備忘の都

40年間の読書で得た偏った知識をツギハギしながら、偏った記事をまとめています。同好の士の参考に。

「杉本一文『装』画集」入手

201711杉本一文143

待ちに待った「杉本一文『装』画集」が発売されました。
この記事を書いている時点でAmazonではまだ予約受付中ですが、近所の書店にはすでに入荷していて、無事に購入できました。
もし手に入れそこなったら死んでも死にきれない……というくらいに思い詰めていましたので、買えてよかったです。Amazonも予約を締め切ったりはしていませんし、購入に関してはそんなにたいした問題は無かったようです。

さて肝心の中身ですが、横溝正史に関してはやはり全作品ではありません。
角川文庫の横溝正史はわりと頻繁にカバーイラストが差し替えられていて、一部の例外を除いて全て杉本一文なのですが、最初期の抽象的なイラストは少し紹介されている程度です。つまり「悪魔が来りて笛吹く」「獄門島」「本陣殺人事件」あたりの初版バージョンは載っていません。また、「病院坂の首縊りの家」や「悪霊島」の単行本バージョンも無しです。
また、掲載されているのは当然のことながら原画であり、書影ではありません。一部の作品は黒枠や書名が入った書影も掲載されていますが、正直なことをいうと、原画より書影の方がグッと来ますね……こんなに大騒ぎしておいてナンですが。

嬉しいのは、大判(A4判)というサイズです。
作品によってはページにいっぱいに掲載されているため、細部までよくわかりジッと見入ってしまいます。
表紙絵のベスト3を選ぶすると筆者的には以下のあたりなのですが、これらはいずれも大判で紹介されていて、大満足です。
201711女王蜂137201711真珠郎145201711蔵の中144

また、「本陣殺人事件」の「黒猫亭」バージョンや、昭和時代の背表紙では存在しない「悪霊島」の「金田一耕助ファイル」バージョン、「首」「人面瘡」など、レアなイラストも収録してくれているのはありがたいです。

省かれていたけど、載せてほしかったのは「夜の黒豹」の後期バージョンですね。というのは、当時中学生だった筆者には、このおっぱいドーンというイラストが眩しすぎて書店で手に取ることができず、買うことができなかったのです。こういう表紙を平気で買える年齢になったときには背表紙のデザインが変わってしまっており、今さら買う気になれず、未だに持っていないし読んでいない、という本です(えらそうな記事をさんざん書いてますが、角川文庫の横溝をコンプリートしているわけではありません)。

さて、横溝正史以外の杉本一文画伯の画業についてはいかがでしょうか。
角川文庫版の土屋隆夫が掲載されているのは嬉しいところです。それ以外は、そもそも本の存在自体知らないものが多いので「ふーん」という感想になってしまいますが。
資料的な面はあまり充実していません。新旧両バージョンが掲載されている作品も多いのですが、いずれもキャプションに記載の年号は書籍の初版年で、イラストの描かれた時期はわかりません。また巻末にも索引はなく、あっさりしています。
個人的な感想を言えば、もう少し高価格になっても良いので、資料面は充実してほしかったように思います。

杉本氏の経歴を見ると、角川文庫で横溝正史の表紙絵を描いていたのは20代後半から30代前半という時期のようで、そこに一番驚きました。世の中の全てを知り尽くした老人が枯れた手に絵筆をとっているとばかり思っていました。
自分が20代の頃を振り返ってみると……どこを振ってみてもこんなイラストは出てきませんね。
横溝ブームと歩調を合わせて登場した、奇跡的な天才です。いや、むしろ杉本一文が表紙を描いたからこそ、横溝ブームが起こり、後のミステリの歴史が書き換えられたと言うべきでしょうか。



関連記事:
角川文庫版・横溝正史の表紙絵を収録!「杉本一文『装』画集」待望の刊行!

金田一耕助はなぜ和服姿なのか?

201707真説金田一耕助103

金田一耕助といえばヨレヨレの着物に袴、お釜帽というのが定番スタイルです。
小説はもちろん、映画やドラマも、常に和服姿で登場します。
ところが、かつて白黒映画の時代には洋装の金田一耕助が活躍していました。
ここにはどんな意味があるのでしょうか?

金田一耕助の服装については、横溝正史本人がエッセイ「真説金田一耕助」のなかで語っています。
それによれば、金田一耕助が初登場した「本陣殺人事件」の時代設定は昭和12年であり、当時はまだ洋装が一般化していませんでした。かくいう横溝正史自身も、昭和初期は博文館に務めて雑誌「新青年」の編集に携わっていましたが、和服に袴で出勤していたのだそうです。
つまり、金田一耕助のスタイルは奇をてらったものではなく、当時の日本人として標準的服装ということです。

これはリアルタイムの読者にとっても同じような認識だったと思われます。
その証拠が冒頭にも書いた、白黒映画に登場する洋装の金田一耕助です。

金田一耕助が初めてスクリーンに登場したのは東横映画(のちの東映)が製作した「三本指の男」ですが、これは昭和22年に公開された映画で、原作の発表直後でした。
この時、金田一を演じた片岡千恵蔵はスーツ姿で登場しました。
いったいなぜ着物に袴でなかったのかといえば、要するにこの頃の読者はだれも、金田一耕助の服装なんぞ気にしていなかったということになります。
片岡千恵蔵は戦前から活躍する時代劇の大スターでしたが、戦後しばらくはGHQの指導で時代劇を製作することができなくなり、大映で現代劇の多羅尾伴内シリーズをヒットさせていました。そしてそれと並ぶ当たり役として東横では金田一耕助シリーズに出ていたのです。
ミステリ映画であると当時に片岡千恵蔵のスター映画でもあったため、金田一を原作どおりの冴えないオッサンにしようなどという発想はなく、バリッとしたスーツを着こなすかっこいい名探偵として描かれたわけです。
片岡千恵蔵が作り出した金田一耕助像は強烈であり、その後の映像化ではこのイメージが踏襲されていくことになりました。

要するに白黒映画が製作されていた頃の横溝正史は、古典ではなくリアルタイムのエンタメであり、原作に描かれた名探偵の服装には、誰も注目していなかったことが伺われます。

洋装のかっこいい金田一耕助が続いたのち、しばらくは横溝正史にとって冬の時代が続きます。そして14年のブランクを挟み、昭和50年に画期的な金田一耕助がスクリーンに登場します。「本陣殺人事件」の中尾彬です。
映画の時代に設定は(撮影当時の)現代とされ、中尾彬はヨレヨレのシャツにジーパン姿の若者として登場します。
それまでの定番だったかっこよさもなければ、原作どおりの和服でもない。いったいどこが画期的なのか?
実はこれ、時代をスライドさせれば原作に完璧に忠実な金田一耕助なのです。
つまり、冴えない日本人の標準的服装というわけです。
とはいえ、原作では戦前の設定を、昭和50年代に置き換えてしまうのはいかがなものか。
これも、裏を返せば原作をまだ「古典」ではなく「同時代の小説」と捉えていたものと思われます。
横溝正史が「本陣殺人事件」を発表したのは昭和21年ですが、昭和50年から見れば、わずか・・・29年前の作品です。
例えば平成29年の今年、綾辻行人のデビューから30周年ということで騒がれています。では、いま「十角館の殺人」を映像化するとして、時代設定をあえて昭和62年に持っていったりするでしょうか? ふつうに平成を舞台に事件を起こすはずです。
「本陣」の映画化はATG製作ということで低予算の制約もあったものと思われますが、制作陣としてはどうしても原作の年代にあわせなければいけないという感覚は無かったのでしょう。
さらにいえば、昭和52年に公開された松竹「八つ墓村」も、公開こそ遅れましたが、企画自体は「犬神家の一族」より以前からスタートしたものでした。「八つ墓村」でも原作は同時代の作品と解釈され、舞台は現代になっており、冒頭には空港でジャンボジェット機を誘導する仕事に従事する寺田辰弥が登場しています。
つまり、映画「犬神家の一族」が登場するまでは、横溝正史作品は同時代のものだったのです。

さて、和服に袴の金田一耕助が初めて映像に登場したのが、その「犬神家の一族」(昭和51年・角川映画)でした。
ここにおいて初めて、横溝正史作品は細部にまで敬意を払うべき古典作品として映像化されたと言えます。
わずか・・・30年、されど30年。
原作発表当時から高度経済成長を経て大きく変化した日本社会に、ようやく制作陣も思いが至りました。角川春樹は、国鉄が昭和45年から始めていた「ディスカバー・ジャパン」というキャンペーンからの影響も語っていますが、同時代のミステリではなく、古き日本の風俗を取り入れた古典、という認識で横溝作品が読まれるようになったわけです。
そうなると当然、金田一耕助の和服姿も重視されるようになります。
こうして、「犬神家の一族」以降、映像に登場する金田一耕助は一部の例外を除いて常に和服を着るようになったわけです。

関連記事:
金田一耕助映画のサウンドトラック
「犬神家の一族」は本格か?
「Yの悲劇」が横溝正史へ与えた影響とは?
「悪魔の手毬唄」と、きかんしゃトーマス

杉本一文だけじゃない!人気表紙画集5選

201711戻り川心中139

先日の記事でご紹介しましたとおり、近々、角川文庫版・横溝正史の表紙絵で有名な杉本一文の表紙画集が発売されます。

角川文庫版・横溝正史の表紙絵を収録!「杉本一文『装』画集」待望の刊行!

待ち望んでいた方も多いかと思いますが、ミステリやSFのファンは特に「表紙絵」というものに思い入れの強い人が多いようで、これまでにも人気イラストレーターの表紙画集はいくつか出ています。今回はそれらをご紹介しましょう。(リンク先は全てAmazonです)

薔薇の鉄索: 村上芳正画集
国書刊行会
2013-07-25


本書は税込で5,000円超という価格をものともせず筆者も買いましたが、刊行されたときは「今さら村上芳正!?」と仰天したものです。
村上芳正は70年代を中心に活動していた画家で、有名なのは講談社から出ていた連城三紀彦の諸作でしょう。
連城三紀彦と村上芳正との出会いは講談社の単行本が最初ではなく、雑誌「幻影城」に「花葬」シリーズ第一作のあたる「藤の香」が掲載された際、挿絵を担当しています。
村上芳正は「幻影城」ではかなりの挿絵を担当しており、1978年6-7月合併号(No.44)にて「村上芳正の華麗な世界」と題した特集も組まれています。筆者は中学生のころ、たまたま古本屋で「幻影城」の揃いを見つけ、お年玉をはたいて購入しており、この特集は飽きずに何度も繰り返し眺めたものです。
今や名前を見てもピンとくる読者が減ってしまったのか、刊行から4年も経つのに、Amazonのレビューは一つもついていないという有り様ですが、本書には代表作「家畜人ヤプー」や、連城三紀彦の諸作はもちろん、表紙絵、挿絵、ポスターなどが数多く掲載されています。原画だったり書影だったりといろいろですが、幻想的な華麗な作品を、時間を忘れて眺め続けてしまいます。



スター・ウォーズやマッド・マックスの日本版ポスターが有名な生頼範義ですが、ミステリやSFの表紙絵も数多く手がけており、非常に人気のあるイラストレイターです。
画集もいろいろ出ていますが、本書は代表作を網羅しつつお求めやすい価格で、とりあえず最初の一冊としておすすめできます。表紙絵に限らず、映画ポスターもたくさん収録されており、生頼範義の仕事を概観することができます。

武部本一郎SF挿絵原画蒐集〈上〉1965~1973
武部 本一郎
ラピュータ
2006-03-30


かつて児童書界で挿絵を書きまくっていた武部本一郎の画集です。
こちらの記事で紹介しているポプラ社版乱歩全集もいくつかの巻を担当していますし、有名な絵本「かわいそうなぞう」のイラストも氏の仕事です。
画集はそれほどたくさんは出ておらず、しかも全て入手が難しい状況ですが、いずれ全画業を概観できるような本が出てほしいな、と思っています。

銅版画・江戸川乱歩の世界
多賀 新
春陽堂書店
1988-05


春陽文庫版・江戸川乱歩の表紙を飾るおぞましい銅版画を描いた多賀新の版画集です。
この表紙は子どもの頃、杉本一文以上に強烈でした。不気味だけど見入ってしまう、というわけで、小学生の頃は学校から帰ると一人で部屋へこもり「孤島の鬼」や「心理試験」の表紙絵をジッと見つめ続ける、という毎日を送っていたものです。
この画集を出たときは中学生でしたが、買おうかどうしようかさんざん迷いました。しかし、結局は中学生が買うようなものではなく、そのうちそのうち、と思っているうちに大人になってしまい、それでもこの本は絶版にならずしぶとく書店店頭に並び続け、こちらも負けずと買わずにいたら、最近、とうとう品切れになったようです。
勝った……というような感慨は特になく、やっぱり買っておいたほうが良かったかなあ、と少し後悔しています。とは言え、杉本一文ほど「何が何でも絶対買う!」という気になれなかったのは確かですね。何十年も立ち読みを続けたので、内容はよくわかっていますが。

少年少女昭和ミステリ美術館―表紙でみるジュニア・ミステリの世界
森 英俊
平凡社
2011-10-01


本書は特定の画家の作品集ではなく、かつてポプラ社や偕成社などで出ていた児童向けミステリシリーズの表紙絵を集めたものです。
筆者の年代から見ると古めの本が多いのですが、ドンピシャ世代の本も数多く掲載されています。子どもの頃、近所の市立図書館で「今日はどれを借りようか」と表紙をにらみ続けたころの気分をありありと思い出せる、とても素敵な本です。ただし、本書でトキメクことができるのは、昭和のうちに小学生を済ませた世代に限られるだろうと思います。

2017年11月 文庫新刊おすすめ情報

来月の文庫新刊をご紹介します。要チェックのものはコメント付き。(書名からのリンク先はAmazon)

岩波文庫


ブータンの瘋狂聖 ドゥクパ・クンレー伝
 ゲンドゥン・リンチェン 今枝由郎 本体予価:未定

ロバート・キャパ写真集
 ICPロバート・キャパ・アーカイブ編 本体予価:未定

真空地帯
 野間宏 本体予価:未定

荒涼館(4)
 ディケンズ 佐々木徹 本体予価:未定

何が私をこうさせたか 獄中手記
 金子文子 本体予価:未定

角川文庫


マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代
 門井慶喜 本体予価:未定

京都なぞ解き四季報理系女子と探偵バー
 円居挽 本体予価:未定

ムーン・リヴァー
 栗本薫 本体予価:未定

ポーツマスの贋作
 井上尚登 本体予価:未定

俳優探偵僕と舞台と3つの謎と
 佐藤友哉 サマミヤアカザ 本体予価:未定

ダークゾーン(上)
 貴志祐介 本体予価:未定

ダークゾーン(下)
 貴志祐介 本体予価:未定

河出文庫


いつ殺される
 楠田匡介 本体予価:896

ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所(仮)
 ダグラス・アダムス 安原和見 本体予価:994

有罪者無神学大全
 ジョルジュ・バタイユ 江澤健一郎 本体予価:1296

講談社文芸文庫


藁屋根
 小沼丹 本体予価:1620

獄中十八年
 徳田球一 志賀義雄 本体予価:1512

小説作法
 丹羽文雄 本体予価:1836

講談社学術文庫


水滸伝(4)
 井波律子 本体予価:未定

リュシス 恋がたき
 プラトン 田中伸司ほか 本体予価:未定

興亡の世界史 大英帝国という経験
 井野瀬久美惠 本体予価:未定

流線形の考古学
 原克 本体予価:未定

皇后考
 原武史 本体予価:未定

天皇の歴史(1)神話から歴史へ
 大津透 本体予価:未定

講談社文庫


新装版 鬼面の研究
 栗本薫 本体予価:未定

新装版 頼子のために
 法月綸太郎 本体予価:未定
 ※新装版を出すより、現在入手不可の「誰彼」とか「ふたたび赤い悪夢」の復刊を希望します。

小学館文庫


教場(2)
 長岡弘樹 本体予価:670
 ※小学館はベストセラーの続編は必ず「◯◯2」というタイトルにしてしまっていて、ある意味、潔い。

新潮文庫


文学の淵を渡る
 大江健三郎 古井由吉 本体予価:562

新版 國語元年
 井上ひさし 本体予価:594
 ※小学生の頃、NHKでドラマが放映されていたのを見ましたが、そのシナリオです。これは面白いです。

人間アレルギーなぜ「あの人」を嫌いになるのか
 岡田尊司 本体予価:529

西郷隆盛はどう語られてきたか
 原口泉 本体予価:529

主婦病
 森美樹 本体予価:594

ポスドク!ぼくと叔父さんの出世戦争(仮)
 高殿円 本体予価:724

愛に乱暴(上)
 吉田修一 本体予価:529

愛に乱暴(下)
 吉田修一 本体予価:529

英傑西郷隆盛アンソロジー
 池波正太郎 芥川龍之介ほか 本体予価:497

成熟脳脳の本番は56歳から始まる
 黒川伊保子 本体予価:464

総力捜査
 安東能明 本体予価:810

ゆらやみ
 あさのあつこ 本体予価:810

故郷はなきや新・古着屋総兵衛(15)
 佐伯泰英 本体予価:680

林檎の樹
 ゴールズワージー 法村里絵 本体予価:432

チャップリン自伝栄光と波瀾の日々
 チャールズ・チャップリン 中里京子 本体予価:907

ちくま文庫


世間を渡る読書術
 パオロ・マッツァリーノ 本体予価:886

島津家の戦争
 米窪明美 本体予価:864

書店不屈宣言わたしたちはへこたれない
 田口久美子 本体予価:842

古本で見る昭和の生活ご家庭にあった本
 岡崎武志 本体予価:907

田中小実昌ベスト・エッセイ
 田中小実昌 大庭萱朗 本体予価:1026

Hawaiian Print Book
 赤澤かおり 本体予価:1080

ちくま学芸文庫


現代数学序説 集合と代数
 松坂和夫 本体予価:1512

全訳注 葉隠(下)
 山本常朝 田代陣基ほか 本体予価:1728

コミュニティ安全と自由の戦場
 ジグムント・バウマン 奥井智之 本体予価:1080

ロック入門講義英国経験論の原点
 富田恭彦 本体予価:1296

スペンサー・コレクション
 ハーバード・スペンサー 森村進 本体予価:1512

石 人間と文化をめぐる物語
 堀秀道 本体予価:1404

中公文庫


高慢と偏見
 ジェイン・オースティン 大島一彦 本体予価:1015
 ※これは新訳と思われます。看板記事で「高慢と偏見」を扱っている当ブログとしては要チェックです。

創元推理文庫


コリーニ事件
 フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄進一 本体予価:778

ルイジアナ・ロングショット(仮)
 ジャナ・デリオン 島村浩子 本体予価:1015

名探偵の証明
 市川哲也 本体予価:907

鳥籠の家
 廣嶋玲子 本体予価:907

修道女フィデルマの挑戦修道女フィデルマ短編集
 ピーター・トレメイン 甲斐萬里江 本体予価:1058

蝶のいた庭
 ドット・ハチソン 辻早苗 本体予価:1296

書店猫ハムレットのうたた寝
 アリ・ブランドン 越智睦 本体予価:1188

内部の真実
 日影丈吉 本体予価:972
 ※日影丈吉の代表作の一つですが、文庫版が出るのは何十年ぶりでしょうか。戦時中の台湾を舞台に幾重にも推理が展開され、「虚無への供物」にも比肩する傑作です。

何が困るかって
 坂木司 本体予価:734

徳間文庫


夢裡庵先生捕物帳(上)
 泡坂妻夫 本体予価:810

夢裡庵先生捕物帳(下)
 泡坂妻夫 本体予価:832

ハヤカワ文庫


日本SF傑作選(3)眉村卓 下級アイデアマン/還らざる空
 日下三蔵 本体予価:1620

ジャック・イジドアの告白
 フィリップ・K・ディック 阿部重夫 本体予価:1080

宇宙英雄ローダン・シリーズ558 第二地球作戦
 クラーク・ダールトン&H・G・エーヴェルス 渡辺広佐 本体予価:713

書店主フィクリーのものがたり
 ガブリエル・ゼヴィン 小尾芙佐 本体予価:864

フォールアウト
 サラ・パレツキー 山本やよい 本体予価:1296

アリスマ王の愛した魔物
 小川一水 本体予価:821

赤いオーロラの街で
 伊藤瑞彦 本体予価:756

宇宙英雄ローダン・シリーズ559 思考プラズマ
 H・G・エーヴェルス&K・H・シェール 嶋田洋一 本体予価:713

〈ローダンNEO〉6 ツインズ
 フランク・ボルシュ 鵜田良江 本体予価:756

シルトの梯子
 グレッグ・イーガン 山岸真 本体予価:1080

日本―呪縛の構図(上)
 R・ターガート・マーフィー 仲達志 本体予価:864

日本―呪縛の構図(下)
 R・ターガート・マーフィー 仲達志 本体予価:864

ニューヨーク1954
 デイヴィッド・C・テイラー 鈴木恵 本体予価:1188

文春文庫


内田樹による内田樹
 内田樹 本体予価:842

仁義なき幕末維新 われら賊軍の子孫
 菅原文太 半藤一利 本体予価:864

「南京事件」を調査せよ
 清水潔 本体予価:842

アメリカの壁
 小松左京 本体予価:950

血脈(上)
 佐藤愛子 本体予価:994

血脈(中)
 佐藤愛子 本体予価:1058

血脈(下)
 佐藤愛子 本体予価:1004

立東舎文庫


手塚治虫エッセイ集成 ルーツと音楽
 手塚治虫 本体予価:972

手塚治虫エッセイ集成 ぼくの旅行記
 手塚治虫 本体予価:972

「動物農場」を読むなら、おすすめの文庫はどれ? 各社版徹底比較!

201711動物農場140

ジョージ・オーウェルは「一九八四年」がよく知られていますが、もう一つの代表作が「動物農場」です。薄くて読みやすい作品であるためとてもよく読まれており、翻訳は4種類刊行されています。
ハヤカワepi文庫、岩波文庫、角川文庫、ちくま文庫。
今回は各社版を比べて見たいと思います。



最も新しい訳がハヤカワepi文庫版で、今年2017年に出たばかりです。
訳者の山形浩生氏はSF小説、経済学、コンピュータ関連の翻訳をたくさん手がけており、各方面での言論活動でも有名です。
本書の解説は訳者自身が書いていますが、ソビエト連邦を知らない若い世代へ向けて、ということで非常にわかりやすい内容になっており、筆者の印象では「動物農場」を読むならば、この解説込みでハヤカワepi文庫版を選択するのがベストだと思っています。
また、訳文自体も、豚が演説するシーンでは左翼のアジテーションを思わせる口調になっていたりと、かなり楽しんで読むことができます。
本編とあわせてオーウェルによる「序文案」と「ウクライナ語版への序文」とが収録されており、作品理解の助けになります。
この文庫で読むと良い点がさらにもう一つあり、それはオーウェルの代表作「一九八四年」もハヤカワepi文庫から刊行されているため、「動物農場」もハヤカワepi文庫で揃えると、背表紙が揃います。「一九八四年」は他社からは出ていないのです。



ハヤカワ文庫と並ぶおすすめは、岩波文庫版です。
こちらは本編に加え2種類の序文を収録している点ではハヤカワ文庫と同じ。価格も同じようなものです。
おすすめポイントは膨大な注釈と、懇切丁寧な解説です。訳者はオーウェル研究の第一人者として知られています。
ただ、そもそも文章やストーリー自体には全く難しいところはないため、特に注釈がなくてもすいすい読める作品です。膨大な注釈は、著者の研究の成果を披露するためのものでは、という印象を受けます。
ハヤカワepi文庫は「若い人向け」と明快なコンセプトを打ち出していますが、岩波文庫それよりも上級者向け、文学書として読みたい方向けに仕上がっていると言ってよいでしょう。
岩波文庫からはほかに「オーウェル評論集」が出ています。文庫で読めるオーウェル作品は現在では「一九八四年」「動物農場」以外にはこの「評論集」くらいですので、ファンは要チェックです。今年2017年夏の一括重版の対象となっていたので、この記事を公開した時点では容易に入手できます。



さてここまでハヤカワepi文庫版と岩波文庫版とを紹介してきましたが、あとの2種類、角川文庫版とちくま文庫とは「開高健」がキーになります。

動物農場 (角川文庫)
高畠文夫・訳


角川文庫版は例によって非常に古く、昭和40年代に刊行されたものです。といっても、読みづらいということはありません。
本編のほかにオーウェルのエッセイ「象を撃つ」「絞首刑」「貧しいものの最期」を収録しており、一見、短編集のような体裁になっています。さらには開高健のオーウェル論「24金の率直 オーウェル瞥見」を収録していて、内容的には盛り沢山です。解説も古い内容ながらしっかりしています。
にもかかわらず価格は一番安くて、お得感のある一冊です。
なお、「象を撃つ」と「絞首刑」については岩波文庫の「オーウェル評論集」にも収録されているので、オーウェルのエッセイをもっとたくさん読みたいという方は本編を岩波文庫かハヤカワepi文庫で読み、あわせて「オーウェル評論集」も読む、という読み方もおすすめできます。



ちくま文庫版の「動物農場」は開高健が訳しています。本編以外にも開高健の論考「談話・一九八四年・オーウェル」「オセアニア周遊紀行」「権力と作家」を収録しています。
奥付によれば、本書はもともと「今日は昨日の明日 ジョージ・オーウェルをめぐって」と題してオーウェル関係のエッセイ・評論、そして「動物農場」の翻訳をまとめていた単行本を、文庫化したもののようです。
ただし、角川文庫版「動物農場」にも収録されている「24金の率直」は文庫化にあたって削除されています。
オーウェル好きよりは開高健のファンにおすすめバージョンですが、元版を完全収録していない点が少し引っかかります。
価格は他の文庫と比べると一番高いです。

というわけで、まとめますと、

◎本編だけを読むなら
 ソ連を知らない若者は → ハヤカワepi文庫
 チャラチャラした雰囲気が嫌な読書子は → 岩波文庫

◎本編以外も読みたいなら
 さらっと読みたい → 角川文庫
 しっかり読みたい → 岩波文庫(またはハヤカワepi文庫)+岩波文庫「オーウェル評論集」

◎開高健ファン
 一通り読みたい → ちくま文庫
 全て読みたい → ちくま文庫+角川文庫

ということになります。
どれが最強なのか、結局よくわかりません。
profile

筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
ブログ更新通知:https://twitter.com/squibbon19

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