりなんで、子ども向けとはいえ、この手のシリーズを一通り読んでおけば、分厚い参考書を必死で暗記するより楽に勉強できるわけです。
春休み、夏休みなど長期休暇前に購入して自宅学習するのもよいでしょう。

それでは、それぞれの特色を見ていきましょう。

小学館「学習まんが少年少女日本の歴史」


公式サイト:http://www.shogakukan.co.jp/pr/manganichireki/

小学館は、学習まんがの老舗であり、ド定番と言えるシリーズだと思います。
実は筆者も子どもの頃に読んでいたので、かなり思い入れがあります。
1981年に刊行されてから、細かい改訂は何度か行われていますが、大きくは刷新していません。このため、現在の子どもから見ると若干イラストが古いと思われるようですが、これだけ長く読み継がれているのは、それだけ完成度が高いからだといえます。
人物の描き分けや画面の構図などは肖像画や絵巻物、近代であれば写真などを参考に描かれており、高校生になってから日本史の図録を見て、「あ、これは学習漫画のイラストと同じだ」と気づくことが何度もありました。⇒この辺の話、別のページにまとめてみました。学習まんが「少年少女日本の歴史」(小学館)はここがスゴイ!
また、他社に比べるとかなり細かいコマ割りで、情報量が多く感じられます。
筆者の兄などは、このシリーズをさんざん読み込んだ知識だけで大学入試を済ませて、今は中学校で社会科の教師をやっているほどです。
価格は他社より高めですが、自信を持っておすすめできます。例の「ビリギャル」も、慶応大入試をこれで済ませたそうです。

なお、上記「24巻セット」は、本編22冊に「人物事典」「史跡・資料館事典」という補巻2冊が加わったものです。
2018年10月に新刊として追加された「22巻 平成の30年」を含みます。



また、電子書籍のシリーズも出ています。大きめのタブレットをお持ちの家庭にはこちらもおすすめです。


(なお単行本最新刊の22巻「平成の30年」は電子書籍では未刊。このリンクは本編全21冊に別巻2冊を加えた23冊セットです。電子書籍の価格は変動するため正確なところはリンク先のAmazonで確認していただきたいのですが、たいていはセットで税込14,904円と、単行本よりもかなり安い設定になっています)

集英社「新版 学習まんが 日本の歴史」


公式サイト:https://www.shueisha.co.jp/rekishi/

集英社は、2016年末に内容を全面的に刷新したばかりです。つまり、各社のなかで最も新しい内容です。最新の研究成果・知見を取り入れた内容と言えます。
また、最も大きな特長は現代史に力を入れている点です。
他社版は現代史の部分は昭和・平成をまとめて1~2冊というところですが、集英社版だけは昭和史3冊、平成史1冊と、かなりの充実です。
平成史なんて子どもに読ませる意味あるの?と大人は思ってしまいますが、バブル崩壊、阪神大震災、構造改革、グローバル化、インターネットの普及、テロとの戦争、リーマンショック、東日本大震災と、もはや「歴史」として学ばなければいけないことは山のようにあるわけです。
表紙絵は各巻、少年ジャンプの人気漫画家たちが競演していますが、本編は別の漫画家が描いていますので、その点はご注意ください。
また、小学館版が「学習」を重視しているのに対し、マンガとしてのストーリー展開を重視しており、絵柄を含めて読みやすさを狙っています。コマ割りはかなり大きめです。
全巻セットで買うと、バラで買うより価格がお得になります。

また毎年、数量限定で価格はそのままの特典付きセットも発売されています。
2020年版は『はって楽しむ! 日本史イラストマップ』。「訪ねてみたい! 城と祭り」&「歴史をつくった偉人たち」の豪華両面仕様。「A2判の大判サイズ&合成紙製なので、お風呂にはっても楽しめます」……とのことです。(2021年版特典セットについては2020年10月時点で発売の情報は出ていません)



KADOKAWA「角川まんが学習シリーズ 日本の歴史」


公式サイト:http://shoten.kadokawa.co.jp/sp/mangagakushu/nihonnorekishi/

角川版は、各社の中で唯一、ソフトカバーです。また他社が菊判であるのに対し、B6版と一回り小さいサイズで、冊数もコンパクトにまとまっており、場所を取りません。
冊数は少ないものの、1冊あたりのページ数は多く、実は総ページ数では小学館、集英社を上回っています。
にもかからず、価格が最も安いシリーズでもあります。
このような圧倒的なコストパフォーマンスで人気があり、日本史の学習漫画で一番よく売れているのはこの角川版なのです。
筆者的には、イラストがちょっとキラキラしすぎで、コマも大きめじゃないか、と思うのですが、どうなのでしょう。今の子どもには小学館版の野暮ったい絵よりも、こちらの方が受けているようです。
どちらかというとストーリー重視ですが、集英社版がマンガとしての「面白さ」を狙っているのに対し、角川版は歴史の「流れ」を捉えようとしており、学校の授業を補完するのにうってつけの内容です。
さらに角川版は、本編15冊のほかに、別巻として「よくわかる近現代史」という全3冊のシリーズが出ています。歴史学習ではどうしても近現代史が手薄になりがちですが、そこもバッチリ押さえられるというわけです。
他社版で揃えた場合でも、この別巻だけ購入して近現代を補うこともできます。



「よくわかる近現代史」を含めた箱セットもあります。別巻を含めても、小学館・集英社より安い。




また毎年、中学受験に役立つ特典をつけた限定セットが発売されています。定価は上記セットと同じなので、おまけの分だけ単純にお得です。2020年の特典は「豪華3大特典! 戦国&近現代史すごろくと戦国武将のぼり旗しおり定規5枚。戦国&近現代史すごろくで遊びながら学ぼう! しおり定規5枚セットは織田信長・豊臣秀吉・明智光秀・武田信玄・真田幸村ののぼり旗デザイン! まんがを読みこんですごろくで遊び倒したら、キミも日本史マスター!」……とのことです。(2021年版特典セットについては2020年10月時点で発売の情報は出ていません)




学研「NEW日本の歴史」


学研版の一番大きな特長は、もともと学習参考書を手がけている出版社だけに、巻末資料が充実していることです。資料部分がかなりの割合を占めており、きちんと読み込めば、ほかの参考書は不要になるでしょう。小学館版が漫画の中で学習しようとしているのに対し、ストレートに学習参考書的資料がついているわけです。
巻数はコンパクトに収まっており、同じくハードカバーを出している小学館・集英社より安い価格になっています。刊行時期も新しいため、フルカラーで見やすい絵柄です。
別巻2冊はバラでも買えますが、箱セットを買うとついてきます。こちらも資料が充実した内容で、図鑑好きの子どもはずっと眺め続けることでしょう。
2020年6月に5大特典(金印レプリカ・平成史・歴史年表・寝る前5分暗記ブック・特製エコバッグ)をつけたセットが発売されたました。学研らしく、中学・高校受験を意識した特典と言えます。

講談社「学習まんが 日本の歴史」


公式サイト:http://rekishimanga.jp/

講談社からも新しいシリーズ「学習まんが 日本の歴史」が2020年7月に刊行されました。
角川のシリーズと同じく、B6判ソフトカバーのコンパクトなサイズです。しかし、既刊のシリーズに対抗してか、総ページ数は他社を上回り、ナンバーワンです。
まず目を引くのは各巻冒頭の図録です。このコーナーだけでなかなかのボリュームがありますが、ビジュアルでその巻の内容を予習し、その上でマンガ本編に入っていく流れとなっています。
また、ページの枠外に「マメ知識」として受験に役立つ内容や歴史に興味を持てるトリビアが書かれているのですが、これがなんと全ページに書き込まれていて、情報量は膨大。中学受験、高校受験、大学受験まで視野に入れて作られているようです。
また、他社はほぼ無名の漫画家を起用しているのに対し、講談社の週刊・月刊漫画誌で活躍した経験のある人気作家を起用しており、画力でも他のシリーズを圧倒しています。
まだ刊行されたばかりですが、これはもしかすると、現時点の王者・角川を超える人気シリーズになるかも、と思いました。
全巻セットには特典として「歴史人物データカード全120枚」「日本史重要人物イラスト年表」がつきます。

まとめ

というわけで、各社版を簡単におさらいすると
小学館:菊判ハードカバー。時代考証が手堅く定評がある。学習重視。大学受験まで使える。
集英社:菊判ハードカバー。最新版の内容。近現代史が充実。ストーリー展開重視。
角川:B6判ソフトカバー。場所を取らずコンパクトで価格も安い。別巻の近現代史もあり。歴史の流れを重視。
学研:菊判ハードカバー。巻末資料が充実。学習重視。参考書の代わりになる。
講談社:B6判ソフトカバー。価格を抑えつつも、マメ知識欄など情報量が多く、ページ数も最大。著名な人気漫画家を起用。

まあ、正直なところ、熱心に読み込むお子さんであれば、「学習」という観点ではどれを買ったところでたいした違いはないかと思います。
筆者としては個人的な思い入れがあるということで、やはり小学館をベストと考えています。
イラストの雰囲気については、実際のところを確認されたい場合は、それぞれの公式サイトで試し読みをでき、また無料のお試し版を電子書籍で読めるものもあります。







Amazon商品ページ一覧表

Amazonで「日本史学習まんが」を検索すると、大量の商品がヒットします。ここに紹介したシリーズでもいろいろバージョンがあります。
混乱される場合もありますので、ここまでの記事と重複する部分もありますが、簡単にまとめてみます。

小学館
小学館は他社のように特典をつけたりしていません。ベーシックなセット1種類だけで勝負しています。価格はバラ売りでもセット売りでも変わりません。

 2018年に発行された「平成の30年」を含む最新セット。

 「平成の30年」が刊行される前のセット。上記「24巻セット」は「23冊セット+平成の30年」ということになります。現在は中古のみ出品されていますが、安く入手できる場合があります。

集英社
集英社のセットは書籍の内容はすべて同じで、毎年特典が変わっています。
価格はずっと同じですが、売り切れたセットについては、中古価格で出品されています。
単品で揃えるより、セットで買ったほうが安くなります。

集英社 学習まんが 日本の歴史 全20巻+2020年版特典セット【最新版】
 2019年11月12日発売の最新セット。特典は『はって楽しむ! 日本史イラストマップ』。「訪ねてみたい! 城と祭り」&「歴史をつくった偉人たち」の豪華両面仕様。A2判の大判サイズ&合成紙製なので、お風呂にはっても楽しめます、とのことです。

 2018年末刊行セット。特典は『わくわく、冒険! 日本史マスター3点セット』。くり返し遊びながら学べるクイズブックと、お風呂にも貼れるポスター、昔の地名がわかるクリアファイル、ということです。

 2017年末刊行。特典は「幻の江戸城天守クリスタルアート」。これ、なかなかかっこいいです。

角川版は最もバージョンが多くて迷いますが、内訳は以下のとおりです。
まず、セットに含まれる書籍ラインナップがいくつか分かれます。
価格はセットで買ってもバラで買っても変わらないので、まずは定番セットを買って、順次別巻を買い足す、という形でも損はありません。特典が欲しい場合はセットを選んだほうがよいです。特典の有無では価格は変わりません。

 特典・別巻なしのベーシックセット。

 上記15冊セットに別巻「歴史まるわかり図鑑」を加えたもの。


 上記「全15巻+別巻1冊セット」と「全3巻セット」をあわせたもの。角川のシリーズはこのセットにすべて含まれます。

以下は、特典付きセット。毎年特典が変わるセットが出ています。書籍のラインナップは全て「全15巻+別巻4冊セット」と同じです。

角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 3大特典つき全15巻+別巻4冊セット【特典付き最新セット】
 2019年11月15日発売最新版。豪華3大特典は「戦国すごろく」「近現代史すごろく」「戦国武将のぼり旗しおり定規5枚」。書籍の内容は「全15巻+別巻4冊セット」と同じ。


学研
学研は本編12冊+別巻2冊の14冊セットのみ販売しています。特典なしのスタンダードなセットと年によって変わる特典付きセットとがありますが、価格はすべて同じです。


学研まんが NEW日本の歴史 5大特典(金印レプリカ・平成史・歴史年表・寝る前5分暗記ブック・特製エコバッグ)つき 全14巻セット
 2020年6月刊行セット。特典がどんどん増えてます。

学研まんが NEW日本の歴史 3大特典(金印・平成史・歴史年表)つき 全14巻セット
 2019年11月刊行セット。

 2019年6月刊行のセット。半年後の11月に刊行された一つ上のセットの方がお得です。

 2016年刊行のセット。成績アップ4大特典、ということで「大坂城リアル再現キット(プラモデル)」「歴史年代暗記カード(124枚・リング2個つき)」「寝る前5分暗記ブック まんが日本の歴史バージョン(32ページ)」「日本の歴史年表(2枚)」と、なかなか豪華です。

講談社
刊行されたばかりということもあり、2種類の特典をつけた全巻セットのみです。

日本の歴史(全20巻セット) (講談社 学習まんが)

 各社とも、10月~11月頃に新しい特典をつけたセットを売り出す傾向があります(クリスマス商戦を睨んでのものと思われます)。特典が気になる方は、その時期にチェックしてみてください。

番外:大人向け文庫版

以上、お子さん向けのシリーズをご紹介しましたが、電車の中で大人が読むにはやや抵抗があります。
子どもだけでなく、自分でも読みたいというお父さん、お母さんには文庫版が出ています。

【角川文庫】


最も売れているシリーズである「角川まんが学習シリーズ」がそのまま文庫版になっています。
児童向けではなく、一般向けという形で刊行されていますが、イラストや字が小さくなり、カラーページもモノクロになっていることさえ気にしなければ、価格も安く、コンパクトに揃えることができます。
全巻箱入りセットも発売されています。




【集英社文庫】




集英社文庫からは「日本の歴史」と「世界の歴史」も出ています。
集英社の学習漫画シリーズは何度か改訂されていますが、この文庫に収録されているのは20年ほど前に刊行されたバージョンです。とはいえ、小中学生が学ぶレベルの歴史が10年や20年程度で大きく変わるわけではなく、大人がいま読んでも一向に差し支えない内容です。
コンパクトにまとまっており、場所を取らないし、価格も安いしで、かなりよく売れているようです。

【中公文庫】
さて、中公文庫からは2020年11月より、石ノ森章太郎版「マンガ日本の歴史」の新装版が刊行されます。これは全55巻という規格外のボリューム。20年ほど前にも一度中公文庫に収録されましたが、その新装版です。初回は一度に4冊出るようですが、何ヶ月かかって完結する予定なんでしょうか。
大人向けに描かれた作品のため、小学生にはやや難しいかもしれませんが、文句なしの画力と確かな時代考証で平成元年の刊行開始時にはベストセラーとなっています。
子ども向けの学習漫画では満足できない、歴史好きのお子さんはこちらをどうぞ。




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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
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