備忘の都

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学習漫画「日本の歴史」を買うなら、おすすめはどれ?人気4大シリーズを比較

最終更新日:2019年7月10日

日本の歴史をマンガで学べる学習漫画。あちこちからシリーズが出ています。
わが家でも小学5年生の長男にそろそろ買ってやろうかな、と考えていますが、果たしてどれを買えばよいのか。
各社版の特色を調べてみました。

現在、書店に並んでいる日本史の学習まんがのうち、大手は以下の4社です。
なお、掲載している情報は改訂されたり新刊が追加されたりで、価格やセット内容など随時変わってきます。なるべくフォローするようにしていますが、最新情報はリンク先のAmazonで確認していただければと思います。


全面新版 学習まんが日本の歴史 2019年版数量限定特典つき全20巻特価セット (全面新版 学習漫画 日本の歴史)
集英社
2018-11-13







それぞれの特色を見る前に、各社共通のポイントを一点。
これらのシリーズは一冊ずつバラバラでも買えますが、どうせなら箱入りセットで買うことをおすすめします。
というのは、時期によって異なるのですが、セットで買うと特別価格になったり、セットだけに限定の付録がついていたりするためです。家庭での保管にも箱に入っていたほうが何かと楽です。
筆者としては、書店でバラ売りをしているのは「内容確認のための見本」で、買うならセットが当然、と思っています。

それでは、それぞれの特色を見ていきましょう。

小学館「学習まんが少年少女日本の歴史」


公式サイト:http://www.shogakukan.co.jp/pr/manganichireki/

小学館は、学習まんがの老舗であり、ド定番と言えるシリーズだと思います。
実は筆者も子どもの頃に読んでいたので、かなり思い入れがあります。
1981年に刊行されてから、細かい改訂は何度か行われていますが、大きくは刷新していません。このため、現在の子どもから見ると若干イラストが古いと思われるようですが、これだけ長く読み継がれているのは、それだけ完成度が高いからだといえます。
人物の描き分けや画面の構図などは肖像画や絵巻物、近代であれば写真などを参考に描かれており、高校生になってから日本史の図録を見て、「あ、これは学習漫画のイラストと同じだ」と気づくことが何度もありました。
また、他社に比べるとかなり細かいコマ割りで、情報量が多く感じられます。
筆者の兄などは、このシリーズをさんざん読み込んだ知識だけで大学入試を済ませて、今は中学校で社会科の教師をやっているほどです。
価格は他社より高めですが、自信を持っておすすめできます。例の「ビリギャル」も、慶応大入試をこれで済ませたそうです。

なお、上記「24巻セット」は、本編22冊に「人物事典」「史跡・資料館事典」という補巻2冊が加わったものです。
2018年10月に新刊として追加された「22巻 平成の30年」を含みます。



また、電子書籍のシリーズも出ています。大きめのタブレットをお持ちの家庭にはこちらもおすすめです。


(なお単行本最新刊の22巻「平成の30年」は電子書籍では未刊。このリンクは本編全21冊に別巻2冊を加えた23冊セットです。電子書籍の価格は変動するため正確なところはリンク先のAmazonで確認していただきたいのですが、たいていはセットで税込14,904円と、単行本よりもかなり安い設定になっています)

集英社「新版 学習まんが 日本の歴史」


全面新版 学習まんが日本の歴史 2019年版数量限定特典つき全20巻特価セット (全面新版 学習漫画 日本の歴史)
集英社
2018-11-13


公式サイト:https://www.shueisha.co.jp/rekishi/

集英社は、2016年末に内容を全面的に刷新したばかりです。つまり、各社のなかで最も新しい内容です。最新の研究成果・知見を取り入れた内容と言えます。
また、最も大きな特長は現代史に力を入れている点です。
他社版は現代史の部分は昭和・平成をまとめて1~2冊というところですが、集英社版だけは昭和史3冊、平成史1冊と、かなりの充実です。
平成史なんて子どもに読ませる意味あるの?と大人は思ってしまいますが、バブル崩壊、阪神大震災、構造改革、グローバル化、インターネットの普及、テロとの戦争、リーマンショック、東日本大震災と、もはや「歴史」として学ばなければいけないことは山のようにあるわけです。
表紙絵は各巻、少年ジャンプの人気漫画家たちが競演していますが、本編は別の漫画家が描いていますので、その点はご注意ください。
また、小学館版が「学習」を重視しているのに対し、マンガとしてのストーリー展開を重視しており、絵柄を含めて読みやすさを狙っています。コマ割りはかなり大きめです。
全巻セットで買うと、バラで買うより価格がお得になります。
また毎年、数量限定で価格はそのままの特典付きセットも発売されています。
2019年の特典は「くり返し遊びながら学べるクイズブック」「お風呂にも貼れるポスター」「昔の地名がわかるクリアファイル」豪華3点、ということです。

KADOKAWA「角川まんが学習シリーズ 日本の歴史」


公式サイト:http://shoten.kadokawa.co.jp/sp/mangagakushu/nihonnorekishi/

角川版は、各社の中で唯一、ソフトカバーです。また他社が菊判であるのに対し、B6版と一回り小さいサイズで、冊数もコンパクトにまとまっており、場所を取りません。
冊数は少ないものの、1冊あたりのページ数は多く、実は全巻の総ページ数は他社を上回っています。
にもかからず、価格が最も安いシリーズでもあります。
このような圧倒的なコストパフォーマンスで人気があり、日本史の学習漫画で一番よく売れているのはこの角川版なのです。
筆者的には、イラストがちょっとキラキラしすぎじゃないか、と思うのですが、どうなのでしょう。今の子どもには小学館版の野暮ったい絵よりも、こちらの方が受けているようです。
どちらかというとストーリー重視ですが、集英社版がマンガとしての「面白さ」を狙っているのに対し、角川版は歴史の「流れ」を捉えようとしており、学校の授業を補完するのにうってつけの内容です。
さらに角川版は、本編15冊のほかに、別巻として「よくわかる近現代史」という全3冊のシリーズが出ています。歴史学習ではどうしても近現代史が手薄になりがちですが、そこもバッチリ押さえられるというわけです。
他社版で揃えた場合でも、この別巻だけ購入して近現代を補うこともできます。



「よくわかる近現代史」を含めた箱セットもあります。別巻を含めても、小学館・集英社より安い。




また毎年、中学受験に役立つ特典をつけた限定セットが発売されています。定価は上記セットと同じなので、おまけの分だけ単純にお得です。2019年の特典は「近現代史まるわかりすごろく&サイコロ首脳えんぴつ」とのこと。


学研「NEW日本の歴史」


学研版の一番大きな特長は、もともと学習参考書を手がけている出版社だけに、巻末資料が充実していることです。資料部分がかなりの割合を占めており、きちんと読み込めば、ほかの参考書は不要になるでしょう。小学館版が漫画の中で学習しようとしているのに対し、ストレートに学習参考書的資料がついているわけです。
巻数はコンパクトに収まっており、同じくハードカバーを出している小学館・集英社より安い価格になっています。刊行時期も新しいため、フルカラーで見やすい絵柄です。
別巻2冊はバラでも買えますが、箱セットを買うとついてきます。こちらも資料が充実した内容で、図鑑好きの子どもはずっと眺め続けることでしょう。
2019年6月に特典として128ページのオールカラー冊子「写真で見る平成史」をつけたセットが発売されたました。学研らしく、中学・高校受験を意識した特典と言えます。

まとめ

というわけで、各社版を簡単におさらいすると
小学館:時代考証が手堅く定評がある。学習重視。大学受験まで使える。
集英社:最新版の内容。近現代史が充実。ストーリー展開重視。
角川:場所を取らずコンパクトで価格も安い。別巻の近現代史もあり。歴史の流れを重視。
学研:巻末資料が充実。学習重視。参考書の代わりになる。

まあ、正直なところ、熱心に読み込むお子さんであれば、「学習」という観点ではどれを買ったところでたいした違いはないかと思います。
筆者としては個人的な思い入れがあるということで、やはり小学館をベストと考えています。
イラストの雰囲気については、実際のところを確認されたい場合は、それぞれの公式サイトで試し読みをでき、また無料のお試し版を電子書籍で読めるものもあります。







おまけ

以上、お子さん向けのシリーズをご紹介しましたが、電車の中で大人が読むにはやや抵抗があります。
子どもだけでなく、自分でも読みたいというお父さん、お母さんには文庫版が出ています。

【角川文庫】


最も売れているシリーズである「角川まんが学習シリーズ」がそのまま文庫版になっています。
児童向けではなく、一般向けという形で刊行されていますが、イラストや字が小さくなり、カラーページもモノクロになっていることさえ気にしなければ、価格も安く、コンパクトに揃えることができます。
全巻箱入りセットも発売されています。




【集英社文庫】




集英社文庫からは「日本の歴史」と「世界の歴史」も出ています。
集英社の学習漫画シリーズは何度か改訂されていますが、この文庫に収録されているのは20年ほど前に刊行されたバージョンです。とはいえ、小中学生が学ぶレベルの歴史が10年や20年程度で大きく変わるわけではなく、大人がいま読んでも一向に差し支えない内容です。
コンパクトにまとまっており、場所を取らないし、価格も安いしで、かなりよく売れているようです。

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小学1年生の次男が幽霊を目撃

今日未明、午前3時頃のこと。
この春から小学校へ上がり、自分のベッドで一人で寝るようになった次男の部屋から、「うわぁっー!」という、ものすごい悲鳴が聞こえてきました。
寝ぼけているんだろうと思いつつ覗きにいってみると、ベッドの横に呆然と座り込んでいます。
なんだベッドから落ちたのか、と思って、トイレへ連れていっておしっこだけさせると、もう一度寝かしつけました。

朝になってから、夜中に起きちゃったね、と声をかけると、はじめうちはあまり覚えていない様子だったのですが、急に思い出すと
「カーテンのところに知らない人の足があったから、ビックリしちゃった」
などと言い出すのです。そして淡々と
「でもね、ぼくがキャーってさけんだら、すぐに逃げちゃったから怖くなかったよ」
と続けます。

おいおい、それってむちゃくちゃ怖い話やんか。
朝の食卓は大騒ぎになりましたが、妻は、息子が怖がって、もう自分の部屋では寝ない、と宣言するのを恐れているのか「怖い夢を見ちゃったんだね」とか「オバケだったら足が無いはずだから、それはオバケじゃないよ」とか、一生懸命慰め、最終的には本人も「きっと、昨日寝る前に鬼太郎を見てたから、怖い夢を見ちゃったんだ」と納得していました。
しかし、いやいや、これはまぎれもなくオバケでしょう!

「足」と聞いて、私が思い出すのは、15年ほど前にあった一件です。
当時は東京で、新築のビルの中に開所したばかりの事業所に勤務していました。
ある日、女性スタッフが倉庫へ行って、戻ってくると、顔が真っ青になり、ぐったりとしているのです。
急に気分でも悪くなったのかと尋ねると「いや、大丈夫です、大丈夫です」と言いながら、やはり青ざめて冷や汗までかいています。周囲はみな心配して「少し横になったら……」などと声をかけていると、「実はイヤなものを見てしまって……」と言い出しました。

何を見たかというと、倉庫の棚の間から
「ゲートルを巻いた足」
がゴロンと突き出していたというのです。

怪談好きの私としては、それを聞いて「キタッー」と叫びたいくらい興奮したものですが、当の本人はずっと青ざめたままで、すぐ隣で大喜びするのは憚られる雰囲気でした。その後、この話はなんとなくタブーのような扱いになって、職場で口にする人はありませんでした。
そもそも、そのビルが立っているのは、かつて刑場があったという場所からほど近く、東京の怪奇スポット、という類の本を読むとその地域は必ず登場するようなところだったのです。
先輩の女性社員が退職する際、送別会の席で「休みの日に友人と一緒に建物の前を通りかかったので、ここが私の会社、と言ったら、友人は建物をジッと見つめて、あまり長いことここに勤めないほうがいいよ、と言われてしまった」などという話を披露していたこともあったりして、実はなかなか恐ろしい場所だったようです。

昔に聞いたそんな話を思い出したりして、朝からすっかり興奮してしまいましたが、私自身はこれまで怖い体験というのは全くないんですよね。
まあ、怖い目に遭いたいとは思っていないのでそれでいいのですが、次男は以前から、夜寝るとき、ふすまが開いたままだと「怖い怖い」と言ってなかなか寝ようとしませんでした。
なので、夏でも締め切った部屋で汗だくになって寝ていたものですが、単に幼いから怖がり、というだけでなく、もしかすると、いろいろ不思議なものが「視える」子どもだったりするのかもしれません。
とうとうの、俺の家族にそんな奴が現れたか、と怪談好きとしてはなかなか感慨深いものがあります。
引き続き彼の言動には注目していきたいと思っています。

現場写真
 DSC_0131


↓ ぜんぜん視えない人間としては、「そうか、視える、というのはこういうことなのか」というのがビジュアルでよく理解できる、非常に興味深い本。

視えるんです。 (幽ブックス)
伊藤三巳華
KADOKAWA/メディアファクトリー
2010-05-18


古屋兎丸作画!「明仁天皇物語」(小学館)

201906明仁天皇物語326

「昭和天皇物語」の4巻が発売されたので、仕事の帰りに書店へ寄ったところ、ビックリ!
なんと「明仁天皇物語」なる本が一緒に並べてありました。
しかも、古屋兎丸の作画!!
「Palepoli」とか「π」とか描いていた同じ筆で、やんごとない絵を描くことになるとは。
「昭和天皇物語」のパクリ企画か?と思いましたが、同じ小学館発行で、原作者も同じ。姉妹企画と言った方がよいようです。

筆者は昭和天皇ファンであるとともに、平成の天皇のファンでもありましたので、もちろん買ってきました。

内容そのものには、特に目新しいところはありません。
わずか1冊で完結させているため、有名なエピソードを拾う以上には話を膨らますことができなかったように思われます。しかし、今のところ平成の天皇についてはまとまった伝記は何も出ていませんので、「天皇とは何か?」という入門書として、息子に読ませたりするにはちょうどよいでしょう。
とてもコンパクトに、美しくまとめているのは間違いありません。

違和感を感じるのはタイトルですね。
やんごとない立場の方の名は、「いみな」として本来は口にだすのが憚られるものです。(日常生活でも、上司や両親を下の名前で読んだりしませんよね。同じようなものです)
天皇の名は口に出さず、現役であれば「天皇陛下」と呼び、死後は「明治天皇」「昭和天皇」のように諡号で呼びます。
「天皇陛下」という呼称が仰々しく感じられるためか、平成の時代から「明仁天皇」「今上天皇」という呼称が流行りだしたように感じます。
さすがに生前に「平成天皇」と呼ぶが誤り、ということはよく知られているようですが、個人的には
「明仁天皇」→諱を口にしているので✕
「今上天皇」→もともと「今上」というだけで「今の天皇」を指しているので、「今上天皇」では意味が重複しており✕。「今上陛下」が正解。
という感覚を持っています。

平成の時代に天皇だったこの方を正確に表すには、やはり「上皇陛下」とするしかないのですが、やはりそれが仰々しく感じられるのであれば、本書の帯には「平成の天皇」という言葉あります。最もニュートラルにこの方を表現するならば、これがベスト。したがって本書のタイトルも「平成の天皇物語」として欲しかったところです。(ちなみに笠原和夫が昭和59年に書いた映画シナリオのタイトルは「昭和の天皇」。完璧なタイトルです)
ついでにいうと、美智子様、雅子様は民間出身であるためか、あまり違和感なく名前で呼ばれていますが、昭和天皇の后であった香淳皇后については下の名前で呼ばれている場面を見たことがありません。天皇だけでなく、皇后についても本来は諱では呼ばないものなのです。
(こういったことをよくわかっているはずの保阪正康ですら著書で「明仁天皇」という表現を用いているので、仕方ないことなのかも、とも思いますが)

さて、それはともかくとして、冒頭にも書いたとおり、筆者は昭和天皇だけでなく、平成の天皇にも並々ならぬ関心を持っているのですが、まだまだ本が少ない。
しっかりした歴史家によるものは皆無と言ってよい状況です。
令和に入って、そういった本が増えていくことを期待しています。



喜国雅彦節全開の『今宵は誰と』(双葉社)

201906今宵は誰と325

かなり久しぶりに喜国雅彦の新刊が出ました。
「小説推理」に連載されていたものですが、そもそも漫画なのかエッセイなのか、扱っているのはミステリなのか純文学なのか、とりあえずこのタイトルの喜国作品だからエロがテーマになっているのは間違いなかろうということ以外、何も見当がつかない状態で買ってきました。

漫画だとしても、おそらくエッセイ漫画だろうという予想は大外れ。
文学をテーマにしたギャグ漫画でした。
一人暮らしを始めた青年が、ヒマつぶしに読書を始め、夜な夜な、夢の中で作品のヒロインたちと交流(交情?)を繰り広げるという展開で、1話ごとに文学作品が取り上げられています。
「砂の女」「潮騒」などの純文学からスタートするものの、そのうちに蘭郁二郎、夢野久作、江戸川乱歩など、戦前の探偵小説もポツポツと混じってくるようになります。
喜国雅彦は単著ではここ最近、エッセイの刊行が続いており、文学ネタの漫画は「メフィストの漫画」以来でしょうか。妄想に満ちつつも、ずっこける展開の喜国節を堪能できました。

筆者は名作と言われているような日本の純文学作品はほとんど読んでいないので、この漫画で取り上げられている作品も、タイトルは知っていても読んだことの無いものが大半でしたが、「エロ」の一点突破で内容紹介をしてもらうと、俄然、読んでみようかという気になってきますね。

以下、気づいた点をいくつか。

乱歩の「芋虫」を取り上げた章。最後のコマで喜国さん本人が登場し「検閲による伏字バージョン」で収録している本もある、とコメントしていますが、筆者が知る限りでは沖積舎から出ていた「江戸川乱歩ワンダーランド」がありますね。「悪夢」というタイトルで雑誌掲載されたときの挿絵・伏字をそのまま収録しています。
アニメ「ポリアンナ物語」の原作となった「少女パレアナ」も収録されていますが、このタイトルは村岡花子訳です。直近では角川文庫に収録され、本書でもこの文庫が紹介されていますが、角川文庫はすでに「少女ポリアンナ」のタイトルで新訳を刊行しているため、村岡訳は古本でしか買えません。

吉行淳之介「夕暮れまで」を扱った章では、夢の中の妄想が山上たつひこ「喜劇新思想大系」の名シーンを彷彿する展開となり、個人的にはぐっと来ました。
夢野久作「瓶詰地獄」は、あの陰惨としか思えない展開をあっけらかんとしたギャグに変換しており、喜国雅彦らしい一編です。

「小説推理」では今も連載継続中ということなので、続巻にも期待したいです。 

今宵は誰と─小説の中の女たち─
喜国 雅彦
双葉社
2019-06-19




平成の復刊ミステリ・その2 国書刊行会・探偵クラブ

201906とむらい機関車324

平成の復刊ブームをおさらいするシリーズ。第2回に紹介するのは1992~94年(平成4~6年)にかけて国書刊行会が出版した「探偵クラブ」です。
大阪圭吉がミステリファンのあいだで再評価されるようになったのは、このシリーズの第1回配本「とむらい機関車」がきっかけだったのではないかと記憶します。

鮎川哲也がライフワークのように続けていた企画に「幻の探偵作家を求めて」があります。
70年代の後半に雑誌「幻影城」で始まったシリーズで、その後、媒体を変えながら90年代まで続きましたが、消息不明となっている戦前の探偵作家を訪ね歩く内容でした。
同題の単行本は探訪記のみ収録されましたが、雑誌掲載時には、その作家の代表作も併録され、今にして思えば、今日の復刊ブームに対してこの企画が与えた影響は非常に大きなものがあったと感じられます。
今回紹介する「探偵クラブ」も、この流れから生まれた企画ではないかと思われる雰囲気があり、第1回配本には「幻の探偵作家を求めて」でも取り上げられた大阪圭吉が登場し、解説は鮎川哲也でした。
あとに続く巻でも、それぞれの作家の代表作をガッチリと抑え、今に至る復刊ブームの先駆けになったものと言えます。

刊行からすでに25年が経っていますが、さすが国書刊行会と言うべきか、一部の巻は未だに在庫が残っていて、新刊書店の棚に並んでいたりします(別に重版しているわけではなく、単に売れ残っている。しかし、裁断処分などにはしていない)。品切れになっている巻も、古本での入手は比較的容易です。
「幻の探偵作家を求めて」自体はすでに幻になりつつあり、近い内に復刊されるという話も目にしましたが、合わせてこのシリーズもおすすめです。

大阪圭吉 「とむらい機関車
三橋一夫 「勇士カリガッチ博士
葛山二郎 「股から覗く
渡辺啓助 「聖悪魔
蒼井雄 「瀬戸内海の惨劇
山田風太郎 「虚像淫楽
大坪砂男 「天狗
岡田鯱彦 「薫大将と匂の宮
蘭郁二郎 「火星の魔術師
城昌幸 「怪奇製造人
大下宇陀児 「烙印
甲賀三郎 「緑色の犯罪
角田喜久雄 「奇蹟のボレロ
井上良夫 「探偵小説のプロフィル
小酒井不木 「人工心臓


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筆者:squibbon
幼稚園児の頃から40を過ぎた現在に至るまで読書が趣味。学生時代は読書系のサークルに所属し、現在も出版業界の片隅で禄を食んでいます。
好きな作家:江戸川乱歩、横溝正史、都筑道夫、泡坂妻夫、筒井康隆、山田風太郎、吉村昭。好きな音楽:筋肉少女帯、中島みゆき。好きな映画:笠原和夫、黒澤明、野村芳太郎、クエンティン・タランティーノ、ティム・バートン、スティーヴン・スピルバーグ、デヴィッド・フィンチャー。
ブログ更新通知:https://twitter.com/squibbon19

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